改めて宜しくお願い申し上げます / Diary661
25.1.2019

 

 

約2年と数ヶ月前にご紹介させて頂いた本作という事は約2年と数ヶ月の間、弊店空間の何処かで息を潜めているという事ですが、服飾に対する動物的嗅覚理論が正しければ動物的方々のアンテナに反応し得る個体ではないという紛れも無い事実はソッと置いておいて、息を潜めて何方様の御迎えをジッと待ち続ける御品は本作に限らず、上記事実の他にあとひとつ付け加えるならば、そういった品々が脚光を浴びてから時の経過と共に恐ろしく馴染んで往く光景,それはまるで纏う生命エネルギーや活気を自ら取り除き、存在性を消し、空間の一部であり全部となる擬態化現象を察知致します。そうか、おまえもキャラクターと成ったか。がしかし、だからこそ、悲しむべき事柄ではなく対象品々に対して謂えば其のままジッと待てば良いと心底想いますが、擬態化現象から解放される瞬間というのは謂わずもがな、温かな御手に触れて頂けた時で御座います。袖を通し、姿見越しに自らを映して頂けた時で御座います。息を吹き返したように本来的な資質がカラフルに色付く様子を捉えますと、決して失われない純真かつ絶大な強さに、都度、心酔致しております。だからこそヴィンテージは、

 

 

服飾に対する動物的嗅覚理論が正しければ動物的方々のアンテナに反応し得る個体ではない事実が揺るがないものだとしましても、本作に限ってはそもそも時流に添い続ける健気さもなければ、女性に愛されるシンボル性もなく、英国他社の広告力に隠れ、ファッションストリームから離れた場所を動かず、いつの時代も表舞台で脚光を浴びる日は来ないのだろうと此の様な機会の度、長考に帰しております。以上は紛れも無い事実かもしれませんし私の野暮な想像かもしれませんし、がしかし、いずれにせよ、いえだからこそ、本作に対して謂えば触れて頂ける温かな手をジッと待てば良いと心底想いますし、貴重なお時間を頂戴し弊店へ足を御運び下さる皆様はこゝろの琴線に触れて頂けた際にはじっくり御考察頂けましたら引き続き光栄に想いますし、本作と世界との隔たりが如何に巨大なものだったとしましても、決して悲しむべき事柄ではないと想いますのは天の邪鬼かつサイケデリックな性格故で御座いますし、研ぎ澄まされた個性を希求し続ける漢の性で御座いますし、“コットンジャケット” と “ポケット” をこよなく愛する私の高熱なわがままで御座います。そもそもとして、

 

弊店の総意で御座いますが、もしくは意思で御座いますし、主我で御座いますが、1924年から歩みを続けるBelstaff社に対する評価はとても大きく、あるいは服飾史を彩るメゾンハウスと全くを以て同じく、それは服飾史を支える重心部分,限定性や狭き目的性、総じて専門衣料の存在と発達は男性世界ゆえの色香であり、特有の引力が御座います。表舞台で輝くファッションシーンの形成因子を担ってきた紳士区分、声のボリュームを上げますが、Belstaff社の功績と軌跡と姿勢に対しては、恭敬の意を置かせて頂いております。

 

 

2016,3,26【素直になれ、自分 / Diary244】

 

 

 

 

 


 

 

トライアルレースの更新記録に挑むプロレーサーへ向けた製作事実と本作【トライアルマスター】の名ナンバー。防風と防水を実現するオイルドコットン、転倒時にも身体を護るエルボパッチ、運針強度、操縦時の快適性を目的としたアームフォルム。英国王室直属軍への納入品製造を請け負っていた時代と一致する60-70年代。以上が恒久性をもって名作と残り続ける事実詳細と憶いますが、弊店において誠に恐縮ながら特段立派な金額を設定させて頂いている本作は【パーソナルオーダー】成るオプションと個体偉力に尽きる事実追加、通常、前方4フラップポケットが定石のデザイングでありますが背面2カ所に追加オーダーされた計6カ所のコンパートメントは当時の注文主(ブリティッシュ・レーサー)によるオフィシャルオーダーであった事実痕跡で御座いますゆえ、大変リッチな金額と相成りますのは企業努力の足りなさと謂いますか、同社への心酔に尽きる評価と謂いますか。Belstaff社の刮目すべき躍動年代に製造された傑作に加わる世界唯一の御品という偽りのない情報はそっと引き出しに仕舞って下さいと常の文句も謂いきれない心情ながら、結局のところ染み渡ったワックスが風化していく様とコットンの発育性、木綿裏地の見事な配色美、ポケットは在れば在るだけ良いという単純明快なロジックを叶える収納席には例によって文庫本が入りますのでこれ以上の筆舌もなく、もしかしますと時流に添い続ける健気さもなければ、女性に愛されるシンボル性もなく、英国他社の広告力に隠れ、ファッションストリームから離れた場所を動かず、いつの時代も表舞台で脚光を浴びる日は来ないかもしれない本作トライアルマスターで御座いますが、がしかし、いずれにせよ、いえだからこそ、本作と世界との隔たりが如何に巨大なものだったとしましても、暑かろうが寒かろうが常に店内何処かで置かせて頂いている本作であり、此の様な機会に一度温かな御手で触れて頂けましたら心の底より光栄に想いますし、同社ハウスプレートの翼に込められた “ いかなる時代も困難を乗り越えて飛び続ける ” 意味性をソッと御査収頂きまして、皆様、改めて宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 





 



1960-70s Belstaff model “TRIALMASTER” , Pro – rider’s custom order jacket

 

 

SURR by LAILA 小林

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Waiter jacket / Diary662
29.1.2019

 

KARIM HADJABについて意は尽くされたように感じているのも正直なところで、これ以上何を御伝えすれば宜しいかわからない気持ちも正直に明かしますが、Karim Hadjab氏が表現するKARIM HADJABについて理解する事と感じる事は恐らくイコールでは結べず、自然環境下へ1年間野ざらしにしたとしても、黒泥で染め上げたとしても、クリエイションの発露や過程や運びや収穫へ絶大な理解を得れたところで其の先へは辿り着けないような深さを感じるのはKarim Hadjab氏の感覚が日々更新されているような気配と、実際的という言葉に勝る概念的性質があまりにも強烈だからか、そうはいっても偏に【ブランド】を司る【デザイナー】としてのメッセージ性は皆無で、結局のところ彼は只一向な【表現者】であり表現者による【表現】であり、人生の半分を越えた一人の男性であり、我々はクリエイションを獲た1着から温かな何かを掬い取れなければ “ 完璧な個 ” として対面するには不足で “ 善 ” まで及ばず、そして出来うる限り深いところへ往こうとする試みはKarim Hadjab氏が表現するKARIM HADJABを買わせて頂く弊店として宿命のように入り込まねばならない拘束性ではなく、何かこう、「ヒト と 服」のようで、様々な情報やファッション的感覚によって肉付けされない無垢物のような、根底的で、本質的という事ではなく、決然としたヒトとの絆のようで、いえむしろ「服 と ヒト」のようで、あるいはファインジュエリーにも相通じる人生的マテリアルなのだろうと心を鷲掴みにされた熱は、約3年の間も色あせることなく温度を保っているという事です。となるとやはり未だ未だで御座いまして、未だ未だ意は尽くされておらず、感じた何かを御伝えし続けなければなりません。

 

さらに謂うと(個人的な感取ですが)クリエイションの発露や過程や運びや収穫への理解はファーストシーズンの際にそっと置いてきまして、こういう御伝えの仕方は会社に属する人間として良くはないと知りながら、KARIM HADJABの名やクリエイションやどのような時間を経た1着であるかは副次的情報として引き出しに仕舞って頂き、純真な衣服として長期的関係性を築いて頂きたい想いも、約3年過ぎようと少しも変わりません。それほど生命力に満ちた衣服と想います。只一向な表現者であり人生の半分を越えた一人の男性が,Karim Hadjabという感性が美しいと憶う事柄を信頼でき、到達できない距離を感じ、心に温かい何かを感じる説得力は、衣服に対する揺るがないほど強固な “ 愛 ” が、Karim Hadjabという男性にはあるのだと、わたくしも人生の三分の一へ向かう一人の男性として想いを寄せております。

 

 

また本日に加え、Diary539〜546番の連続8回に渡ってじっくりと綴らせて頂いた昨年の梅雨時でしたが、昨年Them MAGAZINE様のKarim Hadjab氏へのインタビュー記事における結びの16行に、すべてが凝縮しているように憶えるので、改めて引用させて頂きたいと思います。

 

 

 

 

これまでずっと、Karimはファッション業界におけるインダストリアルな性質から逃れようとしてきた。その考え自体は、「Tokyoite」を運営していた時代よりもっと以前の、彼が生まれ育った環境にも紐付いている。Karimが育った地域にはアフリカからの移民が多く住み、劣悪な労働条件の工場で働いていた。そんな環境に身を置いていた幼きKarimは、生地工場や縫製工場など工業的なシステムに疑問を持って育った。それが「服を新たに生産する立場ではなく、道にある服を拾って、あるいは見つけてきて、それと向き合う」という彼のスタイルに根付いているのだ。ベースとなっているヴィンテージの既製服は、いわゆるメゾンのような高級なブランド品ではなく、もっと安価なものだという。捨てられてしまう美しくない服でも、泥で洗い草木染めを施すことで、美しいものへ変貌させることができる。価値のないものに新しく価値を吹き込むそのクリエイションは、リサイクルという観点でゴミの多い消費社会へのアンチテーゼにもなっている。
「多くの既製服は、機械で生地を生産し、流れ作業で縫製され、終始インダストリアルな環境で完成し箱に詰められて売り場に送られてしまう。そのような作り手の心の通っていない服作りはとても嫌なんだ。着て美しいだけの服には興味がない。私の服はいつも着る人に寄り添い、風に揺られて、鳥の声を聞いて、たまには雨にさらされて。そのようなあり方がとても大事なんだ」

 




 

ところでr1950年代〜1960年代ミッドセンチュリーに呼吸をしていた「Waiter jacket」御存知でしょうか。当時レストラン等で給仕をするギャルソンが好んで着ていた通称ウェイタージャケットは、年代や製造ハウスによってばらつきはあるものの、浅めのダブルブレストに集合的な4つ釦、フラップを入れ込んだようなポケットの形式に(御釣りやチップの出し入れをスムースに行う)主張性のないピークドラペル、運動性と気品を守る緩やかなアームの前振り、木綿構成のテーラードスタイル。以上のマテリアルを具したコットンテーラードがあまりにも、そう,あまりにも優秀なもので、足を御運び下さった皆様へ広く広くご紹介をさせて頂いております。ミッドセンチュリー傑作のひとつです。おそらく打ち込みも密がない綿生地と謂いますか、しかしながら振るうと恐ろしいほど濃厚な音を奏でるものですので音方式で参りますと勝手ながら天然木綿の上澄みとして判断をさせて頂いております、が、ゆえにと謂いますか、これも真実のひとつとして御査収頂きたいのですが、先ずは半年程サイクル良くお召し頂くと、掴んだり着たり脱いだり触ったりもう一度掴んだりの連続によってか、しっとりと蜜を吸わせたようなテクスチャーを獲得して参ります。艶艶しいというか瑞々しいというか。活性されるいうか。どう考えても “しっとり” で御座います。これはKARIM HADJABのクリエイション上の特性かベース個体の木綿性質かは不明で、身体の油分や湿気による生地昇華と憶い、水で洗うとガサッに戻ります。そして迎える木綿の軽やかさと強さと機動力は丸めてcarry a jacket出来るうえ、芯もパッティングもないアンコンストラクテッドの構成ながらダブルにピークドラペルの能力は島国を出られる際にも存分に魅せて頂ける事と存じますのでトラベルジャケットとしてご年齢問わず推奨をさせて頂いております。そのようなわけでご用意させて頂いているホワイトピンクとオリーブ、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 


KARIM HADJAB “4Saison” base,1950s cotton tailored jacket

 


KARIM HADJAB “Argile” base,1960s cotton tailored jacket

 

 

 

SURR by LAILA 小林

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ファッションは愉しくなくてはいけない / Diary660
23.1.2019

こちらでも綴らせて頂きましたが私は “ 停滞する ” ことに強い危機感と違和感と、もっと言ってしまえば嫌悪感と恐怖心がございますので時間を見つけては街を彷徨い刺激を求めるようにしておりまして、やはりこの生業ですので自身への服飾目線でのそれがどうしても多くなってしまい 2019 年においても変わらず行動しているものの、今年はまだ何にも出逢えておりませんで非常に心が寂しいのですが、彷徨い歩いている時は折に触れて, そして SURR などの空間にて御客様方と過ごさせて頂いている時には本当に常に、心の奥底から強い感情 ( ある種の願いに近しい ) が単純明快な表現にて湧き上がり空間に噴出されます。やはり ファッションは愉しくなくては

そう、愉しくなくてはいけません。ファッションは愉しくなくてはいけないのです。この点は理論性も論理性も不要でそう感じるか否かの感覚のみでして、私は何かを伝えたい時や表現する際に活字を用いることが多いのですが、しかしながら, いやだからこそ感覚を主軸とする御方に対して以前より大いなる羨望心を抱いておりまして、とはいっても人には得手不得手と適材適所がございますので今となっては正々堂々活字を用いておりますが、やはり変わらず感覚主軸の皆様方は憧れの的でしてその感情はこれからも変わらないと想います。いるのですよ、野生動物のような方々が。純真無垢に心から尊敬致しております。

しかしながら ファッションは愉しくなくては という点に関しては私にとっても感覚のみですのでそう言葉にさせて頂いている時はなんとなし心が若返っているように想えるほど, そもそも想うこと自体が愉しい感情でして、旅の道中でも新たな出逢い, 驚き, 唸り, 時に斬新過ぎるがゆえに笑いなど、沢山ではないものの何度かそれらの感情を味わえる旅の度に “ そうそうこれこれ。やはりファッションは愉しくないと ” と心の奥底にいる純真無垢 ( と願います ) な福留 健太がひとりごちるのです。この度御提案させて頂きますのは前述ですと最後にあたります 斬新過ぎるがゆえに笑ってしまった 一着です。

 

 

“ E だ。E と∃ だ ”  この愉しい愉しいポケットに想わず笑ってしまい、またも怪しいアジア人の風体をパリの街で晒してしまいましたが、愉しい感情は致し方ございません。1960 年代にフランスにて構築された本品は元々着飾るためではなく広義においてスポーツやレジャーの分野に属する衣類ではございますが、しかしながら, いやだからこそ注ぎ込まれたそれらは、だからこそ純粋に強い求心力を獲得するのだと想います。そもそもとして合理的ですし無垢な美しさを有する形状なのですが、私は遊び心 / 傾き心として感じてなりませんで堪りません。“ こうするとポケットが E になるな ” “ そうしたらこっちは ∃ だな” “ “ HA HA HA ” ” というやり取りは無かったと想いますがその可能性がゼロではないところ、夢想を許してくれるヴィンテージの懐深さ。余談ですが、∃ は〇〇が存在することを示す “ 存在記号 ” という種類だそう。GOOGLE で調べましたが解説を読んでも頭が微塵も理解受け付けてくれませんで、またもや無学に散りました。来世精進致します。

 

 

 

 

 

 

 

60s French hunting jacket.

目的性が狩猟らしい可動域ですが、構築に際する丁寧な心配りを全方位に感じられる仕立てから美しい立体感による丸みが飛行機乗りの羽織りを連想させる研ぎ澄まされた洗練性を、それこそ 御愉しみ 頂ける一着ではないかと存じます。引き続き手前どもは “ 小売店舗 ” であることの誇りを胸に、収集用としてではなく資産としてではなく着て愉しむためのもの, 愉しいという感覚を抱くための服飾品の御提案に精進致します。

 

 

SURR by LAILA 福留

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