既に向う処 敵無し / Diary453
6.10.2017

 
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英国では、生粋の鉄道好きや固執して何かに打ち込む者達への表現のひとつに「anorak」というスラングワードがありますが、その影響か、将又、波風が広く及んだかは知る由もなく、ある種のナーディースタイルとしての地位も築き上げている、やはり「anorak」
 
そもそもとして、主に山岳登山などのネイチャーフィールドにおいて活躍を期待された「anorak」ですので、ナーディースタイルやスラングワードが誕生する隙間はないにしろ、それもひとつのカルチャーと大きく受け入れれば済む話。雨が多く降るイギリスという国で、美しく走る鉄道を一枚でも多く撮りたいひとりの男性が、傘もささずに「anorak」の機能をフル起動させていたことを想うと、きっと両手が空くリュックサックでしょうし、きっと動きやすいコットンパンツでしょうし、おそらく自宅では鉄道関係の書物に目を通さねばなりませんので眼鏡という道具はマストオプションでしょう。女性を知るより鉄道を愛する性分は、オシャレというベクトルは存在せず、髪の毛はあらゆる方角を向き、髭はもう遺伝子と自然の成り行きに。グランストンベリーまで行くため、中心部の駅でうろうろしているところ、ハイウェイマンのレザーを着た若者や、UKロックの熱者達が口を揃えて
 
「Hey! anorak!」と。
 
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そもそもとして、「anorak」とはフードが付いてる付いていないでは、“ 付いている ” ものをそう呼び、付いていないものは「プルオーヴァージャンパー」とでもなりましょうか。どちらでも構わないのですが、たとえそのフードという画期的機能が付いていないプルオーヴァージャンパーであったとしても、「anorak」について少なからずひとつのカルチャーが存在するとするならば、それはそのまま「anorak」として受け入れたくなります。それに類似するストラクチャーが十二分に備わっていさえすれば。
 
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そもそもとして、「anorak」とは必ずしもプルオーヴァーでなくてはならない規約や法律や国際法はどこにもありませんが、にもかかわらず、世に多く存在しているそれらの「anorak」とはプルオーヴァーなる構造を有しており、単純な思考で臨むなら、プルオーヴァーよりジップ開閉という機能を有しているほうがはるかに便利ではと思う気持ちを片隅に、それにはそれなりの理由というものがきっと存在するので、現在の仕様にて、現在の構造にて、ひとつのカルチャーとして自立するプルオーヴァーであるべきして在ると。
 
雨が多く降るイギリスという国で、美しく走る鉄道を一枚でも多く撮りたいひとりの男性が、室内でも外出時でも着ているシャギードックセーターの頭上から一苦労に袖を通そうとする姿が容易に目に浮かびますので、ひとまずは、それでいいのでしょう。
 
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90s GUCCI by TomFord anorak pullover
 
 
面白さをも排除した1着の「anorak」は、ミニマリズムの極点ではなかろうかと疑うほど、削ぐべくものを削いだ果ての姿。奇しくも同じ90年代、某イタリメゾンネームが頭中に浮かびますが、どちらがどう、という論争には興味が湧かず、ナイロンにコットンを混ぜるべくして、ネイチャー以外のフィールドにも対応させたその「anorak」は、結局のところ「anorak」としてのストラクチャーが十二分に備わっているプルオーヴァージャンパーですが、経営的にも低迷していたGUCCIを盛り上げなければならないムードの中で、トムフォード氏が慎重に世に送り出したのがこの「anorak」だったとしても、純粋にもGUCCIというビックメゾンメーカーのクオリティに恥じない渾身の「anorak」だったとしても、そんな真実は解明せずとも背面に打たれたネームに任せておけば良いことで、これから進もうとする冬の寒さの中、身体を護るべきしてかぶるその「anorak」は、あたたかいセーターの上から一苦労に袖を通し、ハーフジップを気持ちよく上げ、リュックサックを背負い、鉄道の代わりに美味しいグラタンを頬張るべく、玄関のドアを開けるのみ。
 
 
恰好付ける輩には「Hey! anorak!」と叫ばせて、グラタンに合うワインを考える。
 
 
そう、既に向う処 敵無し。
 
 

 

 

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強欲に求めて / Diary454
7.10.2017

 
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スウェード、または、ヌバック。
粗粗しさのない上質なタッチ。
身体にしっかりと沿う男性的なフィッティング。
マシューマコノヒーか、アーミーハマーが上手に着ている。
そしてブルゾンという日常着である事。
 
 
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そのようなクリアしなければならない条件を設けたとして、そもそも上2段のみに絞ったとしましても出逢いに報われないもので、僭越ながらわたくし個人の捜索 / 探求の要素が大きい内容ですが、やはり出逢いが難しい区分だと座して待つこの頃。
 
 
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所謂、90年代のストリートムードや80年代のナーディーな線上には決して居ないであろうその条件達は、欲するところ、素直に仕立ての良さを感じたい内容であると同時に、できれば “ H ” のアレであってほしくない捻くれに捻くれた願いと、なんなら強欲に求めて、ディープネイヴィに恐ろしいほど合うイエローベージュかモカブラウンだったら付け加えるリクエストは何もないでしょう。
 
 
 
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欲したところと、“ できれば ” な願いと、なんなら強欲に求めてさえしても、積み重なった欲求を見事に満たしてくれたその1着は、1890年から続くミラノの老舗シャツメーカー、TRUZZIのためにスコットランドで丁寧に仕立てられた洋服であること、それは納得するに用意された完璧な回答であると同時に、“ できれば ” な願いを汲んで、“ ようやく出逢えた ” と今後の悩みを完膚無き迄に打ち消してくれるイメージの具現物。
 
それはもう、超現実的に。
 
 
 
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50s British suede blouson for TRUZZI
 

 

 

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土台の話 / Diary452
5.10.2017

少々肌寒いですが気持ち良い季節がやってまいりましたので、このエントリーは SURR のベランダで書いています。このように気まぐれでベランダで過ごすことがありますので、お見かけの暁にはお気軽にお声がけくださいまし。

 

さて、” アートリペア ” という区分にてコツコツと御提案してまいりました中でも、愛着心という名の手ほどきが最も施されているのではないかと思われるのが今回の一品ですが、当エントリーにおきましてはあえてそれ以外に触れさせて頂こうと思います。

フランスにおいてのみならず、全てのワークウェアにおいて最も代表的なスタイルと言えるカバーオール。その名に相応しく、就労時等に身体を包む目的を秘めた一着は、言うまでもなく着飾るための ” ファッションアイテム ” ではなく、更に言えばそれと対極に位置する目的に則って生まれました。時代を経て産業が発展すると共にその容貌は微細ながら確実に変化を遂げ、現代においても同じ区分であるワーク・カバーオールという存在は受け継がれていると共に、モードやハイファッションの世界においても、そのDNAを如実にを受け継いだピースを目にする機会は枚挙にいとまがありません。

想い返してみたらフレンチワークという区分を弊社で扱うようになって10年以上経ちますが、カバーオールはいつも共にございまして、常に純粋に ” 格好良い ” と思える存在でありスタイルでした。特に産業的な技術が現代とは大きく異なる, 現代と比べると稚拙であり、何より素朴で丁寧であった古き時代のカバーオールは格別でして、着飾るためのファッションアイテムとは対極に位置している存在にも関わらずそれら通じる構築の美学、イコール着飾るためでは無いものにも当たり前のように “ 美しいと思う要素を丁寧に時間をかけて注ぎ込む心 ” があった時代のそれはとにかく格別でして、“ 絶対 ” という言葉を重んじているため滅多に使わないよう心掛けている私ですが、この想いに関してはのべつ幕無し使わせて頂きたく。

このような美しさは絶対にこれからも輝き続けます。

 

 

 

SDIM1824

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テーラーの世界においての美意識とされる “ 前から見えないと美しい ” という考えに則り、後ろに逃がされた肩線。フランスの上質な紳士服の傾向である、一番上まで留めてもタイの結び目が丁度良く覗く V 字のネックカーブ設計。そして仕立て屋の技術力と配慮を隅から隅にまで感じられる、贅沢なほどに曲線なパターンメイク。

余談と申しますか私の一個人的な願いですが、是非上から2番目のボタンのみを留めるフロント X を基本スタイルにして頂きたく思います。その願いに至ったきっかけはとある2人の存在ですが、その話は御興味ございましたら店頭にてお声がけくださいまし。

 

 

 

 

 

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30s French work art repair coverall

歴代最高の手仕事量であるだろう点も、希少性の高いブラックモールスキンである点も、出逢いの確立も差し置いて綴らせて頂きました土台の話でした。今回もお付き合いくださった皆様に心からの謝意を。

 

 

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