美意識の水準 / Diary200
4.11.2015

“ ミリタリーを綿密にサンプリングした現在のデザイナーズ・ピースだ ” というのが、これを初めて目にした時の率直な感想でした。が、事実は小説より奇なりではありませんが、これがミリタリーのオリジナル・ピースという衝撃もまた、ファッションの積み重なりを知ってゆくうえで楽しくて仕方のない経験である事は事実です。いったい何度驚かせてくれたら気が済むのでしょう、英国王室直属部隊のロイヤルは。

 

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陸軍,ロイヤルアーミーにおいて1950年代に作られたこちらは、茂みなどで活動する際に着用されていた “ ブッシュジャケット ” と呼ばれる一着。4ポケット・フロントやフラップの出で立ちなどは、その名称でまとめられるアイテムらしいスタイルですが、基盤となるパターンメイクが尋常ならざる仕上がり。身体を包む 360° の構築は、言わずもがなテーラーの認識と技術が惜しげもなく注がれておりまして、身体にフィットする心地良さ以上にシルエットの豪奢で甘美な様がとてつも御座いません。それらパターンメイクのみならず、少し深めのバックスリットや側面に寄せられたサイドポケットなど、全ての要素は “ 快適な着用感 ” を追い求めた結果であり、目的意識の純度が高ければ高いほど到達する世界観は “ ミニマム ” と形容できるのではないでしょうか。

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スタイルが王道、色味が不変、素材とディティールが純粋、構築が上質。この要素が揃えば古さを感じさせるわけがありません。わざわざ並び立てるのも無粋なほどに五感で認識して頂けるのではと信じさせてくれる逸品です。

ことヴィンテージの市場価値的な話をさせて頂きますと、大変珍しい一着ではあります。ブッシュジャケット自体は定番なのですが、クオリティランクに準ずる佇まいと高貴な色調から、それらと似て非なり過ぎる一着として御認識頂けるのではないかと思います。しかしながら最も強くお伝えしたく思うのは市場価値ではなく、一つの服として単純に純粋に美しいと思わせてくれる美意識の水準です。

 

 

 

 

 

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50s British Royal Army , bush jacket

アウターとしてのみならず、真冬には in アウターとしても大変お薦め。様々なスタイルに多彩な彩りと説得力をプラスしてくれる現代的ユーティリティー・ピースは本当に貴重だと常々思います。
私には少し小さめでして、本当に良かったです。

 

 

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ポストクラシカル / Diary198
28.10.2015

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先日まで催しておりました Karim Hadjab の Launch Exhibitionにご来場くださいました皆様に心より御礼申し上げます。
この度が日本初のお披露目につきどのように感じて頂けるのか未知数でしたが、少なからず自分が感じたような驚きと楽しさを感じて頂けたように思い、嬉しかったです。今後も SURR の一要素として適宜ご紹介させて頂きますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

買付け、カリームとお披露目会が続きましたが、これにて一先ず平常営業に戻らせて頂き、こちらの Diary もいつも通りアイテムにじっくり焦点を当ててご紹介させて頂こうと思います。何から再開しようか迷いましたが、そこはやはり感覚器官を頼りに。

 

 

 

スタイルとしてのマリアージュだけでなく、気温の変化に対応しやすいカーディガンは個人的にとても好きなアイテム。様々なスタイルがある中で、本品は良い意味でクラシカルな王道的なバランスですが、正統の中に潜むメゾンならではのマニアックたるや。

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これを目にした瞬間は良い意味ですんなりと視界に入り認識でしたのですが、その後すぐに違和感に気づきました。
ウールとスエード。このコンビネーションは有り得ません。爽やかな色調と上品なコントラストが醸し出す出で立ちから瞬間的にノーブルな印象を抱きましたが、飄々とした本品はとてつもない傾奇者であり、策士です。

 

 

 

 

テキスタイルデザインも連続紋章による王道の幾何学模様ですが、色調と織りもバランスがとてもポストクラシカルな装い。とても好きです。

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圧巻なくせがあるのですが、それを包み込んで再構築するほどのエレガンスがこのカーディガンの底力。

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ealry 80s Christian Dior , wool & suede cardigan.

素晴らしい。

 

 

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錦な心 / Diary199
30.10.2015

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よく考える。 というほど深刻ではなく、頭空っぽに酩酊したり歌ったりで夜が更けることも決して少なくないのですが、それでもこの仕事をしていて定期的に思うのは 『 洋服はおまけ 』 という事です。 “ 所詮 ” であったり “ たかが ” であったりとある種ぶしつけな表現も出来ますが、そもそも私自身が悪意なく素直にそう思っているのは事実。
でありながら洋服と向き合っているのは単純に好きあってこそなのですが、 “ 所詮 ” であり “ たかが ” でありながらも社会や人とコミットするうえで必要なツールではありますし ( 人によって重要度は違えど ) 、 “ 所詮 ” であり “ たかが ” だからこそ、楽しんで然るべきではないかと常に思います。私にとってこのダブルスタンダードが大いに重要で、なんのかんの言っても楽しいと思っている要素なのです。

あくまで私の観点ですが、高級レストランにクラッシュデニム&スニーカーでも格好良い人はとにかく格好良く、上下コレクションの最新作を着ていようと何も感じない人には感じません。結局は人生をどう歩んできたかの人間性が全てなのだと、表参道や鎌倉に居て思っていましたし Paris や London でも素直に思いました。年齢,性別,国籍問わず、格好良い人は格別に格好良い。 “ ボロを着てても心は錦 ” という言葉に則るのであれば “ 心が錦であるならボロを着てても ” 。そして私は “ 錦な心を目指しつつ、自分が良いと思ったものを着たい ” と思います。まぁ結局はただ単にファッションが好きで、魅力的なものや ( 良い意味で ) 自分の価値基準を越えたものに出逢うのが好きなだけなのですが。

この度は、そんな人間が Paris で出会った一品をご紹介させて頂きます。蓋を開けてみるとこの旅で唯一の鞄でした。

 

 

 

 

 

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1人の熟練工と2人の修行工。スリーマンセルによって1つのアイテムを仕上げるデルボーにおいて1970年代に作られた一品。様々な用途に適応するよう傷や汚れが目立ちにくいキャビアスキン加工の柔軟かつ上質なカウハイドを用い、書類の収納を主としたスタイル,仕様ともに良い意味で実社会的な装いのドキュメントケース。真に “ 収納 ” を目的としているからこその寡黙なミニマリズムと、細部にまで配慮は散りばめられた良質な手仕事のコントラストに一目で心奪われた出逢いの瞬間を、今でも覚えています。

 

持っていなくては生活出来ないという事はなく、ましてや嗜好品に近しい “ 紳士の小物 ” 。 しかしながらそれらがある事で日々が豊かになるのは事実で、共に過ごす日常で錦な心が育まれるのではないかと思い Paris から向かい入れた次第です。

 

 

 

 

 

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70s Delvaux , clutch bag

 

ちなみにですが “ 紳士の小物 ” というキーワード、とても大切に想っておりまして、今後も登場致しますのでお見知りおきのほど宜しくお願い申し上げます。

 

 

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