2017 Spring&Summer Pre Collections
2/4(土) 12:00 〜
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
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先日は合同企画にお付き合いならびにご査収、ありがとうございました。ほんの一滴でもお楽しみ頂けていましたら、ほんの僅かでも何かにご興味頂けていましたら嬉しく思います。一着を主役とし、二人がそれぞれ表現するという目論みでしたが、並べて視ると終わってみると感覚の違いが際立ちまして、私としては有意義でした。スタイルに正解は無く、全て違って全て良いと改めて切に想う次第です。
合同企画は今後も不定期で催させて頂く予定です。なお、私の中では既に新たな案が芽吹いているのですが、例によってそれも大した生産性が無いものの、携わる者が楽しみ、その温度が SURR の要素の一つとなってくれたらと思いますので、その際はまたご都合宜しければお付き合い頂けましたら幸いです。
それでは今回のエントリーにおきましては、個人的に滅多に得られない熱量で感動させてくれた一着を御紹介させて頂きます。
大いに実験的で挑戦的で、前衛的で革新的なコレクションを 10 年かけてモードの世界に提案してきた人物が新たな軸で展開した世界は、それまでとある種の逆をゆく極地的な正統派であった。 Maison Martin Margiela が99年に発表したメンズコレクションを、私はそう捉えています。
彼の感性と肌感覚のふり幅と、それを実行する決断力と、それを実現する実力には本当に感動させられると同時に、その正統的な一着一着に秘められたメッセージにも服を楽しむ一人として純粋に心から感銘を受けるのですが、こちらのニットには、いやニットプロダクトには、本当に心から驚かされました。
フランス軍において着用されていたコマンダーニットをお手本とした本品は、その背景に則ったミニマムかつ性差を問わないスタイルとしての ” 強さ ” を秘めています。船底を模したボートネック、コンパクトにフィットする長くタイトなリブ、可動域の広さと着用を重ねるうえでの明確な利点となるアームの接続、強固さを演出するかのような詰まった編み。それら全てに洗練性とモダニズムをもたらす素朴で実直で、何より品性に溢れるウールクオリティ。
そして、正統的なニットとしての構成でありながら、それに秘められたカットソー、いやカットソーというよりも肌着という表現が相応しい ” 成り立ちのメッセージ ” に心が震えます。それは首元などの折り返しをご覧頂くと顕著なのですが、各所の仕上げに古き良き肌着のそれが採用されているのです。
これらは本当にささやかな要素ではありますが、一般的なニットには注がれる事のないアレンジですので、やはり着用時に心地良い違和感的輝きを効果的に発揮してくれます。この、極地的正統派に秘められる、有り体に言えば ” マルタン・マルジェラらしい ” スペシャリティーは、彼が過去 10 年間に表現した様々な大胆なモードと根底で繋がった、彼だけが持つ感性の別の形なのでしょう。
そして何より興奮し、その興奮が収まると火照った心にふと “ このようなこだわりの形は、もはや頭がおかしいとも言える ” という想いを芽生えさせたのは、誰に向けてでもなく、着用者に対してのみ真摯に発されているであろう、編みを通したメッセージでした。
ニット全面に “ 点 ” をご覧頂けるかと思うのですが、まるで着古して糸が抜けているかのようなこれらは全て、編みの段階で施されたニットワークなのです。不規則ドットのように並ぶ一つあたり 2 mm弱のそれは、前述の通り着古したスタイルそのものを表現しているのですが、不規則でありながらどこか規則性を感じさせつつ、全面に渡ってロングショットで視れば均等とも言えるコントラストで配置されておりますので、やはり純粋な着古しとも異なる存在感を発揮してくれるのですが、
とにもかくにも分かりづらい。例えば向き合って話している相手が1時間ほど経った時に初めて気付くような。それも Bar などの薄暗い環境ではなく蛍光灯照明や太陽の下で、何より相手が勘が良くてはならないという条件が揃って初めて気付くような分かりづらさ、繊細さなのです。
99s Maison Martin Margiela , military styl knit product.
さて、ここまで書いて一旦コーヒー小休止。落ち着きました。
とにかく正統派でありながら明確なメッセージと、捉え方によっては、誤解を恐れずに表現しますと頭がおかしいとも言えるこだわりが、想いが注がれた一着です。
服などの物質たちは現実的にも暗喩的にも言葉を話して主張しませんが、しかし、ある側面においては現実的にも暗喩的にも明確に主張してくれます。話し方はそれぞれですが、中にはこちらのように口数が極めて少ない、ある種ゼロとも言える一着が存在しますので、その服に替わって言葉を発して主張することも私達の大切な生業だからこそ、この度御紹介させて頂きましたし、この服の主張すべき要素が特出しているからこそ、 SURR の空間において現在は特別な形式で表現させて頂いているのです。
これについて書けて良かったです。琴線触れられましたら、是非に。
SURR by LAILA 福留
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「セーターについて」書かせて頂いた際、ジーンズか、デニムか、ふと頭をよぎってしまいまして、今回は其方の内容を合わせたエントリーとなりますが、該当する御品について、1999年に誕生した1本の最高傑作をこの場を借りてご紹介させて頂きます。
“ジーンズ”か、“デニム”か、その表現の差異については論争が及ぶまでもございませんが、
厳密に「デニム」とは生地を指し、「ジーンズ」とはその生地を用いた衣類を指す、という簡単な定義付けがあるようです。(因に「ジーパン」とはその生地を用いたパンツを指す模様)
なるほど、ニットとセーターの位置づけに極めて類似している関係性です。現代では、デニム生地にて仕立てられたボトムスを“デニム”という音を用いることが一般的であるとわたくしも認識しておりますが、やはり店頭におきましてもお客様からは「デニムありますか」と問われることが殆どでして、わたくしも物心ついた頃から“デニム”という音を無意識に使用しておりました。仮に「何か良いジーンズありますか」とお客様から問われることならばドキっとしてしまいそうですが、その“音”が一般的に使われなくなった要因としてやはり挙げられるのが、「デニム」という生地の拡大解釈が広義にそして無意識な認識としてその波が広まった事による反対解釈論。さらに、生地の拡大解釈というところで詰めますと、織りや綾、生地の生産国、地域、染料が天然か人口か、インディゴか藍か、ステッチの種類、さらにシルエットや履き方、着用者の体型体格、歩き方座り方、洗う回数、様々な細かいディテールや要因、種によって“染料の落ち方、具合”が異なり唯一無地の仕上がりになる「ジーンズ」を愛する者にとっては、唯一無地にするためにその【生地】がいかに重要であるかの認識は至極当然であり、重要だからこそ、生地を用いたボトムスまでも「デニム」という音を用いるようになったのでは、と憶測ですが。その認識が拡散したのはやはり此方も情報社会だから、というひとつの事由が挙げられるでしょう。
とはいえ、「ジーンズ」という音について、どこかレトロな印象というより、高級で贅沢な音として聞こえる気がするのですが、ジーンズというとヴィンテージの其れ等を思い浮かべてしまうからなのか、理由はどうであれ、やはり、どこか贅沢に思えます。
生地が重要であるからこそ、特に本日ご紹介する御品に関しましても、「ジーンズ」に拘らせて頂きます。
「mid90s〜1999s」ラインナップの一部より、
存在感が桁違いな此方を。
1999S/S first mens collection Martin Margiela Blue jeans “Japan cotton denim”
Martin Margielaの歴史を辿りましても、過去にプロダクトされてきたブルージーンズの中で唯一、“日本製のデニム”を使用したジーンズが発表されたのは1999ss、メンズコレクションがスタートしたファーストシーズンのみ。1999年という年代では彼がHEREMSレディースのクリエイティブディレクターを兼任していた時代でもあり、HERMESというトップオブメゾンの素材への絶対的な配慮が冠の元で見事に昇華されたシーズンといっても過言ではなく、世界的見地からみましても圧倒的なクオリティを誇る日本製の生地を用いるというマテリアルの精選は、十二分理解に到達するでしょう。なにをもって、完璧なブルージーンズと定義するかは各々其々の判断基準が御座いますが、本品に関しましては、ダブルエックスの迫力ある色落ち、という表現とも違い、緩やかな色差を滑らかかつフラットに落ちる66前期ともまた違い、特有独特のインディゴの見事な落ち方は新たなオーセンティックという境地を獲得するに納得がいく面構えであり、顕著に表現されているシーム部分の中で、最も落ちている箇所はパールホワイトクラス、インディゴブルーとの色差から見て取れるあまりにも美しい仕上がりに、日本の地で再度出逢えたことに歓喜を覚えずにはいられません。約9600km離れたイタリアの地で文句の付けようもなく仕立てられた1本のジャパンメイドは、1999年という伝説的な時代に、たったひとりの男性とアトリエの数人によってプロダクトされた事に敬意を払いながら、そう、なにをもって、完璧なブルージーンズと表現するか各々其々の判断基準が御座いますが、そのクリエイションされてきた過程に思いを巡らせ、目の前にある1本のジーンズに脚を通したその時は、鏡の前の貴方と向き合った自分を静かに見つめ、「ジーンズは贅沢だ」と、納得の境地に到達することでしょう。
SURR by LAILA 小林
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