万能無敵 / Diary501
22.2.2018

 
 
例えばリネンという繊維または織物の起源を可能な限り辿ってまいりますと「古代エジプト」という歴史が顔を出しますが、紀元前8000年頃には原料の亜麻が確認され、紀元前3500年頃のエジプトの交易品の中には金やら銀やら陶器やらと混じって、織物として成立した「リネン」が実際的に用意されていたそう。現時点で最古の織物としてエジプト初期王朝時代のリネン製のドレスが出土したり、ミイラに使われる布こそリネンだったり。
 
いつぞや、紀元前2875年製のエジプト産リネンコート、などご紹介する日もあるやもしれませんが、そこはご安心ください。そんなもの発掘しようものならミュージアムクラス以上に国有資産になり得るレヴェル。そもそも直ちに地球へ還りそうな超自然繊維でできたコートなど、日常的にどうぞ、などと皆様にご紹介するわけにはまいりません。恒久的思考性が人一倍強いわたくしにとっては特に。しかしながら、しかしながらも、事実出土したからこそ歴史が明快に明かされていくわけではありますが、少なくともわたくしは歴史の探求や解明より、そのリネンというお素材/繊維/織物の “ 生命力 ” が(それはもう明快に)証明された瞬間こそ、歓喜に満ち溢れるべきでしょうと思うわけです(考古学者の皆様申し訳ありません)。そうなると今度はリネンというお素材/繊維/織物についての探求心を垂直的に降ろしたくなり、日本麻紡績協会なるオフィシャル集団に問い合わせを致しましたところ、ご多忙なご様子でてんで取り合っては頂けず、渋々と今現在エジプトのお話から綴らせて頂いているわけであります(日本麻紡績協会の皆様申し訳ありません)
 
 
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なんともリアリティのない文頭からご紹介に至りました「リネン」について、端的にも “ タフネス ” というワードで内包したい心持ち。わたくしからお素材自体の魅力を端から端まで逐一箇条書きを致さずとも、よりディープに、よりワイドに、ファッションをお楽しみ頂いている皆様にとっては欠伸がとまらない内容になると十二分に心得ております故、そんな「リネン」を用いたメインコレクションレーヴェルの素晴らしき作品を一例とし、誠に勝手ながら本日はご紹介させて頂きたいと存じます。
 
 
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そもそもとして、メインコレクションレーヴェルの素晴らしき一品というものをご紹介するにあたり、質素で簡潔的なお素材に対するボタンがetc、とか、正確無比な縫製はまるでリバーシブルのようです、とか、お素材以外のポイントこそ、つまりそれは、そうか、なるほど、と限りなくロジカルな具体的要素こそ、素晴らしき一品たる所以とご納得頂けるものと存じますが、そんな合理的なオペレーションより、初見で圧倒された純粋無垢な「素材力」を、とてもリアルに、とてもクリアに、お伝えしなかればならない使命感に近い想い、それは今シーズンこのタイミングに偶発的にも様々なお国/年代/種類の「リネン」が肩を並べている店内空間において、あるいは、イタリアとファッションを突き合わせた際に自然発生するいくつもの魅力的要素のうち、“ 素材 ” というキーワードも避けては通れないファクターであり、あるからこそ、別国にはアイリッシュリネンと世界最高峰の質が存在する中で、例えば素晴らしき一例のようなこの硬質無垢であり其れはまるでエクトプラズマのように色気すら漂う洋服であるがための「リネン」であり、驚くことにエクトプラズマのように色気すら漂う洋服であるがためのリネンは、肌に接触する “ 内側 ” に縫い付けられたシステムであり、硬質無垢そのものと云えるリネンをメインファブリックに任命した皮肉と紙一重の術は、決してスポイルではなく、人前に出るのに何かを着なくてはいけないから仕方なく服を着るベクトルも、服装に敬意を払う教えも、休日の午後にファッションを愉しむ単純明快な嗜好すら叶う、万能無敵な1着に見事に昇華された、やはりメインコレクションレーヴェルに相応しい一品で御座いました。
 
 
 
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ごく、控えめに申し上げましても。
 
 
 
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Newarrival 80s Giorgio Armani pure linen blouson
 
 
カジュアルレーヴェルが恐ろしいほどの “ 質 ” を具有するイタリ本国のビックメゾン中で、こうして実際にメインコレクションピースを目の前にしますと、この手のブルゾンの相場は決まりきってるだろう、何が目的かわかってるよと言わんばかりの束を連ねる少年のように、ただ、ただ、直向きで嘘のない “ 自信 ” が顕示され、両面が “ タフネス ” なリネンというお素材で表現されている具体性と、それを驚くほど丁寧に丁重に縫製されている具体性は、安易かつ抽象的な表現にて誠に恐れ入りますが、made in Italyをまるで見事に象徴した一品であると、弊店からも自信をもってお勧めを致します。
 
恒久的思考性が人一倍強い、わたくしからは特に。
 
 
 
 
 

 

 

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両刀論法 / Diary500
21.2.2018

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古きを知り新しきを産み続けたモードの帝王ムッシュによる作品は、昨年 LAILA VINTAGE の Yves Saint-Laurent Archives にて多数御披露目させて頂きまして、それは私にとって大変に感慨深い喜びに満ち溢れた催しでしたが、それと同時に思い起こされる胸に秘め続けた願いの一つは、ムッシュが創る男性のためのプレタポルテアプローチとの出逢いでして、氏が手掛けた作品のほとんど, 言うなれば 99.9% が女性のための品々であり、そもそも数年前のとある一着との出逢いまで男性のためのプレタポルテアプローチの存在を考えたことがないほどに、言ってしまえば願うことそのものが野暮なほどの確率であるというのが ” メゾンヴィンテージの世界 ” の一面なのですが、しかしながら存在を知ってしまった限り願わずにはいられないものの、例えお金を積もうと時間をかけようとそもそも叶わない想いゆえ、旅の度に現実を突きつけられざるを得ません。

本当に本当に、お金を積めば良いというわけではなく時間をかければ良いというわけでもない、ある種神のみぞ知る出逢い。それはムッシュの作品に限らず私にとってヴィンテージにおいての究極的に厳しい現実であり、かつこの生業を続けている最も大きな要素でもあるという単純明快かつ圧倒的な求心力を誇る麻薬のように甘美で妖艶な両刀論法です。

そして出逢えた本品は、紳士性を余すことなく備えていながらそれらに極上のアレンジを加えるムッシュの、帝王たるプレタポルテアプローチが施された逸品。私個人にとって最も尊敬する, 好きなデザイナーゆえ多大なる私的感情を含む表現で恐れ入りますが、” 王の風格 ” たる一着をここに記させて頂きます。

 

 

 

 

 

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深く延長されたネックの V ライン。ステッチそのもののピッチとステッチ同士の距離。創造的なガンフラップ。上品過ぎるほどのボタン。極めて微細に拡大されたベルトやベルトループ。糸の細さを洗練させたテクスチャー。ムッシュならではプレタポルテアプローチに関しましては、こちらでの読み解きは以上と致します。 ” 各所、従来の基盤的に沿いつつ圧倒的なまでに絶妙な感性を注ぎ込むことによって表現される、伝統的かつ正統的で、何よりモードな出で立ち ” という言葉では安っぽくなってしまうほどの, どんな言葉を用いても表現しきれないほどに圧倒的な帝王による真のデザイン, 真のモード, 真の個を実物にて皆様方の五感で読み解いて頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

 

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mid70s Yves Saint Laurent, trench coat

 

 

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大願成就 / Diary499
20.2.2018

イタリアという国が, 文化が培ってきた技術力や表現力や実現力や楽しさや喜びなど全ての ” 力 ” が存分に用いられた一着は、トムフォード氏による Gucci クリエイションを語るうえで決して欠かすことのできない圧倒的な存在であり、そして SURR において、ひいては 弊社 LAILA Co.,Ltd においても重要な存在であると私は感じています。

モードとは何たるや。デザインとは何たるや。を折に触れ夢想致しますが、現段階で私にとってのそれは ” 一着の服としての立ち位置 ” と考えております。プレタポルテ発足以前のモード聡明期からすでに 何かをお手本としデザインを, スタイルを生み出す という伝承性は存在しておりまして、その認識は完全なるオリジナルの存在の可能性を否定するのではなく、何かをお手本とする行為そのものを肯定しているのですが、重要なのは何かをお手本に生み出されたとしても、そのお手本とは別の良質な, 上質な一つとしてその一着が “ 独立して存在すべき立ち位置を見出せるか否か ” が極めて重要ではないか、と。A というヴィンテージをお手本に α という一着が生まれた時に “ これだったら α ではなくオリジナルの A で良い ” ではなく、α にも A にもそれぞれの特性と魅力を感じられるようでなければモードとは呼べない, デザインとは呼べない, 生み出したとは言えないのではないか、と。

 

 

 

 

 

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60 – 70 年代に生じた文化的な流れによって後のファッションとスタイルに明確なる影響を与えたレザーカルチャーの中でも圧倒的な存在感を誇る East West Musical Instruments Campany。音楽という煩悩に本能的に則ったからこそ、そしてその時代だったからこそ生まれることができた研ぎ澄まされ過ぎている独創性に富み過ぎている装飾哲学が今なお圧倒的な存在感を発揮し続ける同社においての名作的モデルの一つが、本品のお手本となりました。

端的に申し上げますと、その成り立ちはお手本のそれをそのまま踏襲しております。しかしながら Gucci というイタリアンモードが誇るレザークオリティ、構築技術や仕上げやパーツ一つに至るまでがお手本のそれとは全く異なる完全なまでに独立した上質という名の光を発しており、更にトムフォード氏によるお手本に敬意を払ったうえでの繊細ながら確実な微調整が施されたパターンメイクとフィッティングバランスによる成り立ちはまさしく、前述した A と α における後者の関係性そのもの。古きを知り新しきを提案し続けたトムフォード氏による Gucci クリエイションの真髄とも言えるこちらの大将軍的名作を御紹介させて頂くこの機会は、モードやハイファッションと並列してヴィンテージやアンティークを捉え続けてきた弊社にとって、元より East West Musical Instruments Campany との出逢いが設立のきっかけの一つとなった弊社にとって、いうなれば大願成就の一つでございます。

 

 

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04s Gucci by Tom Ford, East West Musical Instruments Company’s ” Smoke ” style leather jacket

 

 

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