仮に 100 人と相対したとして、そのうちの 50 人が褒めてくれる服と 5 人が褒めてくれる服があるとした時に、私は後者を好ましく思う傾向があります。厳密には傾向と言うよりも紆余曲折を経て後者のタイプを選ぶようになったのですが、元来周りから着ている服などを褒めて頂く機会がほぼ皆無なのでそもそもの論点として当てはまっておらず、極々稀に褒めて頂く機会があったとて “ えぇ、はぁ ” と誰も幸せにしない薄ら笑いを張り付けた全くもって気が利かない、褒めてくださった方に申し訳が立たない愚鈍な受け答えしかできない有り様ですが、しかしながら惚れ込んだ一着 ( 一点 ) があまり褒められない、もっと言ってしまえば “ それはちょっと ” とまで言われたとしたら私は逆に嬉しくも思います。なぜなら他者に認められない自分の感覚は ( 場合によっては最も ) 大切にしたいと思うからです。
そもそもの人間的素養が主たる理由ですが、私は “ 総柄もの ” を着ると評判が悪い傾向にありまして、しかしながら総柄は大好きな一つですので、やれ職務質問だ、やれセカンドバッグが合いそうだ、やれ電車で隣に座りたくないだ言われたとて決して心は折れず、5/100 ないし 1/100 のお褒めをささやかな心の励みにしながら、今後もカジュアルであったニットをラグジュアリーな存在に昇華させたミッソーニは私にとって重要なワードローブの一つであり続けることと、わざわざ我々が御紹介するまでもなく現代においても認められた存在ではありますが、ヴィンテージにおける良い意味でミッソーニ “ らしくない ” 存在価値と、上質で情熱的なアート・ニッティングワークの求心力を引き続き SURR にて御提案し続けますことを、僭越ながらここに誓います。
80s Missoni
ちなみにこちらは素肌での御着用を心から御推奨。
SURR by LAILA 福留
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約12cmほどの長毛の下に密生した白や灰色の柔毛(産毛)。凍てつく風が吹き荒れる極寒の地で、生態系を存続させるべく進化の末に獲得されたカシミアヤギの特性。
柔毛は細く、密度が濃く、がしかし軽く。なにより暖かく。
丁寧なケアリングにより豊潤な艶が出現する、その「繊維の宝石」は、毛の生え変わる限定的なシーズンのみ採取が可能で、1頭から収穫できる量はおよそ200g程度。収穫された柔毛は、繊維の細さや長さ、他毛の混入率などによりランク分けされ、厳しくもここで振るいに掛けられる。
「14ミクロン前後の細さ、35mm前後の長さ、0,1%以下の混入率」
これは、全5ランクある内、最上級と謂われる1級クラスの数値。
例えばバランタイン社は、1級またはその上、特級クラスの柔毛しか使用しないことはご周知の通りですが、それほど上級にランク付けされる柔毛は、数値のとおり “ 細くて、短い ” が基本ですのでまぁ扱いづらいものでしょう。
詰まるところ、製品に仕上げるためには、呼応する確実な技術が必要なわけです。
どうりで、バランタイン社の扱うニットは素晴らしいわけだ。それは横入りする隙間のないほど事実そのものであり、偽りもなく歴史が証明してきた内容でしょう。歴史など知らずとも目の前にある1着に触れればわかります。はっきり謂いまして、その光沢と柔らかさは本当に別次元。
一方で、イギリスの地で出逢いが叶ったとあるカーディガンは、摘みのよいボタンに穏やかなキャメル色。“ 細く、短い ” それらは、毛玉になりづらいという性質も持ち合わせているうえ、ブラシを滑らせるほど柔らかく、そして豊潤な艶、とろみが出現する特性。上級または1級クラスを扱うメーカーであることは容易に推測が叶うこれは、驚くべき事にアノニマスな内容でございました。
メーカーなど存在しない領域。存在してもしなくとも、どちらでも宜しいことですが、例えば10名のニットマニアが居たとして、内、9名は素晴らしい毛質だとお答え頂けると思います。これらの善し悪しの判別も、以前お話したソファーの一例に通ずるところで、質の良いソファーは質の良いソファーを知っているものしか分からない。
質の良いソファーに、質の良いコーヒー、美味しいフレンチトースト、カッティングで決まるサンドウィッチ。
加え、質の良いカシミアをインプット頂くのも、永い人生にとって決して無駄ではないはず。
ちなみに、10名中、1名は「わたしはカーディガンを着ないので」
60s British cashmere knit cardigan
カーディガンを着ない、というルールを敷かれている方に強引に推奨は致しません。御素材どうこう、繊維がこう、という以前の内容でしょう。それはその特別ルールを遵守されるのが宜しいと、わたくしもやはりそう思います。
とはいえ、バランタイン社が提案するカシミアの其れと、極めて近しいクオリティランクを有する本作は、通常の収穫段階から柔毛の内容まで綴りたくなる純粋にも素晴らしい内容でございました。ブラッシングを丁寧にかけ、たまに暖かな自然光に晒しながら、大切にお召し頂きたい一品でございます。
そうか、これが上級のカシミアか、と、肌にインプット頂きましたら人生経験として何より。「カーディガンを着ない」とルールを遵守されている、その1名であったとしましても。
SURR by LAILA 小林
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【 “ ニット製品に仕上がった状態 ” における、ヨーロッパと国内のとある違いについて】
たとえば、ヨーロッパにおいて、製品として仕上がった状態のニット、及び、その繊維、さらに毛の光沢(主にキューティクル)が、充分ではない状態にあえて留めていることが多いです。つまり、素朴で質朴な天然繊維、その本来の状態のまま製品として成立させております。
一方で、日本国内では製品として仕上がった段階で光沢を出す、傾向にあるようです。どうりで日本製のニット類は、着用せずとも着心地が素晴らしいわけです。
どちらが善し悪しという話をしたいのではなく、なぜヨーロッパはそうなのか、について究明したいのですが、早くもその理由は明確で、「素朴で質朴な天然繊維こそ肌に優しいから」ということでは当然になく、「所有者がその1着を愛用し、ブラッシングなどの適切な施しを、自然なサイクルとして取り入れることを前提としているから」少なくとも理由のひとつとして挙げられるでしょう。
かたや、生産上の理由や、単にめんどくさいから、予測は付きものですが、もちろん一概に謂えるわけではありません。しかしいずれにしてもそれは、「ブラッシング」というひとつの行いに対する向き合い方、その習慣性、それらを日本と比較した際には、より明確に、より明白に、より明快に浮かび上がるのもまた、黙殺できない内容と思います。
なぜなら、ブラッシングなどせずとも、既に柔らかいので。
わたくしの場合、ニットはブラッシングと風通しだけで、クリーニングはほとんど行いません。
着用を重ね、丁寧にブラッシングを施すことで生まれる、特に天然カシミア毛の輝きには本当に感動させられます。
ブラッシングを定期的に行い、風通しの良い場所にかけておくだけで、天然毛のニット製品はクリーニングが不要になります。
毛玉が苦手という方がいらっしゃいますが(得意とする方はいないでしょう)、それは普段ブラッシングを行わないから。でも靴は磨き、歯も磨く。
でもニットにブラッシングは行わない。
毛玉をほぐすという役割のみならず、豊潤な艶と輝きを与えてくれるただひとつの行いは、弊店の総意として皆様に是非ともご提案したい心持ちです。
2名しか居りませんが。
さて、前置きが長くなりましたが、2017年A/Wというシーズンにおいて重要な要素のひとつである「上質なニットウェア」
特級カシミア毛のみを用いた某メーカー、スコットランド産のカシミアと天然ウール、70年代のメゾンメーカー、99A/Wのリブ編みは弊店発足以来初のエントリー。千差万別と約20点程、お披露目とさせて頂きます。
「2017 A/W Vintage Knit Wear for men」
10/14(土)12:00〜 on sale
現状、神経質なまでにブラッシングを施した最高の状態にてご紹介をさせて頂きますが、もし1着との出逢いが叶いましたら、どうぞご自宅でもブラッシングを施してあげて下さい。1週間に1度でも、ワンシーズンに1度でも構いません。我々としましても、永くお召し頂きたい想いのみでございますので。店頭でもレクチャーさせて頂きます。お気軽にご相談下さいませ。
それでは、皆様のご来店を心よりお待ち申し上げております。
寒くなってまいりましたので、どうぞご自愛下さい。
(特級クラスのカシミア毛は、ジーンズとどうぞ)
SURR by LAILA 小林
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