仕事柄だけでなく個人的な趣味としても様々な音楽に耳を傾けるようにしていますが、ここ数年新たな出会いが無いままどこか物足りなさを感じつつ、時にお客様に相談する日々。『 年間ベストアーティスト 』 を一人勝手に選出している私にとってはなかなか由々しき事態の為、盛んに大好きな某CDショップで物色しても、ピンと来ないのはどうしようもなく、『 ○○好き、必聴!! 』 の文字を見ては “ だったらその○○聴くしな~ ” と思いながら店を後にする日々。
もちろん、過去好きになったアーティストも新たなスコアを出していたりでそれを楽しんでいたのですが、やはり新たな刺激を求めてしまうものです。寿司も良いけどステーキもパスタも食べたいし、501もストレートチップもステンカラーも良いけど、だからこそ新たな出会いを求めてしまうのが人の性ってものではないでしょうか。
そんな状況での嬉し過ぎる新たな出会い。 このアーティストは昨年頃、映画音楽を手掛けた事で一度耳にしていたのですが、その時の自分は選びませんでした。しかしながらある晩、ふと思い出してCDショップに駆け込み無事再開。 ( その節は店員さん、ありがとうございました。「 確か去年ぐらいに○○って映画のサントラ出してたと思うのですが 」 という締まりに無い問い合わせにも関わらず丁寧に探してくださって、本当助かりました。 )
これがまた猛烈に良い。ピアノとバイオリンによる抒情的なサウンドは時に静か過ぎるほど静謐に、重過ぎるほどに重厚ですが、スタートからエンドまでの積み重なりに圧倒されました。決して新鮮味溢れる楽器ではありませんが、その旋律は私にとって充分過ぎるほど新しく、“ 撮りたい写真 ” にまで影響を与えるほどの刺激を得る事が出来ました。きっと SURR という空間が出来たからこそ、そこで響くからこその感覚なのだと思います。
年を重ねる事で、状況が変わる事で変化する感性の面白さたるや。きっとまだまだ貪欲に、いつまでも満足する事なく求め続ける事でしょうが、引き続き行く末を見守っていきたい所存です。その好奇心は時に危なさも有する事もありますが、 “ 欲しくてたまらない ” “ アレもコレも欲しくてどうしよう ” といった困惑も含めてお楽しみ頂き、可能な限り好奇心を満たして頂ければと切に思います。
永らく続いた音楽不況にもやっと一筋ながら光が差しました。
さて、次は活字です。
さぁ皆様、貪欲に参りましょう。
SURR by LAILA 福留
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好き嫌いが分かれるかもしれませんが語っておきたいアイテムというはあるもので。と書いていて思ったのは、弊店は好き嫌いが明確に分かれるアイテムを数多く有しているという事。
なんだそれは、ですが特徴の一つという事でご容赦ください。いずれにせよ良質は良質ですし、ファッションは好き嫌いのアンチテーゼあってこそ発展するものですので。
と言うことでリブパンツ。スポーティーでありへヴィーデューティーなリブパンツ。これまた危なさ漂うリブパンツ。
しかしながら、その機能美がそこはかとなくモードに置換される事もしばしばで、これまたハイファッションに欠かす事の出来ないディティールデザインなリブパンツ。
貴方だったらどう解釈されますでしょうか?
アメリカ軍のエアフォース・トラウザーズを背景にもつこちらは、80年代イタリアのプレタブランド 「 BOGY’S 」 のものですが、何を隠そうデザイナーはジャンポールゴルチェその人。言われてみれば “らしく” もありますが、彼の経歴がまとめられている紹介文などにも挙がらない ジ・アンダーグラウンド・クリエーションな希少種です。
前述の通りミリタリーをデザインソースにしているため、全てのディティールが忠実に機能的 。しかしながら一つ明確な主張が有り、それによって獲得したエレガンスが尋常じゃありません。
生地です。
「こいつ、また生地の話か」と思われるかもしれませんが、モードは生地の芸術ですのでご了承を。これからも存分に取り上げる要素ですのであしからず。
コットン100%のこちらは、まるでシルクのような柔らかさと柔和な表情,色調で、構築的なウエストからテーパードへ発展し、リブで明確に終結するシルエットワークがそれはもう Fantastic 。絶妙に危ない機能美は完全なるミニマム・モードであり、リソースを活かしつつ全く異なる一着に生まれ変わらせる “ ファッションデザインのお手本 ” な仕上がりです。
ealry 80s Bogy’s by Jean Paul Gaultier
お見事。
SURR by LAILA 福留
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ファッションアイテムとして、スタイルを示す一着として
やはり、欠かす事の出来ないライダースジャケット。
旧 LAILA VINTAGE 時代の結構以前に大きく取り上げた事がありますが
その頃から UK ライダースの枯渇は囁かれていました。
そして数年経った今は、それを肌で実感しています。
元はバイク乗りのレザーウェアが、後にファッションアイテムとして昇華しましたが
UK made のデザインは勿論、見事なシルエットワークが
様々なデザイナーやクリエイターに影響を与えたのは周知の事実だからこそ、
その希少性が高まるのも然るべき。
今回のご紹介はライダース進化の黎明期に作られた一着です。
UK ライダースにおいて最初に挙がるのは、やはりルイスレザーでしょう。
明確ブランド性から様々なモデルが支持されていますが、
ライダースの発展においての大きな要因の一つを作った事でも知られています。
それは カラーオーダーシステム。
その名の通り、既存のモデルを好きな配色に仕上げるそれは
元々はユーザーのアイデンティティーに対しての配慮と、
着用時の認識性を高める目的だったと思われますが
後にカラーレザーのファッション性がライダースの可能性を大きく飛躍させる事になりました。
ご覧ください。このカッティングエッジな配色。
『 Phantom 』というモデルをベースに各所を散りばめられた鮮やかな紫色。
上質なレザーと剛健実質なディティールに、大胆過ぎるカラーオーダー。
類まれなる要素が盛り込まれた一着は、 “ ファッション ” というくくりにおいて
向こう側のそのまた向こう側ぐらいに位置すると申しますか、
とにかく危なさすら感じられる存在感。
だからこそ、最高に最高に惹かれる。
ファッションとしてパッケージングされ尽くしたアイテムだからこそ
選べるのであれば、ここまで大胆なものを。
土台がしっかりしているからこそ、大胆になれるのであって
街中で振り返ってしまうような人は、危なさという色気も要しているものですから。
early 70s Lewis Leather , color custom “ Phantom ”
年代、サイズ感、コンディションもろもろ
今後ご提案する機会は、限りなくゼロに近いと思われます。
余談。
かなり前に当時のルイスレザー・カタログに記載されていた
12色のカラーオーダーチャートを目にする機会があったのですが、
そこにパープルは存在しませんでした。
只でさえハードルの高いカラーオーダーでこれを仕上げるとは、
どれだけの傾奇者だったのか、と。
そして、これを現代に着こなす傾奇者ははたして誰か、と。
もう、本当にうらやましか。
SURR by LAILA 福留
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