クレイジーなMサイズ / Diary1222
8.5.2024

平置き実寸で肩幅65cm、

 

 

身幅も65cm、

 

 

着丈が90cm。ちなみにヨーク縦幅は最長25cmで袖丈が60cmで裄丈が95cm。

 

 

そんでもってサイズ表記がM。この時代のGianni Versaceにとって、いやVERSACE JEANS COUTUREにとって、いや同クリエイションの1992年にとってというのが正しいでしょうね、これでMサイズ表記を堂々と縫い付ける感性は。

いやはやどうして驚くというより笑うと言うか、なんか嬉しかったですねここまでも独創的で独善的で提案力に満ち溢れたファッションデザイナーがかつて存在してファッションを愛する世界中の皆んなを楽しませていただけに留まらず30年以上時を経た我々をもこうやって驚かせて喜ばせてくれることを。ファッションデザイナーによって時代によってファッションの区分によってサイズ感は様々であると思い続けてきましたし店頭でも高い確率で口にしてきたものの、ここまでクレイジーなMサイズにはついぞ出逢ったことがありませんが、当時のキャンペーンAdを見るとやはり腑に落ちます。これぞファッションデザイナーのクリエイションだと。

 

 

それはもう大胆に肩を落とし、特出したオーヴァーサイズだからこそ生まれるスリーヴの造形美と軽く折り返した時のニュアンス感、特にアメリカンワークなムードを感じさせるコーデュロイ素材とステッチの意図的なコントラストにウエスタンムード漂う各所の意匠。これぞ全盛期のジャン兄の創造性、メデューサが特に誇らし気に見えるのも気のせいではないはず。

 

 

 

 

 

 

 

New arrival 1992s VERSACE JEANS COUTURE work & western-style oversized design shirt.

 

ファッションプロダクト単体で捉えたとて特出してオーヴァーサイズのシャツとしては着丈の長さとポケット位置に個性があり過ぎて羽織りとしてはヨークなどのパーツに違和感を覚えずにはいられない、どこからどう見ても不可思議な立ち位置だからこそ様々な捉え方が叶う有意義でユニーク,という言葉ではとてもじゃないけど片付けられない、でもそもそもにおいてシャツ感覚のウェイトでフラップ付きのポケットが前面に四箇所付いているのって新鮮だし便利じゃない?な一着です。

“これぞファッションデザイナーのクリエイション“にまた出逢えますように、宜しくお願いしますねジャン兄。

 

 

SURR 福留

 

 

ヴェネツィア / Diary1221
3.5.2024

ロンドンはサヴィルロウのビスポークスーツを嗜む父とパリのオートクチュールを着こなす母が北イタリアで営む古書店の子として生まれ幼少期から自国はもちろん様々な国の歴史的文化と触れ合い、建築を学ぶも訳あって志し半ばで断念した後に幼い頃知った多国籍文化に惹きつけられるように数年間世界各国を放浪し、各地で出逢った民芸品や工芸品,布地や宝石などと共に帰国し、それらを用いて愛するパートナーや友人に洋服を製作することでファッションデザイナーとしての才能を開花させた異端であり天才,ロメオ・ジリ。

 

 

社会的要因もあって肩の強さやウエスト細さを造詣的に強調し新たなファッションスタイルとなったボディコンシャスを正統に経験したがゆえその概念に違和感を覚えたジリさんが辿り着いた造詣的であろうとも肩やウエストに意図的な強弱を付けずあくまで身体そのもののコントラストを表現する“新たなボディコンシャス“は後はミニマムモードとして後のファッションデザイナーの道標となりましたので、今回ご紹介する新作の1990SSオーヴァーサイズシャツもまた造詣的でありながら過度な強調がない極めてミニマムな構築であると同時に極めて独自性に満ちています。このシーズンはジリさんの地元に程近いヴェネツィアをインスピレーションソースとしており、このシャツを筆頭に登場する様々な色調はヴェネツィアングラスを思わせる蠱惑的な発色であると同時に随所に東洋文化を感じさせる複合的な,そしてジリさんにとっては必然的な世界観を内包していました。

 

 

この生地感なんかまさしく超オリエンタル。ちょうど昨日かねてからお世話になっている生地のスペシャリストYさまがレクチャーしてくれたのですが、この生地感はアジア圏を思わせる語感で呼ばれ主に50から60年代頃に和服用などで人気を博していたそう。それを1990SSのプロダクトとして採用したのは古参への挑戦心か懐古主義ゆえか東洋文化への憧れか放浪旅の甘酸っぱい思い出か。いずれにせよ2024年の目線で捉えると古臭さも流行遅れ感もない猛烈に美しい発色とエレガントな癖を感じられる楽しいテクスチャーですね。

 

 

 

 

 

New arrival 1990SS Romeo Gigli Camicie design collar oversized shirt.

 

本当に全くもって出逢えないロメオ・ジリによるRomeo Gigliのメンズクリエイション、2021年ぶり四着目の御提案です。今回の一着も本当に本当に濃いのですがこの抜群に造詣的でありながらモダンであり、かつ今の“造詣的なオーヴァーサイズ“(それこそジリさんが違和感を覚えた時代のボディコンシャスの概念ですね)と一線を画すオーヴァーサイズ。見事です。

美しい発色は本当に痺れます、なんでしょうね才能が発信してくれる圧倒的なエナジーって。ファッションの力,モードの力って本当に尊い。

 

 

SURR 福留

夢想と単 / Diary1220
1.5.2024

ヴィンテージバーバリーにおける夢想(ベージュ)と単(ヒトエ,ネイビー)、これまた絶妙に新鮮だし嬉しい存在感です。

2017年頃だったでしょうか、イギリスのバーバリー本店の1階メイン区画でヴィンテージバーバリーが販売されているという衝撃的な出来事を目にしたのは。それまで現代のモードクリエイションが過去のモードやヴィンテージカルチャーやアンティークカルチャーから着想を得たり御手本にしていることは周知の事実ながらそれをオフィシャルで発信したり公にするメゾンやデザイナーは基本的に存在していませんでしたが個人的にもっと自社の過去を積極的に取り入れたら良いのにと思っていたものですから本当に本当に驚きましたし心から素晴らしいと思いましたし独り勝手に誇らしい気持ちになっていました、バーバリー本丸がヴィンテージバーバリーをオフィシャルで販売するという行為を。更に言うと価格帯がNEWクリエイションと同じくだったのですよプレーンな本国クリエイションのバルカラーコートが1500ポンドなら陳列されたヴィンテージバルカラーコートも1500ポンドといった具合に、でもよくよく考えればおかしいことではありませんよね製法が変わっていないのですから、ヴィンテージをNEWクリエイションと同等に扱うと言うことは自社の職人技術力への最大限の敬意であり適性な評価であり老舗としての正しい姿勢であると心震えました。

その頃からヴィンテージバーバリーの世界が一層開けたものとなり現代のバーバリーが一層過去を大切にするようになった印象です。余談ですがそのような取り組みは当時新たに加わった“若い血“による発言と行動が大きな要因で既に在籍していた功労者たちとそれはもうぶつかったとかぶつかっていないとか。そして2024SSの発表にて始動したダニエル・リー新体制による1901年発案の騎士ロゴの復活や新たなクリエイションライン“バーバリークラッシック“の発足など、どんどん再評価されリスペクトされる気配、私は心から嬉しく思います。

もちろんヴィンテージカルチャーにいる身としては個人感情とは別に様々感じることがありますが、ヴィンテージ敬意を払った上で様々最解釈するダニエル・クリエイションは本当に好きですし、お陰様でヴィンテージバーバリー熱も最骨頂です。

 

 

 

それにしても本当に思いますし度々ここでも書いている(と思う)のですがヴィンテージバーバリー、バリエイション多彩過ぎ。弊店は本国クリエイションのみの御提案と決めていますが、それでもいついかなる時も“え、こんなデザインあったの!?“や“え、こんな色あったの!?“と常に驚かせてくれるのがヴィンテージバーバリーでして、いつの時代だからこうと言った傾向と対策も当てはまりませんからその振り幅の広さは尋常ならざるもので、全くもって確信材料がない完全無欠の妄想なのですがヴィンテージバーバリーの全貌を理解している人は世界中のどこにもいないと心から思うほどに深淵過ぎるほど深淵な世界なのです、ヴィンテージバーバリー。

ゆえにフと忘れてしまいます、夢想仕立てや単仕立てが抜群に珍しいことを。元々抜群に軽量で快適なマスターピースをもう一段階二段階ギアを上げて軽量化に成功した夢想と単、このようなアップデートと言うかアレンジはマスターピース側(総合的なファッションブランドではなくレインプロダクトメーカー,アウターメーカーであったヴィンテージバーバリーの時代はこれに当てはまるかと )を元としたデザイナー側がほぼマストで行うことなので、じゃあそれをマスターピース側がやっちゃったら、ねぇ。

 

 

 

 

New arrival 70s&1989s Burberry light cotton bal collar coat.

 

でもやっぱりデザイナーカルチャーとは異なる不変により深く腰を据えた不動感と良い意味で際立つコンサバティヴ感がございまして、その温度差はイコール良し悪しではございませんから引き続き馬が合う合わないにてご判断頂ければと思います。1901年発案の騎士ロゴだけに。

でも異常なほどの軽量感はいずれにも健在です。軽量化って“はい外してください無くしてください“ “はい分かりましたー“って世界の話ではないので本当敬意を抱かずにはいられません。軽い服が全てではありませんが、軽い服は良いですから ねぇ。

 

 

SURR 福留

1 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 439
Copyright © SURR All Rights Reserved