Recommended / Diary492
2.2.2018

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日々を過ごす中で、自身にとって必要な品々がじっくりと集まってゆくことには言い知れぬ充足感があります。こと服においては、不変的なワードローブが増えるのはもちろんのこと、時にそれ以上の喜びの一つが “ 有りそうで無い良い服 ” との出逢い。なにをもって “ 有りそうで無い ” とするか、またなにをもって “ 良い服 ” とするかはお人によることと思いますが、この度御推奨する一着は私にとってまさしくその出逢いの一つ。

 

 

 

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ラベルや背景のみで品々を判断することはありませんが、ある種の一定を越えるとラベルを背負っている=その看板に相応しい品という等式に当てはめることが出来るのではないでしょうか。 “ Belstaff ” という看板を目にするとまずモーターサイクルの分野を連想される方もいらっしゃることと思いますが、名だたる選手や冒険家, 飛行士を魅了し、時に英国そのものと密接に関わりながら開発と発展を繰り広げてきたゆえにその認識に至ってしかるべきなのも一つの事実であると同時に、ヴィンテージにおいて、特に濃密な英国文化のヴィンテージにおいては極めて稀に “ それ以外 ” のベルスタッフに出逢える可能性がゼロではないのも一つの事実。
しかしながらその機会は極めてを極めるほどに稀であるがゆえ、沢山の方々に広く御認識頂くことは、きっと今後も難しいのではないかと思います。

本品はモーターサイクルやパイロットなど、あえて分野を限定させず、幅広いアクティヴカルチャーへの適用を目的とした一着。言うなれば日常着に近しいそれを弊店では総合して “ スポーツジャケット ” と称しております。前述の通り明確な意図と重要性の高い目的をもって開発を続けてきたベルスタッフであり、その看板という名のラベルを首の後ろに背負っているからこそのスタイルへの, 生地への, 設計への探求心は、半世紀以上の長きを経ていたとて決して色褪せることなく、ましてや現代では一層顕著に “ 一着の服としての完成度 ” を御体感頂けることと信じております。

 

 

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一見すると何の変哲もないカジュアル衣類に分類されるほどに少ない要素と装飾。まるで “ 塩少々のみな味付け ” のごときですが、要素が揃っていればそれが一番なことは皆様御認識の通り。一切の癖がない着用時の研ぎ澄まされた洗練性を備えながらも、その無垢なスタイルと相反する高い防寒性。そしてコートでもブルゾンでもテーラードジャケットでもない、一見何の変哲がないながら、どこかに属しそうで絶妙にどこにも属さない無機質性。これが私にとって “ 有りそうで無い服 ” 。

 

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その無機質性の大きな一端を担う耐久性と万能性を兼ね備えたコットンクロス。そして無機質性を根本から支える英国ならではの男性的な強さとしなやかさを両立させるテーラーのパターンメイク。肩に心地良く乗るフィット感と可動域の広さ、360° で発揮するフォルムの洗練性など、目視できる仰々しいアイキャッチ/デザインではなく、実際に御着用頂く日常において、そして御愛用頂く時間においてで徐々に御体感頂ける密やかかつ確かにこれら設計の要素こそ、私にとって “ 良い服 ” の証です。

 

 

 

 

 

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60s Belstaff, sports jacket

思い入れのある一着ですので、じっくりと御紹介でき嬉しいです。皆様方が皆様にとっての “ 有りそうで無い服 ” や皆様独自の “ 良い服 ” と今後も出逢えることを心からお祈り申し上げます。

 

 

SURR by LAILA 福留

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Recommended / Diary491
1.2.2018

 
 
 
どれほど悲観的に検察しましてもマイナス点がどうも見当たらないスペシャルピースは、僭越ながらも、わたくしが2017年11月に出逢った瞬間から改めてシャッターを切ったつい今しがた、それは困ったことに、キーボードをタイプしている今まさにこの瞬間もずっと、完全に心を奪われている1着であるということから、あるという理由のみで、本日から2日間に渡る「Recommended」の前半戦とさせて頂こうと思っております。
 
 
 
そして出来る事ならば、本日はより端的に、そして要を得たご紹介となりますことを、わたくし自身祈りながら早速参りたいと思います。
 
 
 
 
 
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其れは「コート」で御座います。
 
そして此のコートを仕立てたのが「Missoni」で御座います。
 
さらに其のMissoniから1970年代に世に送り出された本作は、最高級プレタポルテラインを意味する「UOMO」という冠を、形式的に有したコートで御座います。
 
 
先ずは、ご承知置きの程を。
 
 
 
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生産域が大いに拡大される前、1970年代、紳士服飾史においては圧倒的に出逢いが叶わない(今となっては)当時のメゾンピースやらデザイナー/表現者を介したお洋服は、当時でこそ、少なからず女性のため存在していた世界で御座います故、当然ながら並立視点にて生産ラインが築き上げられる80年代以降とは明瞭なる差が御座いますが、その明瞭なる差のひとつが “ 数 ” 。驚くほど少ない。そのうえ紳士服となりますと、上文の通り、驚愕的に出逢いが叶わない種類にもので御座いましょう。それは純粋にも弊店に足りぬ運も、力足りずな部分も当然あると自負が御座いますが、その努力値を差し引いたとしましても、やはり極めて困難な実情。其の道のコレクターが商業的ベクトルを持たずにコレクティブに収集する領域も少なからず御座いますので、頭を下げるどころか腰を折る回数も年々増すばかり。
 
 
上記377文字は「だからとても希少である」を説明した情報に過ぎませんので、こちらはどうぞ、お含み置きの程を。
 
 
 
そして其の1970年代にMissoniからに世に送り出された本作は、最高級プレタポルテラインを意味する「UOMO」という冠を形式的に有したコートで御座いますが、そもそも形式的にとどまらず、コートとして実際的であるか否か、これが重要であるように思いますし、事実、それが何より重要でしょう。
 
 
 
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『生地』
 
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『釦』
 
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『裏地』
 
 
 
以上、3つの要素は、わたくしの目に魅力的に映った具体的項目。
 
 
古来より人類や生物の存続の危機となる “ 寒期 ” をより安全に、より快適に過ごすという目的を早くも達成することとなった此の『生地』は、極めて質の良い毛布のように肉厚で柔軟、英国の伝統の其れのように織り合いの密が濃く、水分を吸わせようが湿気を吸わせようがベッドに放り投げようが着脱を1万回繰り返そうがまるで歯が立たないほど頑丈であることを想起させる、事実上の厚さ。白亜紀の森の中でも北青山からキャットストリートへ抜ける裏道でも存続の危機を回避できる資質。兎にも角にも屈強なフィジカルを有した生地で御座いますが、何より素晴らしいのが習慣性を見事に実現させている事。その明快な事由として、詳述の通り生地の厚さですが、ゆえに物語る “ 重さ ” が、想像しうるレヴェルの遥か先を往くほど現実的な “ 重さ ” であり、故に実現する “ 軽さ ” 。そのうえ、丁寧に削り出され、規則的に磨かれた上質なウッド釦は、驚くほど指馴染みが良く、限定的な年代のみ織られていた『裏地』は、実際以上にサイコティックでエレガントな要素を孕んでおりますが、それ以前にも暖を確保するうえで決定的な効果を発揮。
 
 
 
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正面に大きく設置されたハンドウォームポケットは、ポケットとしての純粋な役割を披露。
新規開発され世に送り出されるタブレットは、年々と巨大化。
このような最新機種でも難なく収納が可能。
 
現実的には愛読書を。
 
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男性特有のフィッティングルールがまるで通用しない内容こそ、Missoniが兼ねてより提案するオリジナリティ。すべてを抱擁するほど余白を贅沢に残したフィッティングバランス。只の大きいコートではない明確性は丸みと柔らかさを強調するクラシカルなアームパターン。抑制されたショートスタイル。
 
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なにより、暖かい。
 
 
 
 
 
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70s Missoni oversized wool coat
 
 
 
 
 
 
意より、お勧めを致します。
 
 
 

 

 

SURR by LAILA 小林

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フレンチブルーほど魅力的な色はない / Diary490
30.1.2018

 
 
 
生産環境がより整頓された1950年代フランス。ワークウェアという区分でさえも、皆が皆、木を切り倒すわけではないしょうし、無我夢中で絵を描くわけでもないしょうが、身なりをきちんと整える内容を職とする彼らのために仕立てられる “ 上着 ” も、当然ながら点在していたと予想することは、ファッションという世界でなくとも想像しうる事と存じます。
 
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日常的にテーラードを着る上で、快適性なるものを求めるのは至極当然。動きやすさではなく、立ち姿の美しさを限りなく追求した英国の其れらとはまた一線横にある内容でしょう。そりゃそうです、そもそもが「ワークウェア」というから、立ち姿の美しさを添える衣類など役に立つはずがないでしょう。つまりは、ビスポークレヴェルの具体性を用いずとも、動きやすくて、丈夫、そのうえ、きちんと見えるテーラードスタイルである “ 上着 ” 。其れは当時、一部の彼らにとって必要な衣類だったでしょうし、必要とされるべき種類の衣類なのでしょう。
 
然るに、出土された其の必要とされるべき “ 上着 ” が、カジュアル度数が高い4つ釦となりますと、必然的に意識が傾注する始末。
生産環境がより整頓された1950年代フランス、素晴らしき時代。
 
 
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時を現在に戻しまして、動きやすくて、丈夫、そのうえ、きちんと見えるテーラードスタイルである “ 上着 ” をいざ探すとなると、世の中よく出来たもの。適度なものが見つからない。欲するものを探すと見つからない。おそらくそのようなシステムになっているのでしょう。磁場とか、宇宙に神秘とか、その類の。
この場合、当て嵌める条件の中で、“ 動きやすくて、丈夫 ” というのが鬼門になるのでしょうが、やはりそこでいとも簡単に解決してくれる区分がワークウェアでしょうし、“ きちんと見える ” を解決してくれる内容こそ、随一フレンチワークなのでしょう。
しかしながら “ テーラードスタイルである上着 ” そのうえ4つ釦という限定性を加味しますと、磁場とか、宇宙に神秘のせいにせざるを得ない内容でしょうが、それはツチノコを捜索するような種類の希少性ではなく、あくまで存在しうるシステムの話。
 
ともあれ、AをA的に理解する美しさのように、ワークウェアをワークウェア的に理解し、自身の習慣性のもと向き合った際、どんな職種であろうと短い人生において必要なミルクチョコレートとミントガム、道に迷っときの質の良いコンパス、文庫本が気持ちよく収まる収納力と、それを現実的に可能にする計4つのポケットの内、わざわざフラップが設置されたチェストポケットには、失くしたら困る週末のゲームチケット。
 
 
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動きやすくて、丈夫、そのうえ、きちんと見えるテーラードスタイルであり、日常的な4つ釦で、ミルクチョコレートとミントガム、道に迷っときの質の良いコンパス、文庫本が気持ちよく収まる力を有した “ 上着 ” である其の1着、が、結局は想起させるきっかけとなりましたが、キャラクターに上手に昇華されたフレンチブルーほど魅力的な色はないと今一度考えさせられた次第。
 
柔らかく肌馴染みの良いお素材に合わせたしっかりとした羊毛のセーターは気持ちよく馴染み、それがスチールブルーであれば文句のつけようもなく。
 
 
 
 
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50s France tailored cotton work jacket
 
 
 
磁場とか、宇宙に神秘とか感じる前に、どうぞ、北青山3丁目まで。
 
 

 

 

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