学生生活を経たのちにパントマイムを学んだり政治活動を行ったりと日々を過ごしてきたミウッチャ・プラダが家業に加わったのは29歳頃で、幾つかの改革と成功を収めたのちにメンズクリエイションであるPRADA Uomoを始めるのが46歳頃。数字で見ると“着手する“としたらややばかり成熟したタイミングなのかもしれませんが、だからこそミウッチャ・プラダというファッションデザイナーによるPRADA Uomoの最初期クリエイションには後々のクリエイションの全てが揃っているという表現が過剰ではないほどに完成された世界観と感性が詰まりに詰まっているのではないかと私は常々思っています。
その世界観と感性は彼女の生きてきた足跡そのものであると同時に、元はPRADAの模造バッグ制作会社社長で後の伴侶からの“君はメンズをやった方が良い“といったアドバイスであったり、それこそパントマイムの師でありマイムの父と呼ばれるエティエンヌ・ドゥクルー氏などからの刺激があってこそかと思いますが、長らく彼女のクリエイションを見つめ続けていると(私はPRADA Uomoのオタク)いつからか“メンズはこれくらいで良いのよ、これくらいが良いのよ“と微笑むミウッチャさんの姿が目に浮かぶような、そんな決して深刻過ぎず程良い軽やかさと清涼感があると同時にしっかりと美しくて凛々しい、そんな男性像との向き合い方,ファッションの在り方を楽しむようになりました。
なんて言うんでしょうか、ミウッチャさんのメンズウェアって根本的に軽やかなんですよね。もちろん時に濃い創造性や大胆なデザイン性があるのですが濃くて大胆でありながらもやり過ぎていないというか、意図的に煮詰めずに着用者に任せる感じと言うか。完成された美意識と独創的なオリジナリティがありながら“これくらいで良い、これくらいが良い“でちょうど良く終わらせるバランス感覚が控えめに言って天才的だなと。
PRADA Uomo初のAWショーであり僭越ながらMY BEST3シーズンの一つとさせて頂いている1998AWクリエイションであるこちらの弊店新作は、いわゆる中綿が入ったテーラードジャケットの形状ながらテーラードジャケットにあらずなまさに絶妙かつ抜群にちょうど良い一着でして、このシーズンと言うか1998のイヤーテーマが平面であり一貫して独創的なオーヴァーサイズ設計が軸となった一年間でこのジャケットもまさにその通りなのですが、身体にフィットさせないアンフィットがまさに今のオーヴァーサイズのモード概念に通じることなんかどうでもよくなってしまうほどに抜群な異素材×クラシックのマリアージュであり、なんなら着た時の方が着ていない時よりも軽やかに感じされるほどの圧巻な着用感であり、肉眼でないと正確に捉えられない色彩美を秘めた、有りそうで無いったら無いプロダクトバランス感と個性的でありながら抜群にエレガントな世界観と良い意味で時代性も性別も国も感じさせない不変性と何より圧倒的なモードを秘めた、テーラードジャケットの形でありながらテーラードジャケットとしては着られない、デザインジャケットないしハーフコートと捉えて然るべきな怪作です。
New arrival,1998AW PRADA Uomo oversized padded nylon jacket.
そう、まさしく怪作です。
SURR 福留
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フランス,イタリア,イギリス。それぞれの国の様々な地にいる各分野の専門家のもとで出逢えたファイヴポケットジーンズやチノ,カラージーンズやミリタリートラウザーといったカジュアルに振り切ったパンツの数々。そういえば長らくポツポツとしかパンツ類を御披露目していなかったことにふと気付いたのでこの度一挙に御披露目です。
トラウザーなどのドレス寄りなパンツももちろん素敵ですが、これらカジュアルパンツも最高で個人的にはどちらもちょうど同じ熱量で大好き。各国で様々な文化のカジュアルパンツに出逢い、そしてこの度のように一挙御披露目すると思いますが腰回りの設計からレッグラインの伸ばし方,時に幸運にも出逢える特出した個性など本当に様々が存在することからもデザイナーカルチャーしかりメーカーカルチャーしかりワークしかりミリタリーしかり、カジュアルの概念はどこにおいてもいかに欠かせないかが伺えます。どの個性も楽しい。
New arrival,17 casual pants.
引き続き私は何着ようか考える時にパンツから決めることがほとんどなパンツ好き人間です。
SURR 福留
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メーカーは作らない作れない、と言うか作る必要がない(棲み分け的にも)。それがデザイナーによる造詣的なデザインシルエットとSTYLEの数々でメーカーとデザイナーの差異があるとしたらまずそれらは非常に大きな要因になりますし、やはりデザインの概念による様々な味付けや演出は楽しいし心躍るし時に感動させてくれるし、高確率で高い美意識が注がれているからこその美しさや格好良さへの探究心はいつもファッションの本質的な楽しさを思い出させてくれます。おかげで私は自分自身の身体で測ったビスポークプロダクトにほとんど興味を示さなくなりました、だって私の身体で測ったシルエットやSTYLEより親愛なるミウッチャさんやヴェロニクさんが造詣して演出するシルエットやSTYLEの方が綺麗で格好良いもん。
今回は新作春ニットより3点のデザインセーターと2点のデザインカーディガンを抜粋です。
イタリーモードの重鎮,ヴァレンティノ・ガラヴァーニ。前回も記しましたが彼のなんでもないようで静かかつ確かに美しいデザイン造詣は本当に秀逸かつ絶妙な無二感が漂います。このドッキングコットンセーターの時代性を反映させアメリカンスピリットをさりげなく注入したスポーティーでスタイリッシュなラウンドシルエットなんかもまぁ絶妙。そういえば先日楽しそうなネットニュースが発表されていましたね、また楽しく創造してくれるのでしょうかミケーレさん。
こちらもヴァレンティノ御大による一着、ここまで絶妙に複雑な織りの組み合わせはなかなかどうしてお目にかかれないにも関わらずアクセントカラーの赤と白以外を全てミッドナイトブルーのワントーンであえてさりげなく仕上げる、これがクリエイションだよなぁ。なんでもないようで後のミニマムモードを先行したコンパクトでスマートなフィッティングもまた拍手です。
コットン50%・ヴィスコース30%・シルク20%による特出して爽やかでモッタリとセクシーなテクスチャーにコンサバティヴなようで明るく華やかなカラーリング、リブラインのさりげないカラーコントラスト。全てにおいて抜群なデザインセーター過ぎて出逢った日にホテルで試着して自撮りしてしまいました、夜中の3時半に。これは先取りでサマーセーターと呼べるプロダクトになります、はぁ堪らん。
ニットプロダクトが大看板だったのでヴィンテージにおいても今のところは安定して出逢えるもののセーターではなくカーディガンとなるとハードルの高さが尋常ではなくなってしまうのはやはり実用性の高さゆえワードローヴから無くす必要性がないメソッドでしょう。しかもここまでアヴァンギャルドでエレガントなテキスタイルデザインとの出逢いは相当に久しぶり、特有のコクーンなオーヴァーサイズフィッティングはここでも健在で相も変わらず無二な美的感覚のミッソーニ夫妻なのでした。
フェラガモ一族が培い創始者次男のレオナルドさんが紡いだ男性像とデザインの世界観ってむせかえるほどに品があって鋭利なくらいエレガンスで、数あるファッションデザイナーの中でも特異な“ステージ“にいるなと時に出逢える特出して上質なクリエイションを目の前にする度に思います。このカーディガンは私にとってまさにそれで、無地幾何学模様編みの圧倒的な存在感にエロティックなコルクカラーにナイロンを12%配合することでの特にモッタリとしたテクスチャーとシルエットムードの全てが混ざり合ったデザイン造詣物の感、圧倒的です。
それでは先日のプレーンシリーズと併せまして機会と御縁ございましたら宜しくお願い致します。
SURR 福留
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