有色と無色が重なる際に視認性の関係で有色に目を奪われ、その“光景を視る”という行為によって切り取られた画は、目線が逸らされる最期まで“有色で終わる”ことがしばしば、と無意識に皆様もそうであると思いますが、それは決して正誤の物差を必要とはせずあくまで人間の特性上の内容であるかと予測します。有色と無色の関係性については単に色がある、ない、の差でありますので関係性も何も御座いませんが、目線が逸らされる最期まで“有色で終わる”現象を挙げるとすると其れはひとつの関係性に該当するかなと。そもそも無色というのは色がない、ですので、透明という表現が適切でして、例えばとあるコートのグレーと薔薇の赤を同じ画に収めた際には其れ等は有色と無色ではなく、有彩色と有色の関係性でありましょう。とはいえ、有彩色と有色の関係性も上記同一。結論として、我々は発色の良さに目を奪われやすいという事。その素晴らしい色合いをした有彩色を画から排除してみると素晴らしい有色が存在しているとも知らずに。いえ、有色の存在が有彩色を際立たせる、という表現が適切でしょうか。
80s Issey Miyake trench coat grayish cotton
作品としての魅力があってか、構築的な美しさが伝わる御品ですが実生活に関わる物として機能的であり快適であることをデザインに落とし込むのは三宅氏ならでは。身幅から広がるようなドレープシルエットに対して力が強く加わる箇所には補強ステッチ。ウエストベルト自体に釦を配置しシルエットを固定できる仕組み。前見頃はセットインに対してラグランのバックアングル。当然にダブルブレスト。ヘビーデューティーな仕様とタフネスな生地と相俟ってラグジュアリーな印象は旅先でもいかんなくポテンシャルを発揮するだろうとトラベルコートとしての認識も。何より打ち込みの良いコットン地はスチールグレー。何かとカタカナ多い様子。
周りの有彩色を際立たせる最高の有色でありながら、桜満開の元でも、目線の最期にスチールグレーで終わることが叶う逸品。
意気揚揚と釘付けにしてまいりましょう。
SURR by LAILA 小林
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プレタポルテ全盛期に立体化された2着の仕立ては英国の某王道を貫いてはおらず決してミリタリースタイルでもなければモダンな雰囲気を獲得しているわけでもない。最寄りの国を挙げることは叶わず、絶妙な狭間に落ち込んだような独自性を保持していると表現したほうが宜しいでしょうか。正統的とは言い難い印象は独特の生地があってか、将又釦の選定、言わずもがな内1着の色は厳しくも断定し難い程の深みを帯びおり、内1着は皺を伸ばすことを躊躇してしまう程の手触りを感じるのは実正そのもの。とはいえ反逆的、挑戦的でもなく、極僅かに空いた隙間のみを目指した計らいを感じながらもオーソドックスな香りを僅かに纏わせる術にかかったトレンチスタイル。愛されるわけです。
left 80s Yves Saint Laurent trench coat with Removable Liner
right 80s Yves Saint Laurent trench coat “Special Peacock Green”
先日お話したように、恐縮ながら偏愛ともいうべく嗜好項目のひとつに“ハーフコート”が挙げられるのですが、とはいえロングコートが苦手、というわけでも当然に御座いませんで、一方で嗜好項目といいましても拘り抜いている程でもないので汗顔のいたりですが。幾分脱線しますが、先日ディレクターに連れられた飲みの席にて同席の女性に、男性はギャップが大事とお言葉を頂きまして、改めて心に刻みました。良くも悪くも意表を付く試みというのはある種の挑戦であり、本来は第三者にそれを挑戦と捉えられず自然性が帯びていれば“良き男性のギャップ”に繋がるのでしょうが。其れを聞いたディレクターは、小林の場合は背中に龍では、と終始ふざけておりましたが、ともあれ、考えた上での“良きギャップ”というのは難しいものです。
通常ロングであるはずの例えばオーバーコートが、例えば膝下まで雨から護るトレンチコートが、ハーフコートの領域にて目の前に存在していたら自然反応にエキサイトしてしまう此れは、ある種のギャップ現象でしょうか。「強面なのにハニカム笑顔」「幻獣のような腕っ節で繊細なみじん切り」「本の虫の背中には龍」「本来長いはずのコートの着丈が短い」ギャップの広域的に認知されている内容は、おそらく逆説の意が殆どかと思いますが、この理論で捉えるとだいぶニッチな例えに。その上対象がヒトからモノに。“先入観が覆された”は、果たしてギャップと同意なのか。そもそも「ギャップ」という言葉自体が気になり掘り下げますと、“隙間”という単語が該当するよう。考えだすと私が深い溝に陥りそうです。ともあれ、この1点に向き合いますと、正統的でもなく、反逆的でもない、挑戦的でもなければモダンともいえず、オールドスタイルでもない。極僅かに空いた隙間のみを目指した計らいを感じながらもオーソドックスな香りを僅かに纏わせる術にかかったトレンチスタイル。さあ、これでいてハーフ丈。やはり良きギャップ。
late 70s Yves Saint Laurent half trench coat
詰まるところ、男もコートもギャップが大事。龍はだめ。
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3/18よりお披露目しております「Spring Coat」ですが、本日より3日に渡り各ディテールをご紹介致します。
「Burberrys」というひとつのメーカーが絶対性なる自信により世に送り出してきた名ナンバー達は、年代や生産シーズン、某老舗の別注、個人によるオーダーetc、際どくも確かに異なるポテンシャルを保持しており、現代でこそvintage burberrysとして認知されている其れ等は、もはや個体性なる力を秘めているのが愉しいところ。年代とコンディションは勿論の事、その上男性らしい美しさを説いた際に十二分にお応えできるフィッティングを実現できるナンバーのみ厳選に厳選を重ねセレクトしてまいりましたが、今回はその厳正なる基準の上、“個体性”をより重用視。少しばかりの御付き合いを。
ラグランスリーブながら2枚袖のパターン。肩を落とさないという計らいは英国ならでは。とはいえ身幅には余白を保たせる正統的かつ信頼に足るバルカラー。冒頭の通り年代や生産シーズンによって大きく異なる項目のひとつがマテリアルの配合率。コットンとポリエステルから成される所謂“バーバリーコットン”は、数%の割合で配合率が異なるもの。この項目のみで個体性を御愉しみ頂けるのですが、
left 60s Burberrys bal collor coat “Khaki”
middle 70s Burberrys bal collor coat “beige”
right 70s Burberrys bal collor coat “olive”
60年代の1着、裏地はアクアスキュータム類似のセンス。此れは最高。
70s Burberrys order custom trench coat “Deep Nevy”
70年代に仕立てられたカスタムオーダー品。通常の大降りな身幅と比べ気持ちよくもシェイプが効いており、ガンストラップを排除するというアプローチには脱帽。構築的なトレンチスタイルですが、こちらは唯一無二の洗練された印象。
70s Burberrys authentic trench coat “light Khaki”
勿論、保守本流の一着もご用意。
left 60s Burberrys 4pockets soutien collar coat “Orange Khaki”
right 60s Burberrys soutien collar coat “Khaki”
アームの前振りが極めて美しく、見事なまでの曲線美が実現するのはセットインスリーブならでは。ショルダーラインも抜群。ステンカラー仕様は大げさに襟を立てて颯爽と。
此方もセットインスリーブながら、通常のスラッシュポケットではなく、フラップポケットに左右ハンドウォームと4ポケット仕様。流石に初見では唸りました。このディテール、90年代Barbourの隠れた名品として極少数存在している、とあるナンバーのディテールに極めて類似しておりまして、同じ英国の地、成る程と推測の域に到達しました。当方は60年代、其れは途轍も無く。
80s Burberrys moleskin touch daily coat “Somber beige”
「何も考えず、先ずは振れて下さい」お客様に第一声、申し上げておりますこの1着。ポリエステルとナイロンから織り成された生地が兎に素晴らしく、モールスキンのようでいてシルクのような柔らかさも兼ね備えた極上のテクスチャー。脱いだら無造作に放り投げ、将又丸めてバッグの中に。ヘビーデューティーとは打ち込みのよいコットン地だけではないという証明でしょう。
私の嗜好で恐縮ですが、ハーフ丈のバランスが大変に好みでして、ロングジャケットなのかハーフコートなのか、そのアンバランスさをデイリーに落とし込むベクトル、というと聞こえは宜しいですが、“深く考えずに羽織る”が成立する均整は、ハーフコートこそ叶えやすいのでは、と。たまには肩を落としてまいりましょう。
SURR by LAILA 小林
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