“絶対来年高くなってるんで”
先日とある初めましての御客様が御来店され交流にて最近ヴィンテージカルチャーに興味を抱かれていたことを明かしてくださり、ちょうど某メーカー某名作の大変に立派な非定番個体をお召しだったのでさぞや立派なお買い物だったことでしょうねぇと呟いた時、購入に踏み切った理由として述べられたのが上記の御言葉でした。
絶対来年高くなる 以降頭の片隅にてずっと在る言葉で本っっっ当にその通りだと思いました。未曾有(という言葉をあえて使います)なほどに盛り上がりを見せているヴィンテージカルチャー(そもそもにおいて私は興味を抱く人々が増えることは猛烈に嬉しいです、あしからず)、それには様々な理由が複雑に絡み合っているのでしょうがその根幹に在るのは“刺激”ではないかと私は思っています。ヴィンテージカルチャー特有の刺激,クラッシックだからこその刺激,モード史ならではの刺激,歴史に名を残さない何処かの誰かによる刺激。この生業において私は常にそれを感じ続けられているので少しも飽きることなく今も向き合い続けています。ファッションに何を求めるのか,それこそ実用性なのかロマンなのかなどなどありますが刺激がマストな私にとってヴィンテージに対する注目度が高まり続けているという現象=それ以外のカルチャーが物足りなくなっている、です。様々な角度で観察できると思いますが、私はそう思います。
絶対来年高くなる 本っっっ当にその通りだと思うと共に胸の真ん中に複雑な感情が渦巻く言葉です。私は世界各国のコレクターからヴィンテージプロダクトをセレクトし皆様に御披露目すると同時に私も買い物するのが未だに大好きなので来年高くなっていたら困っちゃいますもん。ある程度であれば社会情勢等との兼ね合いで納得できますが、分水嶺を越えると話が変わります。あんまり越えないと良いなぁ、怖いなぁ。
フランスのとある老練なコレクターが“レザーは終わった”と言い切ったように様々な状況が刻一刻と変化し続けるヴィンテージカルチャー、私も引き続き手に入れるべき存在はなんとか手遅れになる前に着地したい所存です。でもやっぱり人生において社会に属するにおいてショッピングは良きスパイスですから、基本的に必要な存在ないし欲しいと思える存在が在ることそのものを私は幸せに感じます。求める気持ちでヤキモキするところも含めてね。
ということで今年も年の瀬にファインジュエリーを御提案、六つのブレスレットと二つのネックレスです。
New arrival,40-80s Fine jewelry bracelet and necklace.
上からブラックダイヤモンド,トリニティーカラーゴールドとサファイア,喜平チェーン,アメジスト,ダイヤモンド×2,そしてシトリン。今年もまた個人的に猛烈に濃厚な布陣になってくれました。じっくりと御縁結ばせて頂けましたら幸いです。
そういえば2023年内の営業は12/28(木)までで2024年は1/5(金)となります、どうぞ宜しくお願い致します。
SURR 福留
△
弊店においてほとんど御提案する機会がないAquascutum、その理由は前々回のダッフルコートとなんとなく周波数が近いかもしれません。この度6着目となった一着は前回のレザーレーサージャケットと同じくの痺れさせてくれるコレクターの下で出逢ったのですが、結果的には私の大好物である王道でありながら非王道でもあるイレギュラープロダクトなのでした。
“明るいレザーカラーでアヴィエイタースタイル、うんうん王道的で見てて気持ち良いねぇ”が第一印象だったのですが、向き合ってみるとなんとまぁ質の良い革でなんとまぁモード的かつ美的なデザインボンバーシルエットで、なんとまぁ特出した存在感の一着だこと、あらまぁアクアスキュータムじゃないの。こちらさんで直球に惹かれる出逢いは久しぶりで嬉しかったです。
このアメリカ空軍の名作飛行士ジャケットA-1を原型とした形状、馴染み深く御愛用されている方も多いことと存じますが本当に本当に完成され尽くした究極的スタイルの一つですね。格好良くて便利で合わせ易くて着易い腰丈のバランスは国も年齢も問わず愛されている印象であり時代を問わず様々なブランドやメーカーが常に製作している印象です。で、こちらの80s Aquascutumの一着、やたらめったら丸が強調されたボリューミーなデザインシルエットでありながらウエストリブがタイトにアクセスしてくれることでコンパクトな着こなしとなり、オーヴァーフィットながらオーヴァーサイズではない絶妙にスポーティーなバランスをくったくたに,それはもうくったくたに
柔らかく滑らかなヌバックレザーとパテッドライニングが美しいシルエットを描く、クラッシックかつ王道でありながら猛烈にモードを感じさせてくれる一着なのです。このバランスは直感的に親愛なるHermes hommeの名作リバーシブルボンバーを連想しました、リンクがかなり多いうえで異なるスタイル性かつヌバックレザーのスペシャル仕様と思って頂いて差し支えございません。
なぜここまでモード要素性が濃い絶妙なプロダクトなのか、これは後々分かることなのですがこれは英国老舗のAquascutumがイタリアの工房にて設計及び製作したItaly Aquascutumという区分でした。ちなみに明るいレザーカラーとコンディションの良さも相まって着用時の存在感は物凄くブライトで物凄くエレガントですので御覚悟を。
New arrival,80s Italy Aquascutum aviator-style leather bomber jacket.
Italy Aquascutum、個人的にはデザインボンバーの独自設計も圧倒的なクオリティもイギリスっぽくない特出した柔らかさも即座に合点がいきました。この王道でありながら非王道、いつも良い意味で驚かせてくれるし楽しませてくれるしONE OF A KIND感MAXなので本当に本当に大好物。シックでクラッシックですがとくかく強烈な艶っぽさとさりげないハイファッション感が滲んでパテッドライニングで暖かくて軽くてポケットもいっぱいあってボタンの留め方次第で様々な温度調整が叶って腰丈で動きやすくて過ごしやすくて。
大好物です。
SURR 福留
△
数あるウィンターコートの中で弊店がほとんど御提案したことがないプロダクト、それがダッフルコートです。
好みなクラッシックカルチャーかつスタンダードナンバーにも関わらず老舗のそれにいかんせん食指が動かず、となると選択肢がグッと狭まってしまうのは老舗がいかに王道を邁進しているか、言い換えれば間違いない存在なのかを示しているのでしょうが、私自身も経験したことがないし動かない食指は動かせない。記憶が確かならばSURRになってからの約10年間でHermes hommeの個体、そしてAquascutumの個体しかセレクションしていないと思います。そもそもにおいて私はフ―ディーの経験値が圧倒的に乏しくてですね、今の感覚でファッションを楽しむようになってからはおそらくゼロ、これまでパーカーを着たこともなくフードが付いたアウターにも縁がありませんで暖かそうだし落ち着きそうだし色々と便利そうなのでものぐさな私には合いそうなんですけどね、なんとなく自分が着る服として捉えることができず今に至ります。ちなみに“某デザイナーは自身のブランドに在籍時、意図的に作らなかったプロダクトが三種あるんだけど知っている?”と知人がクイズを出してきたことがありまして、その答えはパーカーとショーツとバックパックで本人が好みじゃないからという理由だったのですが、当時その三種とも親しみが無かった私は(今はショーツは大々好き)、ちょっとニヤッとしたのをよく覚えています。
要するに単純に良いと思えるダッフルコートにも出逢ってこなかった、ただ単純にそれだけなんです。事実イタリア中部よりちょっと上の少し外れた田舎町にいるコレクターのもとでこれに出逢った時は即決、滅茶苦茶素敵じゃないこのダッフルコート!とここ10年間分の食指が動きました。
なんじゃこのプロダクトなんじゃこのオーラ、と思ったらミッソーニ夫妻のクリエイションでした、納得納得。ブランドラベルがなんとも素敵でして、ロゴに加えて“DESIGN & MANUFACTURE OF SUPERIOR FASHION GARMENT”、“CAREFULLY SELECTED FABRIC”、“TRADE MARK LONG WEARING SMARTNESS COMFORTABLE”、そして“ORIGINAL CLOTHING FOR COMFORT AND PLEASURE”と、涙が出るくらい素敵な文言が書かれまくっている初見デザインなんです。ブランドラベルにそれほどの情報量は新鮮かもしれませんが、御陰様で情熱を否が応にも吹き飛ばされそうなほどビンビンに感じることができます。
御存知の通りニットに芸術の概念を初めて注入しモードの世界で新たな可能性を開拓したパイオニーア,オッタヴィオ・ミッソーニさんとロジータ・ミッソーニさん。芸術作品を鑑賞してデザインを生み出していた彼らが紡ぐ糸はプレーンセーターの段階で120点ですしカーディガンやニットジャケットの段階で何倍もの存在感を発揮してくれますから、このようなアウタープロダクトの質量と面積になった時のエナジーとシナジーは計測不能。このコレクターのもとに向かう道中“なんでまたこんなところに…”正直思いましたが(この生業では定期的に思います、本当に色々な地にいますので)、こういうプロダクトを保管,保存(本当の意味でのアーカイヴですね)しているからこそこのような地にいるのだろうなぁ、このような地にいるからこそこれほどまでの逸品を保管,保存(これがアーカイヴという意味ですね)できているんだろうなぁと切に思いました。まだまだ世界には面白いものが沢山あってまだ見ぬ刺激が沢山あります。そういえば以前にNHKで“世界はほしいモノにあふれてる”って番組ありましたね、復活してほしいなぁ。
New arrival,80s Missoni multicolor duffle coat.
クラッシックなオーヴァーサイズフィッティングかつラグランスリーヴなのでクラッシック感が強まるかと思いきや肩の落ち感がとっても綺麗で私の身体でもスマートな見え方になってくれました、これは相当に綺麗かつ秀逸なパターンメイクで様々な御身体に無理なく適合すると思われます。次に食指が動くダッフルコートはいつだろうなぁ。
SURR 福留
△