皆さん、この秋冬の気分ってもうありますか? 毎年季節が変わると「今年はどんな色を着たいかな」「どんな組み合わせが気分かな」って考えるんですが、今季の私の気分は、ネイビーやグレーは例年通り多用しまくり、そこに、パキッとした色を合わせることなんです。 秋冬ってどうしても暗めのトーンや重ための素材に寄りがちで、それはそれで安心感もあるし綺麗にまとまるから大好きなんですけど、同時にちょっと物足りなさを感じることもあるんですよね。だからこそ、インナーや小物で鮮やかな色を加えると気分がガラッと変わるし、ジャケットの中にビビッドなニットを合わせたり、マフラーも主張のある色を取り入れるだけで、いつものスタイルが一気に新鮮に見えるんです。 特にネイビーやグレーは、グリーンやオレンジみたいな少し強めの色を合わせても不思議とケンカしないし、むしろ全体を引き締めてくれるんですよね。 あとは、クリーム色の物を合わせると、秋冬らしい重さの中に柔らかさが加わって、それもまた気分が変わって楽しい。
このちょっとした色の組み合わせの工夫が、気分を変えてくれるのがいいなと思っています。 ベーシックに差し色をひとつ足すだけで、「いつもの自分」が「ちょっと新しい自分」に更新される感覚があって、それが毎日のスタイルに小さな刺激や喜びを与えてくれるんです。去年は、グレーやブラックに頼り過ぎてしまったので、今年の秋冬は、そこに工夫を加えて、もっと楽しみたいと思っています。
ほんの少しの新しさを加えて、自分らしい引き出しを増やしていきたいです。
SURR 古川
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ヨーロピアンカルチャー,フランスなんて特に特に特に昔から圧倒的な服飾史的存在価値と市民権を有している“修繕が施されたプロダクト”。それらは自ずとファッションデザイナーの品ではなく労働のためや生活のための品々で修繕にはそれらを予想・妄想・想像させる気配が漂い、イコール歴史そのものだからこそ前述の存在価値として尊敬され続けてきました。それらを集めた博物館展示も珍しくなくナポレオン・ボナパルトの豪華絢爛な実物衣装の並びに修繕がびっしりと施された市民の衣類が飾られていたりと非常に興味深い構成だったりします。
ゆえにかねてより存在する修繕が施されたプロダクト専門のコレクターたち。彼らや彼女らにとって仕事相手は往々にしてファッションデザインの御手本を探すデザイナーや会社であったり貯蔵品を探す博物館関係者であったり熱心な個人収集家であったりと、ファッションコレクターの中でも敷居が高い存在だったりしまして、自ずと埃っぽいことも現代的なシルエットではないことも極端な話ですがもはや服としての体裁を保っていなくても問題無し、“なぜなら生地そのものが修繕そのものが歴史だから”言わんばかりの威風堂々たる佇まい方やコレクターの表情もまた非常に興味深く、なによりも独特。
実はこれまで弊店では彼らや彼女らとのコミュニケーションはほとんど交わされなかったんです、弊店にとってしっかりと現代のファッションとして向き合えるプロダクトであることは必須条件なので埃っぽいものもシルエットが好みでないものも服として成立していないものを選ぶことができませんから。見る分には触れる分には特段に楽しく刺激的なんですけどね。とあるコレクターが修繕された生地の一部分や古い生地の一部分を大量に集めた分厚いファイルを所有していたのですが物凄く素敵で猛烈に欲しかったです、価格を聞いて無言で戻しましたけど。きっとあれはどこかのメゾンやデザイナーが獲得したんだろうなぁ、まさに服飾史そのものでした。
ということで素敵な素敵な修繕が施されたプロダクト。弊店が旧LAILA VINTAGE体制からSURRになるにあたって、それらに敬意を払うべくアートリペアという勝手ながらな冠にて稀に御提案してきましたが、もうここ数年その文言を使っていませんでした。まぁ元々御提案したいと思えるそれらなんて滅多にありませんでしたが、だって奇跡のバランスみたいなもんですもん。本当に久しぶりな御提案となります、アートリペア・プロダクト。
特徴であり象徴である背面の大型ポケットそのものすら撤去されている50年代のハンティングジャケット。その全体に施された修繕は筆舌に尽くし難いです。一体何人の手仕事が関わっているのだろうか、一体どれくらいの時代を跨いでこの姿に辿り着いたのだろうか。予想・妄想・想像はとどまることを知りませんが決してその域を超えません。当然ながらしっかりと着るための服として成立していますしこれからも成立し続けるでしょう、生地の表面におそらくは防水を目的としたコーティングが施されていたようで現状“コーティングが施されていたんだろうな”と思わせる程度でほとんど消えているのですが、ここまで修繕されながらも生地強度が残ってくれているのはその消え失せたコーティングが大きな要因だったと思われます。
なお両胸のポケットボタンが欠損していたので私物コレクションの90s Hermesゴールドボタンを縫い付けました。敬愛なる服飾史、親愛なるアートリペアということで。
New 50s French art-repair cotton hunting jacket
SURR 福留
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これは本当に”感動した素材”なんです。様々なカシミヤに触れてきましたけど、バランタインのスコットランド製特級カシミヤに出会った時の衝撃は、今でも忘れられません。最初に手に取ったときは「軽いな」という印象。でも、実際に袖を通した瞬間、ただ軽いだけじゃなくて、肌にしっとり吸い付くような柔らかさと、肌触りに正直”何これ”と驚きました。これが特級ランククオリティのカシミヤかと圧倒されました。デザイン等で驚くことはあるのですが、素材一つでここまで印象に残ったのは初めてでした。
こちらのニットがまさに、その”感動した 素材”であるバランタインのスコットランド製特級カシミヤです。シンプルな無地も勿論好きなんですが、この幾何学的な切り替え模様を取り入れていて、深い胸元にしっかりとしたリブ、見た目にも相当なこだわりを感じる一着です。これに慣れてしまうと、”特級カシミヤ以外を着れない”なんて贅沢な事を思うようになりました。
以上、”感動した素材”についてお話しさせていただいたのですが、これからも、この場では私自身が心から良いと思ったものや、実際に感動したことを、素直に言葉にしてお伝えしていきたいと思っています。
SURR 古川
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