イタリーモードの最古参であるヴァレンティノ・ガラヴァーニ。各国(やはり主に本国イタリア)のコレクターの協力もあってそのヴィンテージプロダクトと出逢えば出逢うほどいかに偉大なファッションデザイナーであったかモード史に置いて重要な人物かをスルメのごとく噛み締めててじんわりかつ確かに味わって年々好き度合い尊敬度合いが高まっておりますので、先日のアレッサンドロ・ミケーレのディレクター就任のニュースはやはりヴァレンティノを大いに盛り上げてくれるのではないかと喜ばしく思うと同時に、ヴィンテージカルチャーにしっかりと敬意を評する人物なので1959年から2007年と約半世紀に渡って展開されたヴァレンティノ・ガラヴァーニ大先生の作品群をどのように再解釈するかが楽しみな次第で、まだまだ私の中でのヴァレンティノ愛は高まっていきそうな予感ムンムンです。
構築的なサドルショルダー、綿密に配置されたダーツ、テーラードジャケットの襟元とボンバージャケットのスタイルを融合させた抜群の個性、全体に及ぶ立体美、心が洗われるような美しい裏地(ポケットの中まで同じく)、そして一目で品位が伝わる圧倒的に上質なラムレザーのエナジー。80年代にPelle(レザー専門)のクリエイションラインから発信されたこちらの新作も本当に本当に見事でして、もちろんラベルにValentinoの文字が刻まれていますのでデザイナーズクリエイションのそれということは認識できますがこちらに関してはそれを認識する前段階の佇まいから何かを感じて頂ける方、きっと居られると信じたい一着です。
New arrival,80s Valentino Pelle lamb leather design bomber jacket.
先日のMilletもそうですが、ラベルでもネームでもなくまず強烈に心惹かれるような出逢いはSURRに成った2014年4月29日から現在に至るまで変わらず稀有。いや時間が経つごとに高まっているな、間違いなく。
SURR 福留
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前回のDiaryのように私はこれまでに幾度かミウッチャ・プラダというファッションデザイナーを心から愛しオタクのように楽しんできたことを書いてきたと同時に、何度か2018年が彼女のキャリアハイに感じていることと新たにラフ・シモンズが加わり世界観が変化したことで、何年も続けてきた“毎シーズンPRADAの新作を楽しみにし、あわよくば何かを手に入れる“という私にとって極めて重要なルーティーンが終わりを告げたことを書いてきました。もちろんラフ・シモンズの加入は多くの人々にとって喜ばしい出来事であり事実業績も上がり2022年(2023年だっけ?)なんかは注目度が高まったファッションブランドの第一位として挙げられるなど、より多くの人々が楽しんでいることと思いますので、私が愛する愛するPRADA Uomoから離れたのは単純明快に私の好みと気分。ただただ、ただただそれだけの話です。
しかしながらついに、ミウッチャ・クリエイションではなくミウッチャ&ラフ・クリエイションでバババチコンとくる一着に出逢えました!
23SSマルチポケットベスト、本当にバババチコンとグググッときました(あのビジュアルも大好きです、まんまカー⚪︎ートのあれ)。ファッションを楽しむ方の中にはこういう系はもう何年も前に流行ったじゃんという見解も有られることと思いますが私はその頃から今に至るまで全くもって惹かれなかったんです、これ系のベスト。もちろんお召しになっている姿そのものが素敵な方は沢山おられましたが、自分が着るプロダクトではなかったというか何というか、SURRという容れ物で御提案するビジョンもほとんど浮かびませんでした。
でもこれは大好き、堪らない。PRADAだから?もちろんその看板を背負っているからというのもありますがそれだけではないぞと、直感的に思いそれが何なのかクエスチョンの正体は何なのか心の片隅で考えていた時、パリのコレクターの元で出逢った一つのプロダクトが答えを教えてくれたのです。
私は全くと言って差し支えないほどにアウトドアカルチャーに触れてこなかったのでミレーというブランドのことを知りません、ミレーって口に出したこともないかもしれません。このプロダクトに出逢って初めて知りました、フランスのブランドであることや100年近く続いていることや主に鞄を製作していることなど。この口ヒゲのおじさんが描かれたMountain Flight by Milletが一体全体どういう存在なのか、正直に言って知りませんがとっても格好良いプロダクトだと思ったし素直に滅茶苦茶着たいなと見た瞬間に一目惚れしてしまいました、こういう便利ギア系そのものを着たことがないにも関わらず。そのきっかけが23SS PRADA Uomoであることは間違いありませんが、それと同等のエネルギーでこのマルチポケットベストに惹かれたことによって心の片隅のクエスチョンが解けました。
New arrival,80s Millet multi pocket vest.
“お前が惹かれた理由、それは品の良さだろう?“ 口ヒゲのおじさん、教えてくれてありがとう。あの頃のマルチポケットベストは私にとってリアルではありませんでしたが、23SS PRADA Uomoとこのヴィンテージ・ミレーのマルチポケットベストはリアルもリアル、大リアル。タフギア感満載でクラシックでヴィンテージ感を備えていますが、意匠の絶妙な洗練性とバランスとちょっと薄ピンクを感じさせてくれるカラームードによって隠そうとしても滲み出てしまう、モード本国のDNA。
どうなっても結局私は品が良いのが好きみたい。
SURR 福留
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学生生活を経たのちにパントマイムを学んだり政治活動を行ったりと日々を過ごしてきたミウッチャ・プラダが家業に加わったのは29歳頃で、幾つかの改革と成功を収めたのちにメンズクリエイションであるPRADA Uomoを始めるのが46歳頃。数字で見ると“着手する“としたらややばかり成熟したタイミングなのかもしれませんが、だからこそミウッチャ・プラダというファッションデザイナーによるPRADA Uomoの最初期クリエイションには後々のクリエイションの全てが揃っているという表現が過剰ではないほどに完成された世界観と感性が詰まりに詰まっているのではないかと私は常々思っています。
その世界観と感性は彼女の生きてきた足跡そのものであると同時に、元はPRADAの模造バッグ制作会社社長で後の伴侶からの“君はメンズをやった方が良い“といったアドバイスであったり、それこそパントマイムの師でありマイムの父と呼ばれるエティエンヌ・ドゥクルー氏などからの刺激があってこそかと思いますが、長らく彼女のクリエイションを見つめ続けていると(私はPRADA Uomoのオタク)いつからか“メンズはこれくらいで良いのよ、これくらいが良いのよ“と微笑むミウッチャさんの姿が目に浮かぶような、そんな決して深刻過ぎず程良い軽やかさと清涼感があると同時にしっかりと美しくて凛々しい、そんな男性像との向き合い方,ファッションの在り方を楽しむようになりました。
なんて言うんでしょうか、ミウッチャさんのメンズウェアって根本的に軽やかなんですよね。もちろん時に濃い創造性や大胆なデザイン性があるのですが濃くて大胆でありながらもやり過ぎていないというか、意図的に煮詰めずに着用者に任せる感じと言うか。完成された美意識と独創的なオリジナリティがありながら“これくらいで良い、これくらいが良い“でちょうど良く終わらせるバランス感覚が控えめに言って天才的だなと。
PRADA Uomo初のAWショーであり僭越ながらMY BEST3シーズンの一つとさせて頂いている1998AWクリエイションであるこちらの弊店新作は、いわゆる中綿が入ったテーラードジャケットの形状ながらテーラードジャケットにあらずなまさに絶妙かつ抜群にちょうど良い一着でして、このシーズンと言うか1998のイヤーテーマが平面であり一貫して独創的なオーヴァーサイズ設計が軸となった一年間でこのジャケットもまさにその通りなのですが、身体にフィットさせないアンフィットがまさに今のオーヴァーサイズのモード概念に通じることなんかどうでもよくなってしまうほどに抜群な異素材×クラシックのマリアージュであり、なんなら着た時の方が着ていない時よりも軽やかに感じされるほどの圧巻な着用感であり、肉眼でないと正確に捉えられない色彩美を秘めた、有りそうで無いったら無いプロダクトバランス感と個性的でありながら抜群にエレガントな世界観と良い意味で時代性も性別も国も感じさせない不変性と何より圧倒的なモードを秘めた、テーラードジャケットの形でありながらテーラードジャケットとしては着られない、デザインジャケットないしハーフコートと捉えて然るべきな怪作です。
New arrival,1998AW PRADA Uomo oversized padded nylon jacket.
そう、まさしく怪作です。
SURR 福留
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