肩に載せ袖を通すことで逆に芳醇な可動域を体感できる着用感。身体に載せることで実際的な質量がより軽やかに感じられる心地良さ。ポケットに手を入れた時の丁度良い位置感に深さ, それに準ずる収納力の秀逸さ。正中線から外すことで自然と生まれる服そのものの表情, その野性的な迫力。どうしようもないほどに留めやすいボタン位置。それらを全てを留めることで発生する快適性と出で立ち, 実務的な機能性, そして全てを留めないことでのそれ。いずれの状況においても着こなしにおいても縦横無尽に揺れ動き全ての瞬間で美を生み出し続ける生地, その色。
実物を目の前にして体感できるそれらの感想や感情を抱けることは、それがすでに物質として存在しているがゆえに “ 当たり前 ” であると錯覚してしまうこともありますが、このような品が今ここにある, 今手にできていることは決して当たり前などではなくむしろ逆。そして良い品をこのように存在させていることも同じくで、それには何千回何万回の苦悩と精査と検討と、その後訪れる喜びと幸せな体感を経て辿り着けるのであって、その末に一つの “ 看板の価値 ” が定まるのではないでしょうか。
『 Yves saint Laurent rive gauche 』 その看板に対して私が抱く敬意の心は決して現在の服飾史において確固たる地位を築いているからではなく、純度の高い品の美しさや前述のような一着としての無垢な素晴らしさから生まれます。その美しさや素晴らしさ, 純度の高さや無垢さが産まれ育まれる一因となったマジョレル庭園を訪ね、その庭園を産んだ国の空気を吸い人々と触れ合ったことで気付いたのは Yves saint Laurent rive gauche に属する美しさや素晴らしさや純度の高さや無垢さや、それを内包する物質がこの世に存在するのは当たり前ではないこと。その看板がこの世に産まれ育まれた “ 現在 ” があることがいかに凄いか ということでした。










90s Yves saint Laurent rive gauche, trench coat
未来永劫変わらぬ最大級の愛と敬意を込めて明日 3/21 ( 木 ) 12:00 に御披露目です。皆様の御期待を心よりお待ち申しあげます。
SURR by LAILA 福留
03-5468-5966
[email protected]
//

6 歳の頃に自身の愛するテディベアに向けての初めて衣裳を製作した数年後、学校でのスケッチの時間に煌びやかな衣装に身を包む “ 女性 ” の姿を描いた “ 少年 ” は、そのような絵を描いたことを教師に咎められ、それを背中に貼って教室を練り歩くという罰を受けるのですが、その結果周囲の学友たちから向けられたのは憐憫ではなく羨望の眼差しでした。 “ 私も / 僕もそんな絵を描きたい ” そう話す学友たちによって, そもそもその前の教師の発言によってどのような感情が喚起されたのか私には知りきることは叶いませんし、当時の, その国の, その街の教育と少年の心にどのような差異があったか推測することすら叶いませんが、その元少年であり現在では立派な紳士であり天才の一人である彼は最後に “ ファッションは美しい。素晴らしい。愉しい。 ” と声高々と語りました。2018年初冬にパリの劇場で目にした音楽劇での一幕です。
その音楽劇は私のささやかな人生を確実に豊かなものにしてくれた存在であり、既にあった彼への心からの尊敬心をより確かなものにしてくれましたが、私の生業においては彼の世界観におけるより研ぎ澄まされた実物に出逢う機会が少ないと同時に私自身に充分な理解力が備わっていないがため、出逢えた瞬間は喜びよりも物質的な強さに対する驚きが勝ってしまうことが多いのですが、そのような品は向き合う時間が長ければ長いほどに特出した本質的魅力に気付けることが多いです。



“ 蕩ける ” という表現では足りないほどに蕩け、全体的な透け感のみならず各所に糸がかりの透かし紋様が配置された本品は、 1989 年発表時の表現においてはなんと申しますか、野性的と申しますか人類の原始的と申しますか、例えば身体に穴を開けるピアスという存在が装飾目的ではなく魔除けや通過儀礼と捉えていた文化であり時代の世界と申しますか、とにかく大胆な印象を抱きまして、本品におきましても透けと透かし紋様をそのまま素肌に馴染ませ、かつ合わせも原始的な世界観でしたのでやはり奇才であり天才だからこその表現であり世界観であると心からの拍手を送るのですが、いざ自分の世界で向き合いますと蕩ける生地感を何かと重ねた時の表情変化や身幅と着丈の面白みと美しさに溢れる調和や、紋様から醸し出される朴訥とした郷愁などを見出すことができ、発表時の表現はあくまで一例で、その自分が想う新たな世界をもう一例として許容してくれる懐深さに気付き心が暖かくなりました。

1989s Jean Paul Gaultier embroidery & lace joining detail light weight jacket
ゴルチェ少年が6歳の頃に愛するテディベアに向け製作した人生初のファッションピースは後に人々に衝撃を与えたビスチェと瓜二つであり、教師が咎めると同時に学友たちが羨望の眼差しを向けたスケッチの世界観は服飾史に燦然と輝く彼の表現そのものでした。だからこそきっと先々に彼の世界観におけるより研ぎ澄まされた実物に出逢えたとしたら、きっと同じく最初に驚くのだと想いますが、それが私にとって貴重な純度の高い幸せの一つです。
SURR by LAILA 福留
03-5468-5966
[email protected]

//
先日16日より御披露目させて頂いております弊社表現 “ 旋律 -Mutual Resonance and Interrelation- ” というのは音を横に結びつけて形成する線的繫がりと共鳴し合う意味性において、音に合わせて躍動するダンサーを捉える表現描写、空間、服、ヒトが共鳴し、線的な繫がりを持つ事でひとつの作品に創造される様子を総じて、ささやかながら命題にセッティングさせて頂いております。弊店としましてはお洋服またはヴィンテージ並びにアンティークの古き衣類を販売とすることを業とする手前、皆様の御心が少しばかりでも豊かに成る事を信じております心構えは、根も底も核も心にも変わらず、古き衣類を “今” を生きる皆様へお渡しする小さな橋渡しによって細くも強い “線” と成るならば、皆様と其の衣が線的繫がりで共鳴されるならば、勝手と承知しながらも心より,心より光栄に想いますし、その共鳴性が果たして皆様の心に豊さを齎すかは不明と分かりながら、お洋服の力を硬く信じて、社会全般へ失礼のないよう、ご迷惑を御掛けしないよう、引き続きの精進をして参りたい所存であります。
当日から御立ちより頂いた皆様、こゝろより、御礼申し上げます。
2019年SS期を封切りさせて頂いてからわたくしの中で “ 1着の洋服を永く愛する ” さぞ月並みでその辺りに落ちていそうな言の葉を今まで以上に強く想うお洋服屋らしからぬ(多義において)心情にて桜の満開を待っておりますが、お洋服屋が口にする「永く着れますよ」ほど信用ならない文言はない、というのは女性からすると「愛している」を事有る毎に口にする男性諸君に閉口する例と良く似ている気はしなくも在りませんが、そのように疑い深い人生を送って参りましたのでわたくしも安易に口にはしない方向で努力致しておりまして、そもそも何において永く着れますと判断に至るのかは全く以て一概に謂えず、物理的な生命力があるのか、世間一般的な年齢相応理論に適するのか。さぞ月並みでその辺りに落ちていそうな “ 1着の洋服を永く愛する ” 心情に照らし合わせながら寝る前とかシャワー浴びながら考えを巡らせておりまして結局は “ 自身のユニフォームと出逢い、それが、 ” という少し考えれば出現しそうな自明論に行き着き、少し考えれば出現しそうな此の自明論を、大事にしながら、お客様の御手に触れた1着が、貴方様のユニフォームに相成るのだろうと拝見させて頂きましたら、迷わず、口にするよう努めさせて頂いております。「永く着れますよ。」
結局のところ然うだと思うのです。だって然うではありませんか、自身のユニフォームと認めた衣類を永く愛する深情は、完全的な個性に成り、完全的な個性となった衣類を、着続けた誰かが誰かによって紹介される何処かのマガジンペイジを魅力的に憶うのはきっと完全的な個性となった衣類が誰かのユニフォームとして永く愛されていると視えるから、そういった衣類がシルクだろうがレーヨンだろうがソルト&ペッパーだろうが直さない選択肢はおそらく誰か、にとっては御座いませんでしょう。最も強いヘヴィデューティー・ギアとは精神性を外して決して謳えない性質のように憶うのです。さて、どうでしょう。やはり1着の洋服を永く愛する方向性は捨てず護り続けたいものです。
さて、有り難い事に今シーズンは古き衣類に恵まれましたのでルックブック掲載品に加え2点のアンティーク・コートを御披露目させて頂きました中で最も簡素で最も、簡潔的な御姿を魅せる本作の登場は心震わせられる機会で御座いましたし、何と謂いますか、近年では決して見る事が叶わない表衣ゆえのエネルギーを感じずにはいられず、それはもうたっぷりと充電させて頂きました。
古きフランス・ムッシュの街着であり仕事着であり習慣着であった其れは外套というより快適着で御座いましたのでショートスタイルにシングルブレスト、手作業が多いワーカーのためにアームレングスが僅かに短い簡素な御作りが多くの芸術家・作家に愛された痕跡でAtelier coat=アトリエ・コートと称される表衣と存じますが、現在では再現困難と謂われる生地組成やテクスチャーは置きましても極限までコンパクトに設計されたカラーフォルム及び全体的なミニマリズム、手処理の多さに加えソルト&ペッパー全域まで伸びのある組織並びに専ら時代遡及としまして同区分初の時代獲得となる御姿が1910年代一切無駄のない設計痕という事で、花を添えて迎えたいと想います。

New arrival, 1910s French work atelier coat
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
//






