【 “ ニット製品に仕上がった状態 ” における、ヨーロッパと国内のとある違いについて】
たとえば、ヨーロッパにおいて、製品として仕上がった状態のニット、及び、その繊維、さらに毛の光沢(主にキューティクル)が、充分ではない状態にあえて留めていることが多いです。つまり、素朴で質朴な天然繊維、その本来の状態のまま製品として成立させております。
一方で、日本国内では製品として仕上がった段階で光沢を出す、傾向にあるようです。どうりで日本製のニット類は、着用せずとも着心地が素晴らしいわけです。
どちらが善し悪しという話をしたいのではなく、なぜヨーロッパはそうなのか、について究明したいのですが、早くもその理由は明確で、「素朴で質朴な天然繊維こそ肌に優しいから」ということでは当然になく、「所有者がその1着を愛用し、ブラッシングなどの適切な施しを、自然なサイクルとして取り入れることを前提としているから」少なくとも理由のひとつとして挙げられるでしょう。
かたや、生産上の理由や、単にめんどくさいから、予測は付きものですが、もちろん一概に謂えるわけではありません。しかしいずれにしてもそれは、「ブラッシング」というひとつの行いに対する向き合い方、その習慣性、それらを日本と比較した際には、より明確に、より明白に、より明快に浮かび上がるのもまた、黙殺できない内容と思います。
なぜなら、ブラッシングなどせずとも、既に柔らかいので。
わたくしの場合、ニットはブラッシングと風通しだけで、クリーニングはほとんど行いません。
着用を重ね、丁寧にブラッシングを施すことで生まれる、特に天然カシミア毛の輝きには本当に感動させられます。
ブラッシングを定期的に行い、風通しの良い場所にかけておくだけで、天然毛のニット製品はクリーニングが不要になります。
毛玉が苦手という方がいらっしゃいますが(得意とする方はいないでしょう)、それは普段ブラッシングを行わないから。でも靴は磨き、歯も磨く。
でもニットにブラッシングは行わない。
毛玉をほぐすという役割のみならず、豊潤な艶と輝きを与えてくれるただひとつの行いは、弊店の総意として皆様に是非ともご提案したい心持ちです。
2名しか居りませんが。
さて、前置きが長くなりましたが、2017年A/Wというシーズンにおいて重要な要素のひとつである「上質なニットウェア」
特級カシミア毛のみを用いた某メーカー、スコットランド産のカシミアと天然ウール、70年代のメゾンメーカー、99A/Wのリブ編みは弊店発足以来初のエントリー。千差万別と約20点程、お披露目とさせて頂きます。
「2017 A/W Vintage Knit Wear for men」
10/14(土)12:00〜 on sale
現状、神経質なまでにブラッシングを施した最高の状態にてご紹介をさせて頂きますが、もし1着との出逢いが叶いましたら、どうぞご自宅でもブラッシングを施してあげて下さい。1週間に1度でも、ワンシーズンに1度でも構いません。我々としましても、永くお召し頂きたい想いのみでございますので。店頭でもレクチャーさせて頂きます。お気軽にご相談下さいませ。
それでは、皆様のご来店を心よりお待ち申し上げております。
寒くなってまいりましたので、どうぞご自愛下さい。
(特級クラスのカシミア毛は、ジーンズとどうぞ)
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
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英国では、生粋の鉄道好きや固執して何かに打ち込む者達への表現のひとつに「anorak」というスラングワードがありますが、その影響か、将又、波風が広く及んだかは知る由もなく、ある種のナーディースタイルとしての地位も築き上げている、やはり「anorak」
そもそもとして、主に山岳登山などのネイチャーフィールドにおいて活躍を期待された「anorak」ですので、ナーディースタイルやスラングワードが誕生する隙間はないにしろ、それもひとつのカルチャーと大きく受け入れれば済む話。雨が多く降るイギリスという国で、美しく走る鉄道を一枚でも多く撮りたいひとりの男性が、傘もささずに「anorak」の機能をフル起動させていたことを想うと、きっと両手が空くリュックサックでしょうし、きっと動きやすいコットンパンツでしょうし、おそらく自宅では鉄道関係の書物に目を通さねばなりませんので眼鏡という道具はマストオプションでしょう。女性を知るより鉄道を愛する性分は、オシャレというベクトルは存在せず、髪の毛はあらゆる方角を向き、髭はもう遺伝子と自然の成り行きに。グランストンベリーまで行くため、中心部の駅でうろうろしているところ、ハイウェイマンのレザーを着た若者や、UKロックの熱者達が口を揃えて
「Hey! anorak!」と。
そもそもとして、「anorak」とはフードが付いてる付いていないでは、“ 付いている ” ものをそう呼び、付いていないものは「プルオーヴァージャンパー」とでもなりましょうか。どちらでも構わないのですが、たとえそのフードという画期的機能が付いていないプルオーヴァージャンパーであったとしても、「anorak」について少なからずひとつのカルチャーが存在するとするならば、それはそのまま「anorak」として受け入れたくなります。それに類似するストラクチャーが十二分に備わっていさえすれば。
そもそもとして、「anorak」とは必ずしもプルオーヴァーでなくてはならない規約や法律や国際法はどこにもありませんが、にもかかわらず、世に多く存在しているそれらの「anorak」とはプルオーヴァーなる構造を有しており、単純な思考で臨むなら、プルオーヴァーよりジップ開閉という機能を有しているほうがはるかに便利ではと思う気持ちを片隅に、それにはそれなりの理由というものがきっと存在するので、現在の仕様にて、現在の構造にて、ひとつのカルチャーとして自立するプルオーヴァーであるべきして在ると。
雨が多く降るイギリスという国で、美しく走る鉄道を一枚でも多く撮りたいひとりの男性が、室内でも外出時でも着ているシャギードックセーターの頭上から一苦労に袖を通そうとする姿が容易に目に浮かびますので、ひとまずは、それでいいのでしょう。
90s GUCCI by TomFord anorak pullover
面白さをも排除した1着の「anorak」は、ミニマリズムの極点ではなかろうかと疑うほど、削ぐべくものを削いだ果ての姿。奇しくも同じ90年代、某イタリメゾンネームが頭中に浮かびますが、どちらがどう、という論争には興味が湧かず、ナイロンにコットンを混ぜるべくして、ネイチャー以外のフィールドにも対応させたその「anorak」は、結局のところ「anorak」としてのストラクチャーが十二分に備わっているプルオーヴァージャンパーですが、経営的にも低迷していたGUCCIを盛り上げなければならないムードの中で、トムフォード氏が慎重に世に送り出したのがこの「anorak」だったとしても、純粋にもGUCCIというビックメゾンメーカーのクオリティに恥じない渾身の「anorak」だったとしても、そんな真実は解明せずとも背面に打たれたネームに任せておけば良いことで、これから進もうとする冬の寒さの中、身体を護るべきしてかぶるその「anorak」は、あたたかいセーターの上から一苦労に袖を通し、ハーフジップを気持ちよく上げ、リュックサックを背負い、鉄道の代わりに美味しいグラタンを頬張るべく、玄関のドアを開けるのみ。
恰好付ける輩には「Hey! anorak!」と叫ばせて、グラタンに合うワインを考える。
そう、既に向う処 敵無し。
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
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スウェード、または、ヌバック。
粗粗しさのない上質なタッチ。
身体にしっかりと沿う男性的なフィッティング。
マシューマコノヒーか、アーミーハマーが上手に着ている。
そしてブルゾンという日常着である事。
そのようなクリアしなければならない条件を設けたとして、そもそも上2段のみに絞ったとしましても出逢いに報われないもので、僭越ながらわたくし個人の捜索 / 探求の要素が大きい内容ですが、やはり出逢いが難しい区分だと座して待つこの頃。
所謂、90年代のストリートムードや80年代のナーディーな線上には決して居ないであろうその条件達は、欲するところ、素直に仕立ての良さを感じたい内容であると同時に、できれば “ H ” のアレであってほしくない捻くれに捻くれた願いと、なんなら強欲に求めて、ディープネイヴィに恐ろしいほど合うイエローベージュかモカブラウンだったら付け加えるリクエストは何もないでしょう。
欲したところと、“ できれば ” な願いと、なんなら強欲に求めてさえしても、積み重なった欲求を見事に満たしてくれたその1着は、1890年から続くミラノの老舗シャツメーカー、TRUZZIのためにスコットランドで丁寧に仕立てられた洋服であること、それは納得するに用意された完璧な回答であると同時に、“ できれば ” な願いを汲んで、“ ようやく出逢えた ” と今後の悩みを完膚無き迄に打ち消してくれるイメージの具現物。
それはもう、超現実的に。
50s British suede blouson for TRUZZI
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
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