ウールの底力 / Diary1449
14.10.2026

BALLANTYNEといえば、まず思い浮かぶのはカシミヤニット。 その上質な肌触りや繊細な風合いに注目が集まることが多いですが、決してそれだけが同ブランドの魅力ではありません。 長年ニットウェアを手掛けてきたメーカーだからこそ、素材の持つ特性や、編み地が生み出す表情にも目を向けたいところ。 今回ご紹介するのは、そんなバランタインの中でも、少し変わった表情を持つ1着です。

 

 

サイズ表記はUK48、3XLに相当する大きなサイズですが、実寸の身幅は約60cmと、表記から想像するほどのボリュームはありません。 特に興味深いのが、その独特な生地の質感。 おそらく以前の持ち主による洗濯や乾燥の影響で、縦方向に収縮するとともに編み目が密集し、通常のニットとは異なる、肉厚で目の詰まった風合いへと変化しています。 編み目の存在はかすかに感じられるものの、表面には起毛した繊維が重なり、まるでスウェット生地のような均一な表情。一般的なセーターに見られる柔らかな編み地とは一線を画す、ボイルドウールを思わせる質感です。 ウールは水分や熱、摩擦が加わることで繊維同士が絡み合い、生地の密度が高まる性質を持っています。 こうした変化は本来、衣服の縮みとして捉えられるものですが、今回に限っては、それが偶然にも魅力的な個性を生み出しているように感じます。 目が詰まることで空気が通り抜ける隙間が小さくなり、一般的なローゲージニットに比べて風を通しにくそうな、目の詰まった構造に。ウール本来の保温性と相まって、冬場にも頼もしい存在になってくれそうです。 そして何より、この深みのあるグリーンと、表面を覆う柔らかな毛羽立ちが実に良いです。

 

 

New E00s Ballantyne Cashmere pure super geelong lambwool green sweater

 

 

カシミヤ特有の繊細さや滑らかさとはまた違った、ウールならではの力強さと温もり。 素材の優劣ではなく、それぞれが持つ魅力を改めて感じさせてくれる、そんなニットだと思います。

 個人的には、さらっとジーンズに合わせるくらいの気負わない着こなしが今の気分です。

 

 

SURR 古川

△

着心地は至って軽快 / Diary1448
13.10.2026

スポーツウェアの持つ機能性や軽快さと、ラグジュアリーウェアに求められる上質さ。 一見すると対照的な両者ですが、それらを自然に共存させているところに、セラファンの魅力を感じます。 かつて名だたるメゾンのレザーウェア製造を担い、現在も自社の名を冠した製品を手掛け続ける姿勢からは、専業メーカーとしての確かな自信が窺えます。 単にスポーティーなデザインを高級素材に置き換えるのではなく、長年培われてきた技術と革への深い理解によって成立する、セラファンならではの1着をご紹介致します。

 

 

一見するとオーソドックスなレザージャケットですが、細部に目を向けると、トラックジャケットを思わせる要素が随所に見られます。 特に印象的なのが、襟元から脇にかけて斜めに切り替えられたラグランスリーブで、肩から袖へと続く滑らかな曲線によって、レザー特有の硬さを感じさせない、どこか力の抜けた印象に。 さらに、襟や袖口、裾にはリブを配し、フロントにはリング型のジッププルを採用。こうしたディテールからもスポーツウェアを思わせる軽快な雰囲気が感じられます。 本来、ジャージーなどの柔らかな生地であれば表現しやすい曲線や落ち感も、革となれば話は別で、厚みや伸縮性の異なる素材をこれほど自然な形に仕立てるには、革の選定から裁断、縫製に至るまでかなり高い技術が求められます。 そして、裏地にはシルクを使用しており、しなやかなレザーと滑らかなシルクの組み合わせによって、着心地は至って軽快。レザージャケット特有の重厚感を感じさせず、まるで上質なトラックジャケットを羽織っているかのような感覚でした。

 

実際に袖を通してみると、まず驚かされるのがその着心地の良さ。 ゆったりとした身幅でありながら、動作に合わせて革がしなやかに馴染み、見た目からは想像できないほど軽快です。 これは、レザーウェアであることを忘れてしまうほどの快適さ。

 

New 90s Seraphin pure silk lining leather bomber jacket

 

 

サイズ表記は52。

 ゆとりを持たせてラフに羽織るのはもちろん、ジャストサイズですっきりと着用しても素敵だと思います。

 

 

SURR 古川

△

全開 / Diary1447
9.10.2026

2004SSでは、East Westのジャケットを取り上げるなど、トムフォードが着目するデザインの出自には、度々意表を突かれます。華やかなイメージが先行する一方で、その創造の背景を辿ると、既存のファッションの枠にとどまらない、興味深い着想源に行き着くのかなと思います。 今回の1着も、まさにそんなプロダクト。デザインソースとなったのは、1930〜40年代のドイツ警察官が着用していたモーターサイクルジャケットです。

 

 

フロントには4つのポケットが配置されておりますが、デザインソースとなったオリジナルではジップ仕様となっており、Tom Fordはその特徴的な配置を受け継ぎ、ポケットへとアレンジしています。この斜めに設計されたポケットは、モーターサイクルウェアに見られるディテールのひとつで、走行時やグローブ着用時の使い勝手を考慮した形状とされています。 サイドにはアジャスターを備え、ウエスト周りのフィット感を調整できる仕様に。 こうした細部にも、実用性を重視したオリジナルの特徴が見られます。 ドイツのデザイン学校、バウハウスに代表されるように、当時は”無駄な装飾を省き、機能性を追求する”という工業デザインの思想が大きく発展した時代でもありました。そうした時代背景のなかで、実用性を第1に考えた設計が、独自の意匠を備えたプロダクトを生み出していったと思います。 そして、オリジナルの無骨な佇まいをそのまま再現するのではなく、スエードの柔らかな質感と太番手のステッチによって、70年代を思わせるハンドクラフトの雰囲気を加えています。実用性を重視したオリジナルのデザインをベースに、素材やディテールで独自の表情を生み出していて、トムフォードらしさ全開です。

 

New early00s Gucci by Tom Ford German policeman-style suede leather jacket

 

 

ディテールもさることながら、やっぱり面が良い。

 

 

SURR 古川

△

1 2 3 4 5 6 7 8 … 482
Copyright © SURR All Rights Reserved