「でき得る限りの上質を求める」
1890年、ノーザンプトンの一角にて靴を作り始めてから約127年。発足から間も無く爆発したひとりの男の才気は、確固たるシンプルな信念と卓越した技術力によって支えられ現在に至りましょう。使われる素材の殆どは最上級のカーフスキン、追求に追求を重ねたグッドイヤー製法。頑丈で、軽快。革新より伝統。ファッショナブルの学びではなく、ジェンツのため美しい靴への追求。箇条書きにすると溢れてくるセンテンスはあくまで言葉同士の繋ぎで御座います。
この度、イギリスの地で出逢いが叶いました一足のメイドインノーザンプトンは、1970年代のフルブローグ。
褐色にエイジングを遂げた肌
5アイレット
鈍く輝くゴールド色のハトメ
括れが柔らかなラスト
外羽はダービー仕様
箇条書きにすると溢れてくるセンテンスはあくまで言葉同士の繋ぎで御座います。何より、見事なほど包み込むフィッティングは、ありきたりな文句で恐縮ながら、どうか騙されたと思い、先ずはお試しを頂きたい一足。続けざま、説得力に欠けますが、本当に素晴らしい靴だと感服致しました。
70s Edward Green full brogue darby shoes
技術云々、メーカー云々というより、例えば悪天候や硬い石路から主であるイングリッシュジェンツの足を護り、すれ違う視線から仕立ての良いスーツを汚さぬよう、顔を立て続けた目の前の一足、丁寧にポリッシュを施しながらチューニングが続けられた事跡、ただ簡明直截な程に「恰好が良い」という第一線的感覚、あまりにも素直に、「良い、靴だ」と後味が残る。 “ 一流 ” と認めるにはそれのみで十二分な気さえ致します。それらを享受し、シューボーンの助けを経て、気持ちがよい音とともに足が吸い込まれた刹那「でき得る限りの上質を求めた」着地点を垣間みることができましょう。私はそう思います。
ただ、もうひとつだけ申し上げるならば、“ R ” ではなく、“ E ” であればパーフェクト。皆様へご提案させて頂く手前、でき得る限りの上質を求めシャッターを切りましたが、こればかりは。
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
紳士の嗜みとしまして、ご縁が御座いましたらどうぞ宜しくお願い申し上げます。
//
「 鹿爪らしい 」
“ 鹿 ” という生き物と関連する言葉をわたくしの引き出しから取り出すと、「鹿爪らしい」が浮かんでまいります。まじめくさって堅苦しい様、道理に適い、もっともらしい様を指す充て語。なぜ、この言葉がわたくしのメモリーカードに保存されていたかと申しますと、かれこれ10年程前でしょうか、歳の離れた人生の先輩と碁を打っている最中、言葉そのままよく言われておりました。「んん、しかつめらしいのぉ」今思えば、定石ばかりで堅く面白くない、という内容でしょう。当時は10代の最中、悩みが絶えない年頃でして、頭脳を盤上の策で埋め尽くせる碁は、心を空っぽにできるのでよく打ったものです。碁は将棋と違い、王を守り抜く必要も忠誠を誓う必要もなく、盤上にて攻めと守り、純粋な陣地争奪戦。そこには当然、策があるわけですが、その策には心情や性格なるものがそのまま反映されるので面白いものです。人を知るには碁を打て、とはそのこと。
余談が過ぎました。
60年代フランスを中心にヨーロッパで確立された「アートジュエリー」というひとつのムード、ジュエリーを愉しむという風潮が顕著に表れていた良き時代。当時のプロダクトは、一部を除き、固形としての魅力が内側より溢れている印象、また固形物としてのポテンシャルが極めて高く、素材の真を捉えたデザインが見受けられます。ソリッドかつ完全無欠な外形。その完璧な円形美を保ちながら925に刻まれた6文字のアルファベット。本品もまた1960年代と素晴らしき時代に造形された逸品。
ただ、ただ、驚愕したのは、先端部に位置する乳白色のそれが “ 鹿の骨を削りだしたもの ” そして、円形から逸れるように外側に伸びたその形状が、“ 鹿の爪を表現したもの ” であるという事。素材の真を捉えたミニマリズムの究極的な円形は、堅苦しくも道理に適う納得の領域で御座いましたが、その乳白色を理解した途端、“ 確かにそれは鹿の爪 ” で御座いますが、その外形のみで「 鹿爪らしい 」と安易に表現できたものでは御座いません。
それが、1960年代のHERMESと知っても尚。
60s Hermes silver bangle “ deer born ”
“ 鹿 ” という言葉を用いたことわざに、「 向かう鹿には矢が立たず 」が御座います。逃げないでこちらを向いている鹿に矢を射るようなむごいことはできないという、素直な、また柔順な相手を攻撃する気にはなれない例え。仮に素直で柔順な相手ではなくとも矢は放たない、“ 俺は誰も攻撃しない ” 表しを手首に宿して頂けましたら。言葉に発さず意味を保たせるのもまた、紳士的では。
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
因に「 秋の鹿は笛に寄る 」は、雌鹿の鳴き声に似た笛に雄鹿がおびき寄せられて、人間に捕らえられることから、恋のために身を滅ぼすことのたとえ。これは教訓としてわたくしのメモリーカードに保存致します。
//
弊店はヴィンテージショップという根幹が在る中、シーズン毎にラインナップのキーとなる “ テーマ ” を勝手ながら設けさせて頂いております。そのテーマに沿ったエディットの元、皆様にご提案を続けさせて頂いておりますが、今シーズンは「原点回帰」とひとつのテーマを挙げさせて頂いております。弊店発足から早4年が経過致しておりますが、本日、このエントリーを書かせて頂くのも、(決して過大して申し上げるわけではなく)皆様のご愛顧によるものと感謝の気持ち、そして今一度、男性、紳士のための専門店という認識、勝手ながらその気持ちの引き締めも御座いまして、このようなテーマとさせて頂いております。
度々と重複する内容のセンテンスで恐縮な心持ちながら、本日のエントリーの内容は「原点回帰」というテーマの中でも、“ コート ” “ ミリタリー ” “ テーラード ” に次ぎ、大変重要なステージであると勝手ながらも認識しております。「紳士のための専門店」と、すなわちの直線で結ぶことができます弊店にとって「紳士のための小物」は自然の選定そして重要なエレメントであり、是非とも皆様に愉しんで頂きたい想いで、今シーズンを迎えております。
シューズの埃を落とし
シャツに袖を通す
無造作にも、丁寧にタイを結び
本日会う予定の名前を記したメモをチェック
埃を落としたシューズを履き
日々のバッグを片手に重いドアを開ける
この度は、ジェントルマンの日常に則した品々をご用意させて頂きました。無意識にも過ぎる日々の中で、ひとつひとつの仕草や行為がスペシャルで贅沢な体験となりますことを、弊店一同(2名しか居りませんが)願っております。
トムフォード氏が捉えた究極のタイ、イギリス紳士の指で鈍く輝いたシグネットリング、70年代ムッシュの美学が凝縮されたフォルドアップバッグとシルクスカーフ、ノーザンプトンが生んだ最高傑作のフルブローグ、9kのネックジュエリーは魅せないルールを敷くのも。そして1960年代パーソナル品とも推測できる完璧なバングルはやはりHERMES。
上記品々含め、ご紹介は後日にでもじっくり書かせて頂きます。
それでは、皆様のご来店を心よりお待ち申し上げております。
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
//