プレーンしかりベーシックしかり、弊店ではいつからかメーカーカルチャーとデザイナーカルチャーの2種を明確に分けて考えるようになりました。前者は時代やその国々の時流に合わせたスタンダードを展開するのに対して後者は独自解釈のデザインを展開、前者はSTYLEにおける創意性や装飾性を排除するのに対して後者はデザイナーそれぞれの創意性や装飾性を積極的に注入する。この違いは私にとって非常に大きな要因であると同時にメーカーが良いや偉い/デザイナーが良いや偉いといった優劣が微塵も介在しない、ただの単純明快な事実になっています。時代と時流に合わせたスタンダードが好きなのであれば心身にフィットするのであればメーカーカルチャーを、好きなデザイナーのデザインSTYLE提案が好きなのであれば心身にフィットするのであればデザイナーカルチャーを、どっちも好きでフィットするのであれば両方を選んで楽しめば良い、ただそれだけのことだと切に心から思い折に触れては御客様方に御提案している次第です。
この度の新作春ニットより3点のメーカープレーンセーター、2点のデザイナープレーンセーターを抜粋しました。たった5点ではなく5点も、弊店にとっては珍しくしっかりとお選び頂けるなという感覚です。
2点のBallantyne Cashmere社とmalo社。いずれも弊店にとっては純粋無垢な“ニット専門“メーカーなのですが、国の違いだけでは説明がつかないスタンダードなクラッシックプレーンの差異、面白過ぎます。
Ballantyne Cashmere社の1点目はピュアスコットランドカシミアで2点目はピュアメリノウール、共に90sのVネックなのですがインナーにシャツを着込むことを前提としながらもあくまで肌着を原点としているクラッシック概念を軸としたリラックスムード溢れる自然体なオーヴァーサイズでして、そのゆったり感こそ“ヴィンテージ“Ballantyne Cashmere社ならではなのですが、時代と時流に合わせたそれは当時スタンダードSTYLEが今となってはこうもデザインSTYLEに感じられるとは。
対するmalo社は同じくオーヴァーサイズながらBallantyneと一味も二味も異なるまん丸シルエットでしてずばりアメリカンSTYLEからダイレクトに影響を受けたボンバーの概念、これがまた抜群にこの時代のイタリアらしくて最高なんです。BallantyneがまさにセーターらしいSTYLEなのに対してこちらは完全にスウェット、それこそUSカルチャーのアチラさんやアチラさんのスウェットムードを想定して頂いて決して遠くありません。それにイタリーカルチャーの最高峰カシミアの素材感と色彩感覚が調和するものですから、最高で最強の独自性と個性ってなもん。この世界観は出逢えません。
上から表記48、46(にも関わらず先の48よりも着丈が6cm長いという)、48ですがフィッティングバランスが全然違いまして、その自由に捉えられる感もまさしくデザイナー設計の世界観。これら純粋なメーカーだからこその時代を経ることで生じる結果論的個性デザインSTYLE感が弊店は面白くて興味深くて堪りません。“え?デザイナーズじゃないの?“と良い意味での矛盾を感じさせてくれるムード、メーカー側はそんなつもりは微塵もなかったはずですから。
対するこちらはデザイナーカルチャー、今回の春ニットには他にも複数のデザイナープロダクトがあるのですが、この2点はクラッシックプレーンと捉えて差し支えなしに感じました。
1点目はBallantyneと同じくミッドナイトブルーカラーでVネックで48サイズ表記ですが全然違います。先にBallantyne着て次にこれ着て同じ48サイズですよとアナウンスされたら混乱しちゃいます、サイズ表記って何?って哲学みたいなこと考えちゃいそう。この差異こそ個性こそある種の癖こそミウッチャ・プラダさんが考えるクラッシックかつプレーンで、御人によっては小さいと捉えられても,時にいやいや小さ過ぎるぞと捉えられても致し方ないコンパクトでミニマムでコンパクトなフィッティングこそ彼女が思う普通かつ格好良い男性像。猛烈になんでもないような一着ですが、ミウッチャ・プラダという稀代のファッションデザイナーの真髄そのものを現していると言っても決して言い過ぎではありません。
2点目のヴァレンティノ・ガラヴァーニによるピュアコットンケーブルニット、この世界観とムードがまた堪りません。彼はファッションデザイナーとして濃い味付けのSTYLE提案ではなくそれこそメーカーカルチャーのように時代と時流に合わせたクラッシック概念にさりげなく知的で美的な流線型を注ぐくらいのSTYLE提案が軸な方だったものですからこちらもエイティーズのスタンダードかつスポーティーなバランス感でして、袖丈もちょっと短め9.5分丈くらいでちょうど良いくらいの絶妙にコンパクトな設計なものですから、サイズ表記5(=XXLくらい)の構築ながら現代感覚ではゆったりめのLくらいに着地しているのがまたユニーク。このヴァレンティノさんらしいなんでもないようで静かかつ確かに美しいシルエットバランスの、例えるなら第三者がふとした瞬間に“アレ?なんかそれシルエット綺麗だね、、、あぁヴァレンティノ・ガラヴァーニ、なるほどね“と腑に落ちるくらいのさりげない美しさが、これまたデザイナーの真髄だと心地良く感じます。
はてさて、貴方のちょうど良いはどこにありますでしょうか。明日は造詣的なデザインの世界観を御提案させてくださいね。
SURR 福留
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二月のどこかだったと思うのですが都内が突然春真っ盛りのように暖かくなった数日があったんですよ、ある夜の仕事終わりマンション出たらお向かいさんたちとばったり会って立ち話している時にやはり突然暖かいですねぇ的な話になった時、お向かいさんの一人がややばかり不満気に“もうニットとか着れない“と言ったので即座に申しあげました、春もニットの季節ですよ と。
はい、例年通り弊店にとっては春もニットの季節で旬とのことで今年もスプリング・セーターを是非とも御提案させてくださいませ。こんな感じなのでいついかなる時でも環境でもセーターは探し求め続けているのですが、先日の旅順はスプリング・セーターとの良縁に本当に本当に恵まれていまして、いやはやだいぶと御機嫌でした。しかも王道なクラッシックプレーンSTYLEから造詣的なデザインSTYLEまでなんとも抜群に満遍ないバランスで、ここ数年で一番の豊作感を味わえた次第です。
スプリングカシミア、爽やかなウール、サッパリコットン、一着のみサマーセーターと呼ぶべきコットンシルクまで、今回も当時の時流に則ったコンサバティヴなスタンダードが時代を経ることで逆にコンセプティヴなデザインに見える興味深くて楽しい矛盾や攻めていながら結局のところクラッシックを土台にしているからこそタイムレスなモードデザインの普遍性など、様々な素材と形と色と癖にてお選び頂けます。今年も一着一着コツコツと探し求め続けるべきライフSTYLEギアの一つと出逢って頂けましたら幸いです。
New arrival,Spring Sweater Selection.
去年は12点でしたが今年は16点、こういうアップデートは個人的に地味に嬉しい。
SURR 福留
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去年くらいにふと思ったんですけど、格好良いとか素敵とか欲しいとかのポジティヴと言うか前向きと言うか正の感情って高確率で時間が経てば経つほど強まるんじゃないかって。なので昨年5月5日の御披露目から想い出や想い入れや羨望の強さは変わらないどころか、 俄然強くなっているので、
これに関しては引き続きうまく言葉が出てきません。
でも今回は前回と異なり個性がまた面白いと言うか違うベクトルで同等の強さでググググッと惹かれるのでその点は言葉が出てきます。服飾史およびモードヒストリーの最重要存在の一つであるサファリジャケットは、それまでのモードにおいて粒立てられることがなかった特に強い男性性かつ土臭く実務的な世界観を存分に取り入れた発明に対して、こちらはワークの世界観を思い切り取り入れたと言うか、まんま母国のワークカバーオールをリファレンスとした個体ということでサファリジャケットではありませんが根幹は同じで出口が異なるながら熱量は同等、ましてやサファリと違ったミニマムな設計が逆に良いという意見があって然るべきな一着です。
New arrival,1969-early70s Yves Saint Laurent Rive Gauche homme work jacket.
特に正々堂々と取り入れたワークの世界観をムッシュが考案したMENSモードの世界観で設計し徹底的なドレステーラー様式で設計する。このモード正攻法的な創造のアプローチは近年においては逆に新鮮なのかもしれませんね。
SURR 福留
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