例年に比べて潜思する機会が多いので、ああだろう、こうだろう、と心の中で推測と答え合わせを繰り返しておりまして、蓄えた経験や知識で正しく推量しようとする過程もまた至福の時間でありますので勝手ながら愉しませて頂いております。
そのようにして擬似的なディベートごっこが開催される機会が多いというのは、例年に比べて潜思する機会が多い、詰まるところ、例年以上に出逢いが多い、という極めて幸運な事実でありまして、然もややこしく思案を巡らせる正体の大部分というのは、80s ISSEY MIYAKEで御座います。ああだろう、こうだろうと推測と答え合わせを繰り返す内容というのはディテールの正体を究明するという無邪気な行いですが、そんなことはどうだっていい仄かなプロットに過ぎず、蓄えた経験や知識の外で辿り着く “ 素晴らしい衣服 ” という単純明快な着地点。さらにそのように着地する衣服というのはおおかた「コート」に分類されるものでして、同社,同氏が提唱する哲学というのをより明確に感じ取ることができる実現物であるように思います。そのような機会が多いのです、例年に増して。そう、80s ISSEY MIYAKEのコートというのは意義を挟む隙間もなく素晴らしい。これは紛れもない事実で御座います。ここにわたくしの一意見というのを僭越ながら置かせて頂くと、もっと爆発的な評価を獲得して良いのではないか(現時点で高い評価を得ているという事実のうえで)、安っぽい文句ですが純粋にそのように想うのであります。ヨーロッパ圏においても本国においてもクリエイターやデザイナー様に評価を得ている印象も拭えず、決然としたオーバーフィッティング、あまりにも美しいドレープ、和洋折衷の個体性、仕立ての良い1着の外套として、真髄を求める者にこそお認め頂きたいと。なんとも偉そうでな一意見でありまして、失礼にも不快なお気持ちにさせてしまいましたら申し訳ありません。
しかしながら、長年に渡り心を奪われてきた「コート」という区分、以外のステージで素晴らしい資質を放つ1着、この邂逅というのは今シーズン最も幸運であった出逢いのひとつで御座いました。同社においてもっとも心血を注いだとされる要素に「素材」があるのはご周知の通りと存じますが、引き続き日常への探求と快適性、何より “ 天然素材への追求 ” に渾身の力を込めた本作クリエイションライン「Plantation」。羊毛、綿、麻への礼讃。その無垢な資質への圧倒的追求。メインファブリックとした生地開発。同社の魅力が極限まで保存される「生地」という要素。その中で採択された “ 麻=リネン ” という素材。初見立ち会いの際、擬似的なディベートによる回答ではリネンに加えウール(羊毛)の混成を推測致しましたがおおきく裏切られ、占有するはリネンのみ。その軽快さと相反するような弾力のある強力な織り上げ。テーラードでありながら裏地を付けない選定と、無垢本来の勝負。ラペルは排除。背面のプリーツ。細やかな仕事。袖を通すと蓄えた情報や知識の外で辿り着く “ 素晴らしい衣服 ” という単純明快な着地点。
生地の縒れや、癖すら天然物のように美しく、質素でありますが、ここに色気と習慣性を備える技巧的な技というのには、咀嚼するたび、深く感服致します。
80s Issey Miyake “ Plantation ” lapel less linen tailored jacket
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
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いつぞやご紹介を、と申し上げてから気がつけば3ヶ月ばかり経過しておりました。例年通り穏やかな気候と陽光に満ちた5月は、集中力を切らすと寝てしまいそうな危ない店内でございます。錯綜する情報やら世の中の目まぐるしいスピード感やら、あるいはどうだってよいニュースの一例から脱し、ニュートラルスイッチを限りなくONにするには絶好のタイミングでありまして、そのようにして効きが良くない冷房の風で涼みながら前方4面の窓から覗くバージニアクリーパーの緑緑を視界に捉えますと「緑に映える1本の赤」という状況に出くわすわけであります。とはいっても前々からその状況というのは代わり映えもなく其の状況なわけでありますが、中立的思考を前提に夕方17:00の時刻を知らせる街の音楽が鳴り出す頃合い、そのタイミング、5月の陽光、穏やかな気候、控えめな夕日、緑に映える1本の赤、ニュートラルスイッチはオン、美味いパンケーキレシピと同じようにそれらの要素が欠陥なく混在し成立する瞬間というのは、夢と現実を隔てる線引きがなくなり、あるいは何かの取り違いでパラレルワールドに存在してしまったような不可思議な感覚に思えてくるもの。要するに、寝てしまいそうな危ない店内なわけでありまして、集中力を決して切らさぬ日々という事でして、何よりくだらない独り言でございます。失敬。
いつぞやご紹介を、と申し上げてから気がつけば3ヶ月ばかり経過しておりました。今シーズン設けたテーマを象徴する素晴らしき実例で御座います。1900年初頭に創業したイタリアはミラノをメインフィールドとした同社の起源を辿りますと生地メーカーという内容が顔を出します。後にそのフィールドは世界へ拡散。おそらくスーツをビスポーク(もしくはイージーオーダー)されたご経験のある方はファブリックメーカーという其の顔には馴染みのある内容であろうと思います。70年代直前にはプレタポルテにも参入し、パターンオーダーにも心血を注ぐ。現在ではコレクションネームとしても周知に至っております。とまぁ歴史の陳列などわたくしが偉そうに綴る内容ではありませんが、少なくとも本作に関して申し上げねばならないのが、“ 素晴らしい生地 ” という引き続き同社渾身の採択と、テーラーを土俵としながらプレタの世界で魅せた“ スポーツジャケット ” であるという実相。
厳格な基準値を通過したように採択された美しい生地は、天然リネンのような軽やかさとテクスチャーが保存されながらも全体を占有するのはコットンである事実。時間を吸収したようなミリタリーカーキに効果的に配色されたグレイ。這わせる新緑、映える赤。ハンドウォームに並列して設置されたチェストポケット。品の良い前立て。アーム設計が成す緻密な空間支配、身体に沿わせた際に発動する固有の規律や立体美。その造形の色気こそ、パターンへの追求と考証が際限なく行われている同社のプライドの顕れであり、テーラーという世界の外においてその品位が保たれた素晴らしき実例のように思います。
80s Ermenegildo Zegna cotton sport jacket
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
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Newarrival 80s Yves Saint Laurent light weight trench coat
Newarrival 90s Levis number505 deep indigo blue & center crease
Newarrival 50s Swedish military art painted oversized pullover
Newarrival 80s C.P company by Massimo Osti military approach cotton T-shirt
Newarrival 80s Issey Miyake “ Plantation ” double breasted coat & lapel less tailored jacket
兼ねてよりエントリーを続けている同社の作品中、幸運にも最古の年代を更新することが叶いました。決して穏やかではなかった時代、富裕層の紳士によって丁重に誂えられた事実と相反するように保存された濃密な静謐、顔立ち、圧倒性。合計5つのコンパートメント。3つ折りという特異点。仏的美色と歴史深いボルドーブラウン。驚異的な革質。2度と出土はしない個体。しかしながら、しかしながらも歴史的産物という極稀有性が内包されながら強烈なリアリティと簡潔力と完結力を備えた素晴らしき個体であるという事実もまたお伝えをしなければならない情報であると同時に、これもまた弊店におけるひとつのモットー、あるいは暗黙の規律、もしくは冴えない店長の独り言でありますが、肌馴染みが良く、使い勝手が宜しい無垢な “ 道具 ” であるかどうか、御賢察と御潜考の程を頂けましたら何よりに思います。
Newarrival 30s Hermes multi way clutch bag
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
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