デニムジャケットの教科書をつくりあげた米国某社の功績というのは言わずもがな計り知れぬほど偉大なものでありますが、その正統的実態の素晴らしき一例をたとえばレザーで構築するアプローチというのはそう少なくはないプロットで御座いましょう。それすらも、米国某社の功績に既に含まれているように、あるいは既視感すら存在する部門のように思えます。3rd typeのレザージャケットというのは。
とまぁ、そのような安易な思案を根本から取り除き、大いに反省し、腰を折らなければならない羽目になった突然の邂逅。許されるならば完璧なる感覚更新というのが実際的に行われたとポジティブに向き合いたいもの。だってそうでしょう、先ずはディアスキンだなんて反則じゃないですか。天然鹿革というのはどれほど神経質に考慮を払ったとしてもそれはもう見事な資質に溢れた自然所産であるのでしょうが、厳しい自然環境を懸命に生きたであろう痕跡を証跡として視認できる傷、瑕疵、仰々しい限りの各所変調、後、初代オーナー様が生活に付き添わせた形跡やら事蹟。それらを大いなる魅力として認めることができる限りなく深い許容メモリ。軽さと力強さの共存。自然淘汰の顕示。
そしてミラノコレクション某社の術である絶大な色気が保存された正統的実態など、いまとなっては正統性などといって包容することも叶わず、むしろ超特異的、超変則的、猛烈にイレギュラーな実態と認めたほうが気は楽なもので、上質なイタリア産ディアスキンのコクのあるい表情、追求を重ねメインレーヴェルでもマストパーツとして採用された釦、さらに力釦で丁寧に縫い付け、着脱を考慮した袖の裏地やら、マニアックショップで佇むノーネームの其れであるような面持ちをステッチの幅感と運針技術で荒々しく表現した綿密さやら、ここまでは副次的ラインとはいえ素直にも深く感慨に打たれるものですが、しかしまぁ、何かの決意の表れのように採択された潔が良すぎるショートスタイル、に、対する、アームレンジの長さというふたつの均衡が、全体を統括し、実践的に支配し、正統的実態であるはずの歴史的所産が禍々しいほどの色気を纏ってフィールドバックされた80年代初頭の同社手仕事というのは。
それはもう、
絶望的に見事な。
early80s Emporio Armani deer skin jacket, 3rd style
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
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80s France Chevignon 3rd style pigskin leather jacket
40s France cotton work trousers, elegance blue
50s France art repair trousers
80s JM weston full brogue shoes, deep navy
どれほど賢明で穏やかな考慮を払ったとしてもこの1着のネガティブポイントなど見つけることは困難に等しく、同時に滲出する強烈な気品は知りうる限りの表現を用いると “ 覇気 ” に近しい無形の性質を纏った外套でございました。あるいは慎重に省察を進めるうえで既視感の強い正統的なバルマカーンともあれば、ある分野における,ある種類についてのステレオタイプのようでありまして、それは60年代と70年代と80年代ではなにがどう違うっていうんだいと質疑を問いたくなるステレオタイプの一例でございます。おおかた襟のステッチの存在やら前立てのカッティングやらそもそもとして英国同社における些細な変化というやつは本当にささやかな変遷でありますのでその道の者でない限り追随することもまた困難であるように思いますが、それでも尚、前述数行に留保を置いたとしましても強烈な覇気を纏ったこの外套に限っては、あらゆる側面においても精到的な実相であり、刮目すべき同社の成功を収めた歴史的品位であり、誠に恐縮ながらここでひとつ補強証拠が必要でないレヴェルにおいての断言となる言明を手短に置かせて頂きますと、至極完璧なコート、でございます。
40s Burberry balmacaan coat
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
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ミシェル・ゴンドリー監督の自伝的映画に登場する少年ダニエルは終盤、いきさつによりセルフで髪を刈上げ、街のスーパーで売っていた紳士シャツ(巨大)を着用し、フランス田舎町を歩行する前方からのロングカット。イタリアメゾン18fwのショーのラスト、照れ臭そうに登場したクリエイティブディレクターが釦2つ程外して着ていたブルーのビックシャツ、引き続き脳裏に焼きついて離れてくれないウィリーガーソンの強烈な色気。ここ最近(“引き続き”を入れると2年程)無意識に浸透していたそれらのイメージを意識的に手繰り寄せるとぼんやり浮かぶ「完璧に近い個性」という共鳴点。その僅かな隙間に落ちた成功を手にするため一任されるシャツというアイテムは、角度を変えて向き合うだけで男性的にも、ファッションとしても通用する見事な振り幅。自身を編集する上でこしらえた多様なセオリーや厳しいルールも突き通せる適応力。ゆえに、枷を外し、本来的にも実際的にも自由で構わないと思いますし、わたくしは絶大な信頼を置いているわけであります。このシャツというアイテムに。気の向くまま釦を外し、風を通すため裾はアウト。本来ダブルカフとは袖を捲りやすいように発明された内容ですのでその意義を通して頂き、あるいはウィリーガーソン並みの色気を獲得するため重力に逆らわず、だらりと。それが最良の資質を備えた1枚ということであれば、ネームに込められた重み、細やかな運針、質のよい釦、圧倒性を放つ生地が具体的要素であるように、なにをどのように着用したとしても満足に受け入れてくれる許容力。「完璧に近い個性」にコミットメントする素晴らしき実相。
プレタレーヴェルでは確実に出現しない、エメラルドグリーン/ストライプという特異点こそ。
1993s Charvet cotton shirts, green stripe
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
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