「everything’s a metaphor / 世界の万物はメタファーである」
ゲーテはそう唱えましたが、世に実在するあらゆるモノは、隠喩的存在,または曖昧なモノ,若しくは留まらない流動性など表した説。10代の頃はこの一説に対して否定的な見解のみを攻撃的に持ち合わせていましたが、20代中頃になりますといつの間にやらしっかりと心中に結びついておりました。それをヒトは「成長」と呼び、かたや「頭がおかしい」と謂うのでしょう。
道中の脇に生えている1本の木、それをみた彼は直入に「ただの木である」と思い、一方で彼女は「辺りには友達や家族がいない寂しそうな木である」と脇目に見ながら思う。その木の真実は「ただの木」であり、「辺りには友達や家族がいない寂しそうな木」であり、植物学上は「樹皮に猛毒をもった世界一危険なトウダイグサ科の樹木」であります。そしてその木も世界の万物の片鱗であるならば、メタフォリカルな木でありましょう。「世界の万物はメタファーである」とは、人によって、モノ/コトを見るためのレンズが異なっていることが前提として成り立つ理論である、ということに20代中頃で考えていたわたくしの真実は「頭がおかしい」ボックスの中に収まりそうです。
1着のライダースジャケットを目の前に、A氏は「いなたいレザージャケット」と謂い、B氏は「このカスタム、やばい」と謂う。その光景を遠目からみていたC氏は「美しいバーミリオンオレンジだ」と謂う。このライダースジャケットの真実は「1970年代アメリカの都心から離れたとある地で、バイカー乗りが大事に着用していた証を背面で理解できる1着のライダースジャケット」でありますが、あくまでこの真実もメタファーの顕れであり、固定性のない一例でしょうか。本当の真実は「いなたいレザージャケット」であり、「カスタムがやばいジャケット」であり「美しいバーミリオンオレンジ」でしょう。世界からみれば、この1着の真実など無数に存在するメタフォリカルなシンボルであると同時に、ファジーな個体でしかない,万物の片鱗に過ぎないのかもしれません。
因にわたくしは「シャツにトラウザーにストレートチップ。男性が正しい場で着用する一張羅」と謂います。
これも、そう、メタファーに過ぎませんが。
70s U.S vintage real riders jacket “ personal custom piece ”
とはいえ、シャツにトラウザーにストレートチップを揃えておきながら、バーミリオンオレンジ色のカスタムライダースジャケットのみを一張羅とし所有している紳士も、世の中に少なくとも“ひとり”は実在すると思うのです。世界の万物がメタファーであろうがなかろうが、夢は常にもって参りたいもの。おそらくその紳士、周辺の方には「頭がおかしい」ボックスの中に収められていると思いますが。
それでいいのです。
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早いものでラストデイを迎えました華のDay5。勝手ながらの思案で、誠に恐縮なテーマでございましたが、謂いましてもそう大それたものではなく、単に連続した5日間というDiary更新でしたので、企画というほど大きな内容でもなく、いずれにしましてもやはり恐縮な心持ちです。「街の匂い」をまた取り込みましたら、企画というほど大きな内容ではない試みを突然エントリーするやもしれませんが、その際は寛大なお心であたたかく見守って頂けましたら幸いに思います。
ということで、ご紹介したくてたまらなかった男性的リアルピースを。
いささかヴィンテージ/アンティークの品々を隅々まで研究、精察する際、“ みたことがない ” ものを拝見する場合が最も嬉しくも愉しく、そしてアドレナリンが放出される時間です。ミリタリーピースの場合がそれはまぁ嬉しいもので、実際的な細部を有するはずのそれらを注意深くも精察する瞬間は、心のアンカーがずっしり降りきる瞬間でもございます。検証と精察を続けた結果、〜はず、ではなく確固たるアンサーとともに実際的な細部を有するそれらへと変わりましょう。ラストデイにてご紹介させて頂く本品もまた、アドレナリンが大量に放出された時間でございました。
90年代〜00年前後の時代は、ミリタリーピースの生産にあたって極めてカオスティックな区分でもあり、ローコストで生産を繰り返されるサイクルは、マスターピースと謂えるどっしり構えた顔つきが存在しない時代、良くも悪くも “ みたことがない ” ピースが実在するのもまたこの区分であると感じます。シャツでもあり,ジャケットでもあるずるい塩梅。水分への耐久を捉えたコットンポリの選定ながら肌への反発を打ち消すようなテクスチャーは、所謂パリっとした特有の質感ではなく、“馴染みが良い”という表現が適切でしょう。男性らしいスタンドカラー。ロイヤルの冠を頭上に、英国海軍における王室直属部隊の色は、60年代と寸分かわらずディープネイヴィ。シンボリックに設置されたスリーブパッチは、エポレットの代替的意味合いもあるでしょうか。どうぞ心のアンカーを静かに降ろし、ご賢察を。
本品につき申し上げねばならないのが、ユーティリティという文句。ミリタリーらしいといえば “ らしい ” のですが、いかんせん “ その数 ” が凄まじく、実効的機能としてこれほど有力なものはないと率直に思いました。この5日間では、「ユーティリティ」や「プラクティカル」という文句そのままご紹介をさせて頂いてきましたが、A/Wのテーマが「原点回帰」である手前、男性にとっての上質な衣類を検証する際に、実践的な機能を有した衣類は、イコールで直結するほどデューティーであり、「デューティー」こそ弊店初期からご提案させて頂く内容でもあります故、「ユーティリティ」や「プラクティカル」といった内容も、今シーズンこそ注目したいキーワードのひとつで御座います。
両袖口にセッティングされた2カ所/計4カ所のコンパートメントは、縦11.5cm/奥行22cmの2段口。数字その通り、2部屋の奥行きが深いので、“ここですら” 大抵の物体は入ります。簡易的実効性のみを有したテープ仕様。驚くほど使いやすい上、利便性が半端ではございません。ジップのように故障の要因はみつかりませんし、スナップボタンのように何かの弾みで外れる心配もなく、懸念される接着力(厳密には違いますが)も、容易に修繕が可能。〜の場合を想定しましても弱点が見当たりません。
スリーブパッチにも両袖ともコンパートメント。計2カ所の設置は、フラップ式で耐水も加味。入り口13.5cm/奥行17cmに加え、4cmのマチも完備。さらにフラップ内に3カ所ループがチューニングされており、これを発見したあたりで4度目の「すげー」が出ました。
前立て左右にもそれぞれ2カ所コンパートメントを完備。こちらは袖ポケットとは異なり仕切りがないため、縦28cm/横22cmの部屋が左右計2つ。中へ侵入頂くと、またもやループが3カ所ある上、入り口9cm/奥行12.5cmのハイドポケットも。このハイドポケット、やや内側に斜めにセッティングされている上、その頭上にループが設置されているのでマスターキーなどをループに引っかけ収納することが可能。落ちず,取りやすいという実用性を配慮した選定。ちなみにこのハイドポケット、左右で微妙にディテールと仕様が違う仕組みがまたそそられまして、上記ディテールは左側。右のハイドポケットはループなしですが、ペン入れの機能。2カ所の区切りがついてますので3本収納が可能。
2サイズのご用意が叶いました。着丈と袖丈に差がでますが、175cm/44フィッティングの店長小林で両方成立します。私的好みは後者ですが、袖はカフスの調整によりしっかり留るのでご安心を。お試しの上、お好きな方をお選び下さい。
00s British royal navy combat utility shirt jacket “ dead stock ”
両袖4カ所、両スリーブ2カ所、両チェスト2カ所、左チェストハイドポケット、右チェストペンホルダー3カ所。合計12カ所のコンパートメントにキーループが9カ所。当時、トランシーバー用のコードホルダーとして機能していたループも。どうぞお好きなように、お好きな仕様で。
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わたくし文学にどっぷり精通しているわけでも 造詣が深いわけでもございませんが、人並みに読書を嗜むスタイルは幼少期より続いておりまして、とは謂うものの、歴史書や政治書、偉人伝ではなく一貫してミステリー一派。知識を吸収という目的ではなく、只管その時間を愉しむのみ。読書は映画と同じく、容易にディメンションスリップを体験できるので、日常を過ごすオプションとして習慣化しております。
なぜミステリーばかりに傾倒するかと問われたら慎重に回答を探さなねばなりませんが、慎重に捉えなければ好きだからと答えるしかないのも苦しいところ。そんなわたくし、村上春樹氏の作品も全作、勝手ながらミステリーの枠に収まると思っておりまして、よく拝読させて頂いております。現実性と非現実性とのファジーかつオリジナリティ溢れる世界観にファンも多いと思います。ミステリーや推理小説の類では決まって「ひとつの回答」がありますので、それに向かって枝分かれした推論を自前しながら愉しむことができますが、村上氏の作品には「ひとつの回答」が用意されていない、又は推測の領域に用意されていることが多いと感じます。仮にも「ひとつの回答」が用意されていない場合でありましても、枝分かれした推論を自前しながら愉しむことができる、ミステリーと同じく読み砕いていくベクトルを共存させることができますので、大変恐縮ながら日常を過ごすオプションに加えさせていただく作家様のひとりです。
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は、2013年に発表された長編小説。何かと社会現象を起こした作品のひとつと記憶してますが、この1冊も何も回答が用意されていない作品とわたくしは捉えております。多崎つくるを含む、5名の親友で成り立っていた完璧な共同体は高校時代、多崎つくる以外の4名は名前に色が入っていたので、「色彩を持たない多崎つくる」なのですが、高校を卒業した数年後、多崎つくるだけ絶縁を言い渡されます。絶縁に至った理由を知らぬまま36歳になった現在、鉄道会社に務める多崎つくるが真実を追い求めるはたらきを巡礼と表し、その過程を丁寧に綴った内容は、表題もそのまま。本当にそのままの内容です。村上氏における心情描写の真骨頂とも謂うべき作品かなとも感じましたが、激しい熱もなく淡々と的確に表現される描写に、圧巻だと憶えるのは村上氏ならではとも思います。そして裏と真実を読み解くスペックも試されるので、一度目はなにも考えずに、二度目はじっくりとご考察頂くのをお勧めしますが、中間のこの季節、“読みやすさ” という1点に置き換えましても大変にお勧めをさせて頂きます。
日常を過ごすオプションとして習慣化している以上、書籍を持ち歩くという選択はわたくしの中では必須項目。秋にむかう素晴らしい季節は、外で愉しむのも春と同様。大きな荷物は持たず、財布と端末機器、そして11cm×15cmと最強な黄金比を有した文庫本。仕事柄MacBook Airが入るか入らないかを試したくなるのと同じく、この長方形が入るコンパートメントを有した衣類を目にしましたら、自動的に「素晴らしき衣類」の中へプットイン致します。
素直に素晴らしい生地と思えるコットンファブリック。これは間違いない、ベンタイル社の打ち込みだろうと推理した挙げ句、真実は異なる哀しい結末。それほど高密度なオリジナルファブリックを提供するは、イギリスの名門と視界に捉えました。おそらく生地オーダーから製作に至まで一貫してブリティッシュメイド。裏地のグラフチェックもパーフェクトな塩梅。インテリジェンスな香りすら致します。
80s Grenfell cotton outdoor coat
フィジカルな印象の頑丈な生地に果実感のあるアップルグリーン。全身には4カ所の大型ポケット。ウエストのドローコードはスタイルの強弱を司り、雨が降らない日はフードを取り外しできる選択。調整可能なカフス。二重仕立ての前立て。ショルダー周辺は一枚パネル、ドロップさせ、中に着込み、それでも容易に腕を回せる快適性。トレンチコートやステンカラーコートの代名として名高い当方メーカー、端正に整えられたアウトドアコートは、むしろこちらが土俵ではと思えるほどハイクオリティ。自動的に「素晴らしい衣類」の中へプットインされた本品は、腕を組んで厳しい目で精査しましても、やはり本当に素晴らしい洋服です。
所有者しか分からないシークレットポケットもこっそりお教え致します。入り口は縦に28cm、奥行きが約20cmと、驚愕のポテンシャル。前立てでしっかり隠れるので、トラベラーコートとしましても大変にお勧めでございます。
日常を過ごすオプションのひとつに、如何でしょうか。
SURR by LAILA 小林
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