北東アフリカに位置する南スーダンのナイル川流域のバハル・アル・ガザール地方をフィールドに居住するディンカ族。そのライフスタイルの大部分は季節の変化におおかた依存しており、雨季には定住し農作物を育て、乾季には川辺を畜牛の群れと一緒に流浪。とりわけ家畜である牛との関係が密接である民族であります。同国内に点在している民族の中でも 壮麗な黒肌をもつディンカ族には、装飾欲や美意識の概念が強く、男性/女性としての美しさを引き出すため、また民族への帰属、農業の豊作への祈り、家族繁栄の祝福など様々な理由からジュエリーを身につける習慣が御座います。その美しい肌色をより明確にするため女性たちは色彩豊かな個体を好み、または豪壮な土埃、精強な牛角という生活環境に適合させるため、丈夫で柔軟なアルミニウムを採択したり、勇敢な紳士達はバングルをきつく絞めることによってできる腕の膨らみをシンボルに。(実演、見事に叶わず)
厳格な英国の審査も、仏が提案する官能的なフォルムも、ビックメゾンの是認もなく。50年代頃作成された情報と僅かな量の事実、現代でゆっくりと敷かれたアウトライン。現地においては多種多様な美的感覚と様々なオリジナルの概念が存在する中、フォーマットがどれか、ステレオタイプであるか、デフォルマシオン的美術表現は正しいのか(客観的賢察において)追求の余地と歴史的奥行きは確かにあるものの、引き続きご提案としては同様に。
匿名性に包含された佇まい、スケッチのような平面性、歪んだフォルム。人懐こいあたたかみと、つるりとした非現実的な触れ心地は、ブルジョワへ向けて製作された高級性やマーケットへの提案でもなく精選に至った無垢アルミニウムの強力な訴求力と、120%手仕事による言い訳のない温度。産業革命を背景に部品やガラクタで器用につくられた工場副産物のようであり、一方で、人間の精神の奥底にある複雑さと豊かさを自由に表現しようとした「これはそう戦後仏のアンフォルメル的芸術品であります」と謂いましても解釈によっては外してはいないように思います。あるいは「コンセプチュアルアートへの皮肉」若しくは「モダニズムアートへのアンチテーゼ」どんな名前を付けようと構わないのですが、バングルをきつく絞めることによってできる腕の膨らみがなくとも、困った女性を救える精神さえあれば勇敢に生きていける世の中と、改めて。
about 50s Dinka Tribe handmade aluminum bangle
SURR by LAILA 小林
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いついつの年代、どこどこのメーカー、だれだれの作品、それらの情報というのは「過去の真実」を紐解くにあたり(少なからず)マストファクターであると同時に、ときに個体そのものの魅力を覆い隠してしまう因子でもあると、常日頃と、注意深く、物事をみるように致しております。とはいうものの、覆い隠すという表現がコレクトならば、本質的魅力が消滅するわけではなく、むしろ造形の美しさや本来的色香を増幅させる栄養剤となり得る情報かもしれませんので因子などと描写するのは語弊かもしれませんし、“だれだれ”まで特性できた個体であれば、“だれだれ様”にも失礼なわけであります。兎に角ここで申し上げたいのは、本質的魅力が仮にも覆い隠されてしまう “前に” 物体としての実相と対面頂きたいのです。
こと、「ジュエリー」に関しては。
というので、哀訴嘆願と叶うに至った、“ 匿名造形(アノニマス・ジュエリー)” という世界は、まさにそう、我々のエゴの集体的編集であります。なにかの習慣、なにかの技術、なにかの想いに包まれた造形というのは、誰の評価も、どこの栄誉も、服飾史的記述も必要とせず、手のひらに乗せた肉感と手応えこそ、すべてであります。
一方で、「過去の真実」を紐解くにあたり、なかには匿名性として包まれた正体に近づく情報を追跡/ほんの一部分のみの片鱗を獲得した個体も御座いました。そうはいっても、匿名性に内包された痕跡や光に過ぎない情報でありますし、ハウスを特定したとてミステリアスカーテンに包まれた個体も当然ながら。あらゆる角度で、尺度で、第七感で、長期的関係を築くに値する個体であると御選定を頂けましたら、それが仮にもフィジカルな訴求力と圧倒性のみを有する砂漠のなかのダイヤモンドであったとしましても、あくまで匿名点。群衆に紛れるように、Keep a low profileの心持ちがコレクト。紳士の心得として。控えめに、目立たせず、さぞ、当然のように。
New arrival from Finland
New arrival from Denmark
New arrival the mining sites
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かねてより SURR では背景や組成などが特定できるジュエリーや刻印という名の看板を背負っているジュエリーなどと対極に位置する、製作者や時にその意図すらが不明な匿名造形品を “ アノニマス・ジュエリー ” として不定期で御提案してまいりました。装飾品や造形品に限らず、前者にはそれぞれの専門家が大なり小なり存在するため、その御縁の恩恵によりある程度安定したセレクションが叶うのですが、後者のアノニマス・ジュエリーは基本的に専門家と想える人々がおらず品々は世界中に分散しているため、それらとの出逢いは真の意味で砂漠から一粒のダイヤモンドを見つけ出すようなものだと、私は感じております。
この度お披露目が叶いました新作, 匿名造形の数々。このような編集を行わせて頂く事は実を申しますと、 SURR にとってささやかながら明確に “ 挑戦 ” です。製作者や時にはその意図すらが不明であり、いつの時代に生まれたものかという判断も品によっては素材感という不明瞭な要素を基準にしなくてはならず、我々の基準においては極めて強い求心力を有すると共に危うさも伴う諸刃の剣。そしてなによりも砂漠のダイヤモンドゆえに編集に踏み切れるほどの構築が叶わず、結局のところ着想から実現まで2年という歳月が必要でした。
Newarrival, 匿名造形
なお、感じて考える時間はたっぷりとございましたので、最終的に “ 匿名 ” という概念を拡大するに至りました。製作者や背景不明という純然たる匿名性のみならず、匿名力のある装飾性や、伝統的かつ不変的であるがゆえ逆に匿名性を有することとなったモチーフ, スタイルなど。あくまで我々の基準ではありますが、この度の “ 匿名造形 ” という表現にて編集させて頂いております。もし御興味頂けましたら引き続き純真無垢な眼にて捉えて頂き、僅かでもお愉しみ頂けましたら幸いです。
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