知らない味 / Diary1037
3.3.2022

私はまだまだまだまだ経験不足で爆裂未熟者ですので、時に一度も見たことがないスタイルやデザインやそれらが組み合わさるバランスに出逢うことがありますが、言っても年に一回あれば良いくらいの頻度ですので、やはり出逢うと興奮しますし時に混乱します。私は共感欲求が高い(と自分で思っている)ので知っている味は伝えたいですしその味が好みであればあるほど強く御推奨したいと鼻息フンフンですが、知らない味はまず驚いてしまいますしそれが知らないけど好きな味だったらもう混乱の極地です。知らない味はどう伝えたら良いのか。

 

 

 

先日御披露目した2000年最初期のPRADA Sportsによるレザーハーフコートがまさしくそう。デザインとしてスタイルとして在りそうで絶妙に無い知らない味。試着しながら興奮して無意識に変な声が出ていたようでスタッフに怪訝な顔をされてしまいました。
 
ストイックなタイトフィッティング、部分的に微妙に“〇〇の〇〇”的な連想が出来るものの微妙に異なる機能装飾と美意識、絶妙に長い着丈による絶妙なスタイル個性。サイドポケットがもう最高で、いわゆるマフポケットとジップが一直線に繋がっており上下にスライダーが付いているのでそれぞれが開閉するのですが、中央位置にステッチを入れているので上下のスライダーがそれぞれ止まるという仕様によって(これ書いてて正確に伝わらないの自覚できます)アバラから裾までジッパーが走っているにも関わらず凹凸が極端に無いという美意識を実現しているのです。この凹凸に対する探求心はしいて言うのであれば鬼才キャロル・クリスチャン・ポエル氏が浮かびます
 
様式を総合的に鑑みるとバイカージャケットスタイルのレザーハーフコートなのですが、各所全てが知らない味。でも猛烈に好きな味。背中の裾になんかでっかいリベットが二つ付いてるし。しかもそこに暗号みたいなの書いているし。なんなの?と混乱した頭でこの爆裂な格好良さをどうやって皆様方に御推奨すべきかを一晩考えた挙句に辿り着いたのが“このレザージャケットはバブアーのヴィンテージピースで、ミウッチャが秘密裏にデザインしていたリミテッドモデルだ という方がしっくりくるVintage PRADA Sportsの一着です”という表現だったのですが、翌日かねてより本当にありがたい限りに御愛顧くださっている顧客様にこの御案内をさせて頂いた際に押し隠しきれない“は?”な顔をされてしまい、以降口にしていません。相当懇意にしてくださっているかつ大変に御優しいあの方であの顔なら、もう絶対にだめですよ。そもそも書いてて意味不明ですもん。辿り着いた時はこれだ!って思ったんだけどなぁ。
 
知らない味は貴重ですし興奮しますし楽しいですが、混乱しちゃあ駄目ですねぇ。そりゃ PRADA Uomo ではなく PRADA Sports ですからそれぞれスタートもゴールも異なりますが、それにしてもこの創意性は絶妙に異端的過ぎやしませんかねぇ。だって以下(今週末に御披露目します新作です)が2005年の PRADA Uomo なわけですよ、レザーテーラードジャケット。

まぁこれはこれで絶妙に個性的ですが。ここまで正統的なテーラードジャケットの構築でレザーも稀有ですから。しかしながらこの個性は興奮させてくれますし、テーラードジャケット好き(私は一番着易い上着の形です)ですがレザーは未だ出逢えていないので猛烈に欲しいですが、PRADAマニアの私は混乱はしません。濃密なミウッチャイズムを感じますから。

 

 

SURR 福留

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好きな色は / Diary1036
22.2.2022

ありますか?







私はこの色が好きというのはありません。気付いたら赤いスポーツジャケットが2着あったりペンや財布(という名目のカードケース)が緑色だったりしますが、基本的にはどの色も全部大好きです。それはやはりこの生業あってのもので弊店がどうとか弊社がこうとかではなくヴィンテージという世界そのものが、特にモード史が色彩に満ち満ち溢れてCOLORFULLでありながらHARMONYしているのがノーマル というそれはそれは大変に美しい世界で育ったからこそ全色好きで全色抵抗なく身に着けることができますが、それこそこの生業において様々の色に対する意見や印象を目にして耳にして、いつも興味深く・そこはかとなくどこか楽しい気分になります。へぇ、そんな考え方があるんだぁ と。

 

やはり大小なりに苦手に感じる色が居られますし、雑誌にせよコラムにせよ、この色にはこの色を,この髪にはこの肌にはといった意見(ガイド?)のようなものを目にする機会がありますが、私は基本的にざっくりとした雑な正確なので、それらの意見は基本的に目にした次の瞬間には忘れてしまいます。それはスタイリング概念が希薄なのと同じく私の生業において良くないことなのですが。
先日もお客様が“形のバリエーションは多いけど、〇〇色と〇〇色と〇〇色の服ばかりクローゼットに増えてしまう”とおっしゃっていた時に、私は真逆なことを自覚しました。形のバリエーションは極端に少なく、色が様々在る と。

 

黒が/白が/寒色が/暖色が/アースカラーが/etc./etc./好きな人or苦手な人、様々居られますし、とある一着を御提案した時に着れるかなぁと優しくおっしゃられる方も居れば、着れませんよ!とはっきりおっしゃられる方も居て、もちろん好きにせよ苦手にせよ着るにせよ着ないにせよ皆様方の御心で是非御判断をと思いますが、一個人的にはもし僅かでも気になる色があれば、是非とも御自身の新たな側面として、それこそ色として御選択頂きたく思います。ヴィヴィッドもペールもダークも、色はとにかく楽しいですよ。いや、厳密には上質な感性や良質な背景や卓越した文化が産み出す色は楽しいですよ です。

 

 

 

 

 

ペールでドライのアイボリーの内側にブライトでモイストなスカーレット。このような色の楽しみ方“も”最高です。数多の文化人を楽しませた ARNYS Parisらしい一着。

 

そういえば先日美容室でシャンプーをしてくれた方が、その前にヘアカラーしたら気分転換になるかな的な話をしていたこともあってピンク色を御薦めしてくれました。20歳少々の御年齢の女性で、いわくピンクのマリモみたいで良いのではとのこと。私にとって20歳少々の御年齢の女性の御意見は本当に貴重です。ピンクの髪の毛、ピンクのマリモ。   有りだねぇ。

 

SURR 福留

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さて今週の新作です / Diary1035
18.2.2022


弊店にとって以前から鬼門のスーツ/セットアップ。調べてみたら前回の御提案は去年の九月末でした(あれもサイッコウに格好良かった)。ヴィンテージという世界は1stオーナー、2ndオーナーと推移するうえでの移動がつきもののためなかなか“揃って”出逢えない存在というかねてからの残酷な経験則である中で出逢えた一着は幸運にもミウッチャ女史のUomo最初期クリエイションピース。表記46、シンデレラボディの貴方様へ。

 

 

 



“トム・フォード氏が手掛けた時代”というGucci史の1ピリオドにおける、ランウェイでもコレクションでもなくSHOWと呼ぶに相応しいフィナーレより。屈強なレザー、屈強なディティール、屈強なスタイル性を異常値なエレガンス概念にて。デザインの世界,モードの世界,ファッションデザイナーという肩書きが産んだ世界へようこそ。

 

 

 



1956年のパラトルーパージャケット。これも嬉しい出逢いでした。かねてより直感的に特別視していましたし、かねてより滅多に出逢えませんでしたし、特殊で特徴的なコンセプトデザインが格好良過ぎる存在。“1956年のデッドストックかぁ。すげぇモダンだなぁ。でもまぁ56年だもんな”と、ふと50sでそこそこ古いくらいみたいに考えている自分がそこには居て、いやいや待てよ今年で65年経過だぞ と。そこそこ古いくらいって感覚狂っちゃってるって と。このように度々自分に語り掛けるのです。なんせゆったりした店だもんで。もしかしたら無意識に一人で喋っているかもしれませんねぇ。

 

 

 




ニットメーカーとして最古とされるスコットランドの老舗。こちらはナインティーズプロダクトですので、培ってきたクラシック概念と当時におけるモダニズムが調和したバランスで、それを約30年経った今捉えると何とも絶妙なバランスで格好良く着易いという、老舗×モダニズム×今が美しく繋がる方程式。特にミニマムフィットで設計された肉厚なショールカラージャケットが最高。どっしりとした佇まいですが滅茶苦茶軽やかな着用感。それもそのはずピュアカシミア。なんといってもグリーンカラーがたまらない。色は本当に楽しい、いつまでも大好きな要素です。

 

 

 



例えば明るいイエローを初めて見るのがこのハーフコートだとしたら、きっとその人はイエローカラーが好きになるし着たくなるし、派生して明るい色そのものが好きになるのではないかと思いますし、その逆もしかりでしょう。色を楽しみ愛する私個人としては大変に由々しきことです。私はこの生業のおかげで色を見るのも着るのも大大大好き。それは弊店及び弊社がどうこうではなく、ヴィンテージという世界そのものが,特にモード史がそもそもにおいて色に満ち溢れに溢れて永遠に楽しく美しいということ。そういえば色の話題は度々お客様方との会話でも挙がります。脱線しましたが、このコートは流石申し分なく素晴らしい。カジュアルでありデイリーであり、自然体にダンディでありファッショナブルでもある。服飾における良い要素が結集したヴェロニク・ニシャニアン女史によるライフスタイル・ファッションピース。

 

 

以上、今週の新作でございました。気付いたら前回の新作ご報告から一週間、私はいったい何をしていたのか。何かの皺寄せでしょうか。よし、次回は色に関して書こう。

 

 

SURR 福留

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