リュネット・カルティエに続きましては不変で不朽で王道のフレンチフレーム、新作15点中13点です。高まり続ける市場価値や復刻によって既に市民権を得た感があるクラウンパントの存在価値などヴィンテージアイウェアの世界もここ数年でだいぶと変化してきましたが、例え姿かたちが近しい現代のそれらがあったとてヴィンテージカルチャー特有の職人技術力の尊さは変わらないし時間を吸収した素材感の説得力は圧倒的なので私はやっぱり眼鏡はヴィンテージ一択で在り続けてきましたしこれからもそうでしょう。初めて買ったのがフレンチフレームってのもあってこの世界観は馴染むと言うか落ち着くと言うかしっくりくると言うか。好きよ好き好き。
40年代から60年代まででメタルフレームが4本、プラスティックフレームが9本。今回は全て室内でもかけられる薄めなカラーレンズに統一したのですが私が初めて私用した薄めのカラーレンズが濃さ30%のブルーだったので今回のレンズセレクトは13点中4点がブルーになってしまったことを先にお詫び申しあげます。当時は周りに薄いカラーレンズかけている人がいなかったのですこぶる不評だったのですがなんだかんだで好きなんです。もちろん必要に応じてレンズ交換してくださいませね。
New arrival,40-60s French Frame Selection.
視力が良い人はフィッティングさえすればすぐにかけられるしより感覚的に選べるから羨ましいなぁと思いつつ、まぁ視力が悪いからこそ素直に眼鏡がかけられるし羨ましがっても仕方ないかと思いつつ、皆様の素敵な新しい顔を横目でチラリと覗かせて頂けましたら幸いです。ちなみに私は長年のアイウェア生活によってどんな眼鏡でも私は似合うと思い込むようになり、事実その気持ちで向き合うのでほとんどが似合います。もちろんレンズの中央に黒目の中心が位置した方が良いなど幾つかのガイドがありますが、それもあくまでガイドな印象でその他ファッションプロダクトと同じく“まずその物が好きに成れるか”が最初であり最大の必要条件ではないかと思う次第です。
やっぱり寒くなってくれましたね、御自愛くださいませ。
SURR 福留
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弊社事ながら二月が切り替え月なので勝手に節目な気分になっていますが、年明けだねぇと年末年始休み感に後ろ髪を引かれていたら1か月経って、まぁ言ってもやっぱり寒くなるでしょなるでしょと思っていたら先日エントランスの管理人さんに“もう春感じているかい!”と粋でいなせな挨拶をされて、えっ極寒に腹くくってるのって私だけ?もう皆春気分?と思いながら週間天気予報を観ると一桁の都内最高気温がちょこちょこありつつもまたすぐに二桁に戻ったりして、そうなるとすぐに三月で極寒だとしても去年以上にギュッとした日数に成るのかしら なんて独り言ちてみたり。
さりとて最近も寒い夜は寒いですし、風邪系も流行っているとかいないとかなので気を付けなきゃだし、寒くなるにはなるはずなので引き続き覚悟です覚悟。皆様もお気を付けくださいませね。
さて、二月ですよ二月。前述の通り個人的に節目な気分と言うことで新しい顔を御提案させて頂こうと思います。なんだかんだ8か月ぶりになってしまいました、ヴィンテージアイウェアの新作御披露目。いつもは平均して18点ほど店頭に並べていますが、新作15点とお出ししていなかったメンバーも含めて倍の36点をズラリ並べておりますので眼が悪くティーンネイジャー時代からヴィンテージアイウェアの顔で人生を送ってきた私は楽しいです。余談ですが“眼が悪い”ないし“視力が悪い”って表現にかねてから違和感を感じています。悪いってなんか適切じゃなくない?と。視力が弱いもなんかしっくりこないしなぁ、なんか良い表現ないものだろうか。御客様との交流で“眼は悪いですか?”ってお伺いするの、ちょっと嫌なんですよねぇ。
敬愛なるカルティエ社において時計部門と同じく顧客の“作ってよ”の一言がきっかけとなり1983年に発足されたリュネット部門。それまで専門外だったにも関わらず既存の宝飾分野技術力によって一挙に世界最高峰の地位に躍り出て、あまりにも好評ゆえ生産が追い付かなくなってしまったので“良かったら一緒に仕事をしましょう”という手紙と共に部分パーツと製作指示書を世界各国の眼鏡職人に送り協力を仰いだものの、誰一人としてカルティエが求めた技術力に辿り着けなかったため結果的に自社職人のみで製作せざるを得なかったプロダクトであり、現代のカルティエ職人もその技術力を有さなくなってしまったがゆえ今となってはロステクノロジーとなってしまったプロダクト。大々好き。
今回はレンズをぐるりと囲むFULLリムの後継として90年代に製作されたHALFリムシリーズより、18Kイエローゴールドのヴェルメイユ個体と750カラットプラチナのヴェルメイユ個体をそれぞれ1点ずつのみではありますが御提案させて頂きます。これまた余談ですが買付の旅でヨーロッパを深堀りしていた時、フランスの端っこの田舎町の駅から遠い住宅街にポツンと眼鏡屋があってこれらのヴィンテージカルティエを大量に扱っていたのですが、全てPARISなどで出逢えた際と全く同じ価格帯で取引されていて、エリアによって水やビールの値段が大きく異なるのが通例だったこともあってとっても驚きました。こんな端っこの田舎の住宅街でも中心地と同じ存在価値ならサハラ砂漠のど真ん中でも堂々と鎮座してんじゃないの なんて今となってはちょっとよく分かんないことを思いながらその地のちょっと癖がある伝統料理を食べて教会だけ見学して帰ってきたのは良い想い出です。
New arrival,90s Lunettes Cartier gold vermeil and plutinum vermeil.
SURR 福留
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とにかく痺れた。南イタリア僻地のコレクターの下で出逢った一着のレザージャケットは本格的なレーサー仕様なようでそうでない、ヴィンテージらしさ満載で在りながら絶妙にモダン、そしてカテゴライズが難しい,しいてするとしたらオンタイムのモードシーンに当てはまるような爆発力に満ち溢れた存在感と世界観を有していたのです。
“なんだこの赤と白の滅茶苦茶キテるレザージャケットは”。初見の衝撃は以前にロンドンで味わったBest Companyとの出逢いを彷彿とさせながらもそれとは一線を画すファッションの香りとモードの気配でして、アノニマスの濁流に埋もれそうなところをコレクターの“リー・トレヴォーって知らない?”という一言が見事に掬い上げてくれました。バイカーカルチャーがより旺盛を極めた70年代にフランスで産まれ盛り上がったからこそ短命に終わってしまったことで一部において伝説的な存在として知られるLee TREVOR、このエピソードもまた西海岸のアチラさんを連想せずにはいられません。モーターサイクルとリアルクローズ及びファッションが近づきやがてモードとリンクするきっかけを創ったそれらのカルチャーですが、その当時業界内で禁忌的な扱いであった他カルチャーのサンプリングを唯一行っていたのがLee TREVORでして、しかしながらある種反則とも言えるその行いは過去の作品群から着想を得ることで歴史を繋いできたモードの本国フランス出身であるトレヴォーさんにとってはことはごくごく自然だったのだろうと思います。
Stewart,スチュアート。レーサー本人の名前でしょうか、それともレースチーム前でしょうか。バイカーカルチャーに軸足を置きつつオリジナリティを探求したトレヴォーさんは当時においてアメリカンスタイルを踏襲することが多く、アイキャッチが多い過激なデザインが主流だったため、胸元にStewartのパッチワークと刺繍を施した“だけ”というのはその実珍しい=物静かな方というのもまた堪りません、この滅茶苦茶キテるレザージャケットはトレヴォーさんにとってシンプルプロダクトなのです。
ユニフォームもまたワークやミリタリーと同じくデザインの教科書の一つ、特に近年においてこのレーサージャケットの世界観に猛烈なモード性を感じるのは私だけではないはず。癖の強いスタイル性もそれを助長します。
New arrival,80s Lee TREVOR racer-style leather jacket.
もう一度言いますがスタイル性、癖が強いです。強い肩と強調されたゆったり感とスポーティーさは時代性と一言では片付けられないバランスで、バイカーカルチャーとアメリカンカルチャーをモードのDNAが根幹に流れるフレンチの哲学で仕上げるという立派な立派なデザインの成り立ちとなっておりますので私はこの癖が詰まりに詰まったスタイル性、猛烈に惹かれますしガタイが良い私が着ても逆にありだと思えるほどの“デザイン”シルエットです。稀にあるんですよ“こんな人に似合うだろうなぁ”という想像が全く浮かばない癖のベクトルって、で、これぞというパーソナリティとマッチした時に“なんでこれが頭に浮かばなかったんだろう”ってこれ以外の答えが存在しないと思えるレベルでしっくりくるんです。その時に出るドーパミン、一回味わうと虜になりますよ。きっとハンターも同じドーパミン出ているんじゃないかって私ずっと思っているんですよね。
SURR 福留
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