社会貢献性の高い資格所有者が注文主のコート / Diary636
5.12.2018

 

この度の新作である “ フランスにて製作された、それぞれに一人の注文主が居たコート ” より明日御披露目させて頂きます一着目となる本品は 1963 年に御医者様の要望にて製作された逸品でして、注文仕立服という芳醇かつ特殊な背景に加えて Doctor という純真無垢な要素/要望が加わることで獲得した仕上がりは極地的なまでに我々にとってより強く御注目頂きたいとささやかに主張してしかるべき存在価値と相成ります。

 

 

 

 

御医者様 - 私は成ったことがありませんしきっと来世も成ることは無いであろう世界のお方ですが、光栄ながらこの生業において触れ合わせて頂く機会があるうえでの浅はかな印象と致しましては、極めて極めて大変なお仕事, もちろん職業に貴賤無しではありますが、御医者様方がいわゆる “ 触れ扱われる ” 事柄はとても推し量れるものではございませんので、私なんぞが大変なお仕事と申しあげるのも失礼に値するほどに想いますが、しかしながら間違いないのは社会にしっかりと貢献される, 尊敬されてしかるべき, “ 先生 ” という敬称に一寸の曇りも無く値する方々 に想います。本当にいつもお世話になっております。お酒飲み過ぎないように気を付けます、すみません。

その 私なんぞが推し量れない大変さ を想像させてくれる要素がこちらのビスポークコートにも潜んでおり、まず始めがベンツの深さでして、皆様方も御存知の通り古き乗馬用のコートなどは稼働目的として通常よりも深いセンターベンツが設計されるのですが、こちらもそれらと同じく深いそれが配置しており、きっと着用時にも即座に従事・対応を目的としたそれだったのではないかと想像します。更に特徴的なのは袖の取り付けでして、この点は私が服創りを学んでいないがゆえ抽象的な表現となってしまい恐縮なのですが、およそ 1930 年代頃以降の仕立服は基本的に “ 身頃から袖が生えている / 身頃から袖が延長している ” ように結合されているのに対して、それ以前, 主に 1900 年代初頭まで仕立ては “ 身頃に対して袖が独立している / 身頃 に対して少々袖が被さる形 ” の結合であるとかねてより想っておりまして、前者が身頃に対して袖が “ シュッ ” だとすると後者が “ ガシャコン ” と申しますか、この内容を可視化するのが初めてなので大変に歯がゆいのですがそのように感じておりまして、本品もその様式にて構築されているのですが、この論点は美意識よりも機能性であろうにも関わらず、私はこの構築形式の結果に極めて強い美しさ, 純粋な目的性ならではの輝きを感じ強烈に惹かれます。

なにより強烈な印象を残すのは袖を通し身体に添わせた時の得も言われぬ心地良さ。問答無用に包み込まれると申しますかコートそのものに優しく抱き締められると申しますか、その絶頂感は言葉で表現しきることが叶いませんで、それはやはり注文服, ビスポークであるがゆえの職人技術によるものが大きいでしょう。私はビスポーク至上主義者ではなく既製服も同等に愛しておりますが、この直感的な問答無用感と絶頂感はビスポークならではの感情に想います。またこれも想像の域を出ませんが、このコートを抱き締め返すとこの美しく青みがかったヘリンボーンはウールだけではなくロウシルクを織り交ぜた組成なのではないかと想わずにはいられません。着用絶頂感と併せましてこの点も是非実物にて御体感頂きたいです。

 

 

 

 

 

1963s French bespoke chesterfield coat for doctor

最期の特異性であるポケットを排除された胸部ですが、この点は純粋に注文主の好みだったのではないかと想像致します。前述の要素とこの無機質さを踏まえまして御身体への寄り添いによって, 寄り添わないことでの唯一無二な結果によって, 嗅覚のみによって等で御判断頂き、御医者様という注文主と時代を経て現代のお姿にして頂けましたら幸いです。

“ フランスにて製作された、それぞれに一人の注文主が居たコート ” からの一着目となります本品 “ 社会貢献性の高い資格所有者が注文主のコート ” は明日 12/6 ( 木 ) 12:00 に御披露目させて頂きます。

 

SURR by LAILA 福留

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2部構成も考えましたがやめました / Diary634
3.12.2018

 

 

ボリューミーな本日のエントリー(になりそう)ですが何卒ご容赦下さいませ。

 

 

1980年代のミラノを代表するユースカルチャーに【Paninaro / パニナロ】が御座います。風と音楽に乗って受け入れられた米国文化のアウトプット、限定的に流行した其の世界主軸は “ 色 ” と “ 自由 ” によって構成され、暖かな日にはカラフルなスウェットシャツ、冬の日にはボリューミーなスポーツジャケットを一張羅とし、ブルージーンズとホワイトジーンズをこよなく愛する個人【Paninari / パニナリ】によって集積されていくわけです。然りとて第二の米国とならない基底には、イタリで育った彼らの、巧みなカラーチューニングセンスと、高い身長と、隣に歩く綺麗な女性が然うなのでしょうが(米国批判では決してない)、制限性がない色彩選択や瑞々しいカラーパレットはサンバビラ広場を鮮やかに彩り、その発露を大事に活かすように提供された衣類やテキスタイル、メーカー / イタリハウスの存在は、自然な時流の一貫であり、ミラノコレクションで躍動したメゾン/プレタポルテの体温には決して触れない、市民との密着性が極めて強い、素晴らしきマニアック・レンジで御座います。そして全盛期当時、Olmes Carretti氏がメインパーソンに衣類の提供が行われていたイタリメイド【Best Company】には引き続き心を奪われているわけです。

 

 

 

この度、獲得に成功した2個体のBest Company、パニナリにとっては一張羅,其のスポーツジャケットで御座いますので、カラフルまたはテキスタイルを持つニットウェアと、いくらパニナリでもクローゼットに1着は入っていてほしいブラックテーラードも等しくブルージーンズに結び合わせを頂きたい編集メッセジを勝手ながら。XXを選ぶイタリアの若者も無きにしも非ずという事で。

 

 

 

 

 

さて、中綿またはダウンをとじ込めた暖かなスポーツジャケットの構成要素、目に視える表面すべてが打ち込み素晴らしい天然木綿ということで、例によって恐ろしい程の求心力を発揮して御座います。コットン愛好家の性癖を持つ方ならばどれほど訴求力のある人肌優しいコットンであるか御判断頂くに10秒を要せず、心より触れて,掴んで,着て,脱いで,抱きしめて,投げていただきたい推奨点も変わりなく、そのうえ今現在世の中で提案される唯唯大きいボリューミー・ダウンの魅力を苦手とするわたくし個人的嗜好がマイノリティとなるならば、ここで綴らせて頂く事,皆様をがっかりさせてしまうやもしれません。
 
この個体性ながら遠慮がちな佇まいと謂いますか、全体としてコンパクトに制御されている同社の狙いならば本当に頭が上がりませんし、大袈裟に向き合う必要のないダウン,スポーツジャケットとの御縁は稀有であろう事、そもそも【ダウン】というギアを選択してこなかったわたくしですので爆発的な感覚更新が行われた対象其々がメインストリームに沿うかどうかで謂うと極まるくらい外れておりますし、そもそも恒久的に修繕可能なコットンのみで組成された真冬のウォーム・ギア / バイオレンス・ギア / ダウンジャケットなど他に存在するものかどうか疑わしく、ますます性癖を刺激してなりません。そして今まで検分して参りました【Best Company】のそれぞれと今回も引き続きの意見は、カジュアル・ギアとしての本粋をがっしり掴んでいる事、ネイチャーフィールドまで通用する能力をタウンユーザーへ提案する癖(プロダクトラインにより)、実際的な応力、製品としての個体力、ディテールへの認識と理解力、スポーツシステムの深み、従って成立する,Olmes Carretti氏の支配色とテキスタイル提案と憶い、要するにアライグマコレクション(過去認識個体により勝手に命名)のローズレッド×ターコイズブルーに引き寄せられてならず,白状しますとシルキーホワイト×スカイブルーのスキージャケットに呑み込まれ、つまりは孰れも木綿構成とならば真冬の一張羅としてお勧めしないわけには参りません。

 

 









late80s-early90s Best Company cotton sport jacket from Olmes Carretti

 

 

 










late80s-early90s Best Company cotton down jacket from Olmes Carretti

 

 

 

SURR by LAILA 小林

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French bespoke coats / Diary635
4.12.2018

例えば一つの旅において 100 という品に出逢えたとして、弊店では一品一品異なる専門職人様方による施しを経て御披露目という手順を以前より選ばせて頂いておりますが、その配分は手前どもの人的力量であったり職人様方各々の施術量に則って変速しておりますので、折に触れて頂戴する “ 今後も何か新作はあるか ” という御質問に対しては常に ( 大前提として絶望的に濁りきっているうえでの ) 迷い無き澄んだ眼差しで “ はい ” と御答えさせて頂いているのですが、今期におきましては例年以上にコートの類が随時不十分な状態が続いておりまして心苦しく想っております。
また先に続いて、御興味頂いている品がある前提で “ では、それと見比べた方が良いか ” という御質問を頂戴する機会がございますが、弊店の品は弊店にとって全て異なる論点における魅力があると想える品, それぞれがそれぞれにおいて前向きな意味合いで異常なまでに独善的と感じられる品の御提案を努めておりますがゆえに、それに対してもやはり絶望的濁澄眼差しをもって “ 適宜御判断頂くべきです ” と御答えさせて頂いておりまして、その品の背景なのか組成なのか御身体への添い方なのかなど判断基準は常に流動的なことと想いますし、そもそも御気分や御心持ちこそ縦横無尽に流動的なことと想いますし、メメント・モリではありませんが先々 ( 誰にも解らない未来 ) に捉われ過ぎても健全ではないと想いますので、常に御自身における御自身だけのそれこそ独善的な直感諸々に則って御判断頂くべきと想います。さすればすべからく晴れ渡った御心にてこの過酷な世の中をお過ごし頂けるのではないかと。

 

 

この度準備が整いましたのは全て “ フランスにて製作された、それぞれに一人の注文主が居たコート ” という背景の品々となります。すなわちこれまた異常なまでに独善的であり我々にとってより強く御注目頂きたいとささやかに主張してしかるべき上質さの品々でして、社会貢献性の高い資格所有者が注文主であったり、その同区分において稀有な色気特徴を有する一着であったり、老舗による変則的な製作背景の一着であったりとそれぞれに 『 個 』 しかございませんが、愛しさと切なさと心強さと共に難易度が同居するビスポークコートという区分において弊店の独善的な選択基準を僭越ながら敷かせて頂いた末の内容となります。それらの 『 個 』 と独善的な魅力があるうえで我々にとっての現代性がある品々を、注文主と偶然かな一致する御身体への寄り添いを良縁と御判断頂いても良し, 寄り添わないことでの唯一無二な結果を御認め頂いても良し, もちろん嗅覚のみで御選択頂いても良し。いずれにせよ約 90 ~ 55 年ほど前に一人の注文主によって立案し、一人ないし複数の職人によって実体化したコートが時を経た現代においてどのような過程を経てどのような姿になるのか、私は心より愉しみに想っております。御興味頂けましたら御期待頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

 

1930s – 1963s French bespoke coat collection

順次こちらでの御紹介ならびに店頭での御披露目を行わせて頂きます。宜しくどうぞお願い申し上げます。

 

 

SURR by LAILA 福留

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