わたくし目に視えるものしか信じない頑な性格の持ち主ですので多神教な此の島国において見守って下さる神様も居なければ風の噂なんかはグレーゾーンに敷いてる情報編に引っかかり、そうはいってもオドロオドロしいカテゴリーは2度ばかり目に致しましたので気が触れていなければ有り難い経験で御座いましたが、例えば占い、というスピリチュアルな未来予知体験などわたくしの稚拙な頭脳で振り絞ろうと理解に到達できるフィールドではない、と確信しておりまして、食わず嫌いと謂いますか、それは経験したことがないから然うなのではありませんか、と問われれば全く以て其の通りでして、実のところ当たる当たるとわたくしの狭い世界で囁かれている其の御方に自身の近未来を視て頂きました。正月明けの事です。
なんでも九紫火星という九星の一つのようで、憶えているのは2019年は2月3日から恐ろしいほど運気が良くなるという事、こちらから動かなくとも女性の方から歩んでくるという願ってもない情報を頂戴、人生本当に生きてて良かったと頑な性格が崩壊した瞬間で御座いましたが、前方だけではなく四方八方に注視しなければなりません、さもなければ秋頃に女性関係で失敗をしますと謂われまして、ゴクリと唾を呑み込みました。今のところ歩んで来られる女性の影すら見当たりませんし、帰り道は後ろを振り返っております。
さらには “探し物が見つかります” という嬉しい御言葉も頂戴し、占いも悪くないではないかと街の中華料理屋で一杯やりました。私事が多い連日で何かと恐縮しておりますが、探し物というのは更新というサイクルではなく常に不動かつ追加される希求物でして、すぐに見つかる物はリストから赤線をシュッと引けるのですが、そう容易く往かぬ物ならばリストの上の方に取り残されるもので、グレーゾーンに引っかかる情報網もせっせと手繰り寄せております。
リスト上の方でインクが薄れている項目その⑴ キャップトゥダービーのブーツで御座いますが、キャップトゥであれば良いという話でもなく街履きとして最適なダービーでなければなりませんし足首を護る7ホール以上のブーツスタイルでなくてはならず、先日此方で綴らせて頂いた雑記と同様、【道具】と【旅】というキーワードないしポテンシャルを無意識的に求めている希求対象に圧倒的確信をもってピントを絞っているキャップトゥダービーのブーツで御座いまして、履き物としては硬い石畳のうえでも容赦なく音を鳴らせる屈強物である必要と長い長い旅であれば時間経過と酷使にも耐えうる頑丈物でなければなりませんし万が一の事態にも修理が効く応力に加え、深いトラウザーを履きさえすればレストランでワインも頂ける懐なんてネガティブ要素がまるで御座いませんで、キャップトゥという特性とダービーという快適性とブーツという防御性を街の中でたっぷり可愛がれるデューティーギアをポジティブに捉えない理由など、見当たりますか。
わたくしが敬愛して已まないJ.M WESTON社の個体御縁とも相成れば本日のDiaryを綴らせて頂かない選択肢も見当たりませんで、探しても探しても探しても見当たらない同社提案のキャップトゥダービーのブーツはグレーゾーンの情報編にかかっている希望すら持てず、手繰り寄せてもミドルグレーなもんで、歴代作品の揺り起しも見られる(気がする)現在の同社提案にひっそり期待を寄せてはおりますが四方八方に注視しながら残酷なほど機会すら得られず、わたくしの中では幻の履き物に昇華されている其の対象物とはいえ、ただひたすら運がないだけかもしれません。履いた者にしか解り得ない足首周りの心地よいホールド力、パッケージのようなショートノーズのコンパクト感、端正に打ち込まれたブローグ、1970年代革質の艶かしさといったらブラッシングとキメの細かい布巾で拭うだけで瑞々しくとろけるような質の感を得られる様子にいつもながら完敗しておりますが、正直申し上げると磨く行いや“光らせる”行為を好まないわたくしはドレスシューズ不適合者の印を押されそうで、そもそも【道具】の意味性が完璧な落し所なもんですからキメの細かい布巾でも拭えない性癖という事で前を向いておりまして、雨だろうが台風だろうが花粉だろうが地に足を付けて進んで往けるフランス同社の履き物に深く深く感謝している常日頃と、いつぞや身を投じようと考えている世界への厳しい旅に持って往く履き物をただ1足と決めているキャップトゥダービーの其のブーツが、フットワークが軽快なショートブーツであれば、J.M WESTON社の御作りで収まるならば、街の中を力強く踏み締めて往けるならばと強い意志を貫いて参りましたがつい先日、8ホールのブーツ獲得に至りまして、キャップトゥではない妥協点を上回る性質を感取した(気がした)もんで一応安心したつもりでおりましたが、本作との出逢いによってリストの上の方で薄くなっている横文字を太書きする事に致します。占いの先生、探し物は見つかりますか。

70s J.M.Weston cap toe short boots
SURR by LAILA 小林
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服飾史には永い歴史がありますので当然の如くいち人間が全てを見つくすこと, 網羅することは叶いませんがゆえに、向き合い続けることで初めての逸品に出逢うことができるという現実と経験に基づく事実が、私にとってヴィンテージの世界 / アンティークの世界に魅了され続けている大きな理由の一つで、今回の一着もその心躍る出逢いでした。ミリタリーにおける細分化の一つにドレス ( =礼服 ) のという区分がございまして、式典参加時における正装的な意味合いから人前に出るという広義的な意味合いまで様々在るなかでの本品は後者に属しまして、そもそもの存在としては認識していたもののミリタリースタイルとしてのそれに一個人的な印象としての現代性を感じておりませんでしたので、これまで幾度か出逢ったとて皆様に御提案することはございませんでしたが、ある日の英国で出逢えたそれは私にとって初見であると共にそれまでの非選択材料を凌駕する要素にて構築されておりましたがゆえ、このように初めて皆様に “ バトル・ドレスジャケット ” という種別を御提案させて頂くことが叶いました。




それまでに私が認識していたものとは明らかに異なる襟の形状とポケットの位置によって “ ミリタリーにおけるドレス ” から脱却した良い意味での一般的な衣類の装いに加えて、王室直属の冠に相応しい素朴で上質な素材の選定と所属部隊における象徴色調である青みがかった特殊な灰色。ヴィンテージ / アンティークの個とモードの個を “ 重ね合わせる ” という行為ならびに捉え方には極めて繊細な課題がございまして、容易に叶うこともあれば安易に行うことで双方のあるべき魅力を打ち消しあうことになりますし、時にそれぞれを切り離して考える / 捉えることでそれぞれを直線的に味わうことができるという愉しさがございますので 適正かつ適宜に, なにより安易に行わず の指針を大切しておりますが、 こと本品におきましては元々の英国式バトル・ドレスジャケットが持つ特性に前述の要素が調和することにより、私にとって明明白白にモードな一着と相成りました。なお、属性としては英国軍王室直属空軍のバトル・ドレスジャケットとなるのですが、私のような若輩者が初見ならまだしも元々所有していたその道 30 年のミリタリーヴィンテージ専門家様が初見というのは大変に珍しいことなので、氏がそれを物語る際に子供のように無邪気な眼をしていたことがとても印象的でした。


50s British royal airforce , battle dress jacket
ミリタリーにおける礼服かつ王室直属の背景とあってそれこそ明明白白に由緒正しき仕立て職人による一着ですので、紳士服的観点における純粋な美しさを第一印象に、純粋な紳士服としてのモードな個として捉えて頂けましたら幸いです。余談ですが 1/14 にミラノで行われたランウェイにて、私が現代のファッションデザイナーとして心から尊敬する二人のうちの一人が発表した中に本品を彷彿とさせる装いがあり嬉しく想うとともに強烈に心打たれました。取り急ぎ 2019AW にも愉しみができ一安心。
SURR by LAILA 福留
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論を持たずして無意識的に自然希求してしまう有機物、ないし遺伝子学から解き明かさねば理解に苦しむほど大好きがとまらない限定的な事柄、皆様もお有りかと存じます。女性のレッグラインかもしれませんし、ピークドラペルのダブルブレストかもしれませんし、南米産カブトムシの角のフォルムかもしれませんが、わたくしの場合、木綿という繊維で御座いまして、コットンというお素材に拘束されて幾らか時が経過しました。天然木綿の上澄みを求めては推し量る術のひとつに、それを上下に振る→音を聴く作業を守っておりまして、名の通り世界最高密度を誇るヴェンタイル社の其々を知った辺りからだと記憶してますが、そもそも朝の歯磨きと同じようにルーティーンとして組み込まれている マイジャケットを上下に振る は、スッと上昇させバシャっと振るう正確無比なダイナミズムに達することによって繊維の隙間に空気中の酸素を取り込み呼吸させ、昨日の気持ちをサッパリ落とす、本日をスッキリ迎える、ような気になるので危ない事に習慣化しております。密度が濃いほど世の中の擬音では表せないコクのある音が鳴りますので、ヴェンタイル社の其々にとって謂えば、いつの日か書かせて頂いた気もしますが日本テレビ様の「音のソノリティ」にフォーカス頂けるのではないかと確信に近い想いを温めておりますもので、しかしながら必ずしもコクのある音は密度に起因しない、という結論を得てから3年、イギリス軍コールドウェザーライン(これは密度)や、陽光と水と大気を連続的に得てきたフレンチワーク、KARIM HADJABの自然個体が見事に証明してくれました。それぞれ音の高低や質は違えど、空気中に振動する奥行きは確かに存在していて、“コクがある音” によっていつの間にやら木綿の善し悪しを判断しているわけです。そもそも語弊がある気もしますが、論を持たずして無意識的に自然希求してしまう事柄は、繊維というより記憶に浸透する木綿の “音” かもしれません。
これは謂うなればわたくし個人の論の裏付けがない術と癖で御座いますので、コクのある音が鳴ならない真実も素晴らしき木綿かもしれませんしコクのある音が鳴らないが上の質を有する木綿達の真実をコクがある音が鳴らないもんだから振るいにかけられる木綿達の気持ちになってみればたまったもんじゃない。わたくしの気が触れているのかもしれません。そういうことで香しき御品との御縁が相成れば眼鏡をずらせながら上下に振っているわけですが、あまりにも音にコクが存在しすぎるとポリエステルとかナイロンとか少し混在しているのではあるまいかと(全く以て良いのですが)表示証明や専門機関による素材検証の終了までしつこく疑惑を持ち続けるわけで、答え合わせがコットンと判ると其の純真さに嬉しくなる気持ちよりさらに先の疑問が生じるので少し苦しく。では一体、この濃厚なコクはなんだ。
その苦しみと同居する “あまりにもコクが鳴る木綿” を勝手ながら上澄みと判断させて頂いているわけでありまして、それは謂わば “音の旨味” で御座いますし、幸せを運ぶ “福音” とも捉えております。
ところで90年代中期〜2000年初頭に視られるHelmut Langの無機質な力強さを想起させる本作イタリハウスは弊社にとっても初の獲得に至りまして、服本来の力をストレートに御感取頂きたい想いから店頭にて琴線触れて頂けた皆様にアナウンスをさせて頂く運びを取らせて頂きます。勝手をご容赦下さい。ミリタリーが基底と成っている実相もやはり上記ハウスの想起点となるのでしょうが、無機質には終わらせない足し算の美学を心得ている凝縮性と真に迫った創り込み、服本来的なエネルギーを螺旋のように纏う単一的かつ沸騰したパワーは本作がUOMOである事実のみでは決して裏打ちにはならない 芯 が御座います。資料には書かれていない設計美と防風性の獲得は立体的かつ精力的に持ち上がるネックの高さに結びつき、フォルムのストイックな変化を愉しむより身体に追随させる2カ所のドローコード、ロマンティシズムへは触れていないプラクティカルな実践的精度の異常な高さ。観覧用ではなく、着て動かねばなりません。ディタッチャブルな近代性は無視、傘を持たない一部のヨーロッパ習慣に必要とされるフード / パーカーというファンクション、Royal navyの名作を掬い取った背面上部の景色と、1940年代米空軍Air crewの最高傑作を全的に従えた渾身のフィールドバックは、コンセプチュアルと判断するには調味料が足りない素材本質的の旨味、時間経過を危惧したところで決して失われないノーブルな香りもブラックコットンのみの特有性と憶いますし、ビックフォルムの提案ではない洗練されたフィッティングバランスへはとても大きく心を動かされまして、アウトドアまでギアを振らせていない制御点、資料性、本域的であり都会的であるプロポーションへ辿り着く恐ろしいほど見事な 福音 は、スキニートラウザーにバサっと羽織るミラノのティーンエイジャーが浮かべばナポリのダンディな髭面が腕を張らせて着ている想起点まで、つまりは都会に活きる強烈な匿名感取とリアリズムを成功させた純真の 街着 が結論で御座います。ジップを上げる度、フードを被る度、着脱の度、転んで起き上がる度、幸せが運ばれることを願いまして。

early00s Italy mason UOMO high-quality cotton short coat
base, late40s US military air force crew N-3 parka
先週の「音のソノリティ」は宮崎県日向市、蛤碁石の手摺りで御座いました。バックナンバー共にオフィシャルサイトで視聴できますので宜しければ。ちなみに本日夜21:00放送です。
それでは皆様、素敵な週末を。
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
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