⚪︎⚪︎じゃなくてA-2 / Diary1262
2.10.2024

今週の新作は今期初の御提案となるレザーウェア。不変的かつメンズらしさ溢れるプロダクトながら着る人は着る・着ない人は着ないの垣根が今だに存在することを認識していたものの前AWが終わってもなんだかんだ店頭にてオリジンヴィンテージレザー及びデザイナーズヴィンテージレザー及びメーカーズヴィンテージレザーの世界における美しくも残酷な現実に関して会話する機会が多かったもので、弊店は今年も特に熱量MAX特にLOVE MAXの姿勢で御推奨致しますこと、御容赦をば。

 

 

このポケット配置のレザーウェアはことイタリアにおいて石を蹴れば必ず当たるほど と言ったら言い過ぎかもしれませんが、そう言いたくなってしまうほどに出逢えまくる存在でございまして、プロダクトデザインとしての発祥はアメリカながら例によってなんだかんだ全世界のファッションカルチャーで御手本にされ続けてきた影響を与え続けてきた強国宜しく、このプロダクトデザインもまたイタリア文化おいてもにしっかりと根を下ろしたことはきっと御存知の方も多いことと存じます。

アメリカ空軍夏期用飛行士衣類を原点としたボタンの前立て,上からと横からの二重構造となったポケットの意匠,象徴的なリブ、こぇれが本当に本当にまぁ着やすいんだ。着やすい着やすいうるせえよって感じですが、着やすいことは良いことなので仕方がありません。もちろん教科書として影響を与え世界各国の各社が受け継ぎ続けることで結果論的パーマネントコレクションとなるようなマスターピースプロダクトデザイン(幾つかありますねぇ)ですから、スタイルとして格好良く完成されている点は言うまでもありませんが、格好良さ120点であると同時に気やすさと利便性も120点なんだから、もう猛烈です。

 

 

しかしながら石を蹴れば必ず当たるにも関わらず買い付けの旅順において都度必ず連れて帰ってきたかと言うと、否。理由は私の中で明白でして、ずばりレザーの質です。30着に触れても50着に触れても100着に触れてもこれぞの出逢いは無く、となるとデザイナーズやメイカーだと安心して身を委ねられるのですがそれらの出逢いはかなり稀有。先日幸運にもAquascutumとイタリーアノニマスにて一着ずつではありますが出逢うことができました。このプロダクトとして“THE感“が特にビンビンな成熟感満載のブラウンヌバックレザー、セクシー。

 

 

 

 

 

New,80s Italy Anonymouse & 90s Aquascutum A-2 style nubuck leather jacket

 

これは思い切り余談なのですが、いつからか国内ではイタリアのこれらプロダクトをとあるメーカー名を冠して⚪︎⚪︎ジャケットと呼ぶ機会が増えたような気がしますが、例えるならバルカラーコートを全てバーバリーコートと呼ぶようなものだと思うので心がしっくりきませんので、弊店では一貫してプロダクトデザインの原点であるA-2 styleと冠しています。なんか昔からやたらと気にしてしまうし気になってしまうんですよね、冠し方。以上、思い切り余談でした。

 

 

SURR 福留

“さよならGucci“ / Diary1261
27.9.2024

ファッションデザイナーという役職に初めてクリエイティヴディレクターという付加価値を与え時に過激に時に特出して上品なクリエイションを発表することで存在価値を高めるだけではなく当初2億ドルであった年間総売上を32億ドルまで押し上げたものの親会社と意向が合わず2004AWをもってGucciを去ったフォードさん。そのショーでバラの花びらが降り注ぐ中ウイスキーのロックグラスとタバコを片手に彼が現れた時に流れていたBGMはUltra NatéのFree、“自分の人生を生きる,やりたいことをやる,貴方は自由“。濃密なメッセージでした。

 

 

服飾史をヴィンテージカルチャーにしっかりと向き合い圧倒的な感性で自己再解釈したフォードさんはGucciの歴史において様々な名作を生み出し御存知の通り現代のクリエイションにおいても今だに重要な存在価値を有し続けていますが、ことエレガントなメンズドレススタイルはラストクリエイションの軸となっていることからも彼にとって重要な世界観であることが伺えます。Gucciという歴史ある大看板への敬意,服飾史への敬意,そして自身のクリエイティヴィティ 。この三要素が信じられないほど美しく調和したこちらのチェスターフィールドコートもまた“さよならGucci“というメッセージが込められたラストクリエイションならではの一着と言えます。

見事なまでに豪奢な襟,造形的なボタン配置,特徴的なフラップと各所にフォードさんらしい味付けが際立ちますが、それはあくまで紳士服としての基本に則ったもの。テーラードジャケットの原型となった古来のチェスターフィールドバランスであるコンパクトな着丈を取り入れた点には特に歴史へのリスペクトを感じます。フランネルのブラックカラーというこれまた王道であり古典的でもある要素性ながら上質な素材感と各所に光る手仕事の存在感,隠されたGucci刻印の水牛の角ボタンまでもが相まって発する男性的エレガンスを煮詰めたオーラは信じられないほど濃厚。これぞ“トム・フォードが手がけたGucci“と鼻血および拍手が止まりません。

 

 

 

 

 

New,2004AW Gucci by Tom Ford pure wool chesterfield coat

 

最後のクリエイションはフォードさんの中に渦巻く性的要因を言動力とした快楽主義的思想の魅力をデザイナーとしてファッションの形で表現したからこそ高く評価されました。ゆえにこのコートは見た目に分かりやすいデザイン要素やアレンジ要素はなく服飾史に懇切丁寧に向き合った古典的なプロダクトでありながらも分かりやすいデザインやアレンジ以上の存在感を発揮することができるのでしょう。

フォードさんの“さよならGucci“の愛情が込められた一着、ちょうど20年経った今ご覧になってどう感じられますでしょうか?

 

 

SURR 福留

革命と転換 / Diary1260
25.9.2024

経済難に陥っていたミラノにおいて1970年代当時モードという存在は人々において非現実でありファッションデザイナーという職は軟派で時代錯誤的だとされていた時代に独立し、逆境の中で行ったセカンドショーである1976AWにおいて既存のモードカルチャーにはなかった“紳士服の世界に女性的モードの概念を注入“することで歴代幾人かの先人たちのように既成概念を壊し文化をアップデートさせたジョルジオ・アルマーニ。この出来事を弊店のはかつてココ・シャネルが行った“モードカルチャーにおける女性の解放“その男性版であり、幾度か訪れた服飾史の革命であり転換期の一つであると捉えています。

 

 

当然ながら結果的に男性像の可能性と視野を驚異的に広げることとなったアルマーニさんの革命と転換はこのなんでもないようなオーセンティックを極める御散歩を起源に開発された敬意を有するバルカラーコートにもしっかりと注入されています。いやなんでもないようでオーセンティックだからこそその味付けとスパイスは際立つかもしれません、うん。

コットン×ヴィスコースの配合によってオリジンヴィンテージの類であるコットン×ポリエステルのそれとは一線を画す極端に軽やかな表地とピュアウールの着脱式ライニングという贅沢な要素性によって極端に重厚な裏地というそれぞれ真逆なベクトルを積極的に突き進んだ異常なまでの重さのコントラストによって着用時に生じる揺れ動きや着こなしで生じるドレープがより大胆にドラマティックに演出される、これこそまさに女性的モードの概念で軽やかなコートや重いコートは紳士服に数あれど重さのコントラストを前面に押し出すような正統的男性用プロダクトのなく、まさしく革命と転換となりました。言わずもがな彼の代名詞でもある生地量のたっぷりとしたオーヴァーサイズの独自設計は完璧なシンフォニーを生み出します。

 

 

またね、裏地が猛烈に良いんだ。シンプルに考えて上質で複雑な一着のセーターくらいは軽々仕上げられるクオリティは真の贅沢ではありますがある一定の上質な目線を超えるとこの拘りと時間と労力のかけ具合が当たり前になる。この感性が根底というか根幹にあるからこそ本当に好きですモードカルチャー,ラグジュアリーカルチャー,そしてヴィンテージカルチャー。心身が真摯に癒されます。

 

 

 

New,80s Giorgio Armani pure wool attached lining oversized bal collar coat

 

ちなみにライニングは袖無しのベスト形状でキルティングも配置されているのでかなりの防寒性を期待できそうです。ライニングを外したらオーセンティックでドラマティックにモードで軽やかなオーヴァーサイズコート、季節感の振り幅の広さと有用性の豊かさは説明不要ですね?

 

 

SURR 福留

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