ポストクラシカル / Diary198
28.10.2015

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先日まで催しておりました Karim Hadjab の Launch Exhibitionにご来場くださいました皆様に心より御礼申し上げます。
この度が日本初のお披露目につきどのように感じて頂けるのか未知数でしたが、少なからず自分が感じたような驚きと楽しさを感じて頂けたように思い、嬉しかったです。今後も SURR の一要素として適宜ご紹介させて頂きますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

買付け、カリームとお披露目会が続きましたが、これにて一先ず平常営業に戻らせて頂き、こちらの Diary もいつも通りアイテムにじっくり焦点を当ててご紹介させて頂こうと思います。何から再開しようか迷いましたが、そこはやはり感覚器官を頼りに。

 

 

 

スタイルとしてのマリアージュだけでなく、気温の変化に対応しやすいカーディガンは個人的にとても好きなアイテム。様々なスタイルがある中で、本品は良い意味でクラシカルな王道的なバランスですが、正統の中に潜むメゾンならではのマニアックたるや。

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これを目にした瞬間は良い意味ですんなりと視界に入り認識でしたのですが、その後すぐに違和感に気づきました。
ウールとスエード。このコンビネーションは有り得ません。爽やかな色調と上品なコントラストが醸し出す出で立ちから瞬間的にノーブルな印象を抱きましたが、飄々とした本品はとてつもない傾奇者であり、策士です。

 

 

 

 

テキスタイルデザインも連続紋章による王道の幾何学模様ですが、色調と織りもバランスがとてもポストクラシカルな装い。とても好きです。

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圧巻なくせがあるのですが、それを包み込んで再構築するほどのエレガンスがこのカーディガンの底力。

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ealry 80s Christian Dior , wool & suede cardigan.

素晴らしい。

 

 

SURR by LAILA 福留

03-5468-5966
[email protected]

 

 

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錦な心 / Diary199
30.10.2015

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よく考える。 というほど深刻ではなく、頭空っぽに酩酊したり歌ったりで夜が更けることも決して少なくないのですが、それでもこの仕事をしていて定期的に思うのは 『 洋服はおまけ 』 という事です。 “ 所詮 ” であったり “ たかが ” であったりとある種ぶしつけな表現も出来ますが、そもそも私自身が悪意なく素直にそう思っているのは事実。
でありながら洋服と向き合っているのは単純に好きあってこそなのですが、 “ 所詮 ” であり “ たかが ” でありながらも社会や人とコミットするうえで必要なツールではありますし ( 人によって重要度は違えど ) 、 “ 所詮 ” であり “ たかが ” だからこそ、楽しんで然るべきではないかと常に思います。私にとってこのダブルスタンダードが大いに重要で、なんのかんの言っても楽しいと思っている要素なのです。

あくまで私の観点ですが、高級レストランにクラッシュデニム&スニーカーでも格好良い人はとにかく格好良く、上下コレクションの最新作を着ていようと何も感じない人には感じません。結局は人生をどう歩んできたかの人間性が全てなのだと、表参道や鎌倉に居て思っていましたし Paris や London でも素直に思いました。年齢,性別,国籍問わず、格好良い人は格別に格好良い。 “ ボロを着てても心は錦 ” という言葉に則るのであれば “ 心が錦であるならボロを着てても ” 。そして私は “ 錦な心を目指しつつ、自分が良いと思ったものを着たい ” と思います。まぁ結局はただ単にファッションが好きで、魅力的なものや ( 良い意味で ) 自分の価値基準を越えたものに出逢うのが好きなだけなのですが。

この度は、そんな人間が Paris で出会った一品をご紹介させて頂きます。蓋を開けてみるとこの旅で唯一の鞄でした。

 

 

 

 

 

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1人の熟練工と2人の修行工。スリーマンセルによって1つのアイテムを仕上げるデルボーにおいて1970年代に作られた一品。様々な用途に適応するよう傷や汚れが目立ちにくいキャビアスキン加工の柔軟かつ上質なカウハイドを用い、書類の収納を主としたスタイル,仕様ともに良い意味で実社会的な装いのドキュメントケース。真に “ 収納 ” を目的としているからこその寡黙なミニマリズムと、細部にまで配慮は散りばめられた良質な手仕事のコントラストに一目で心奪われた出逢いの瞬間を、今でも覚えています。

 

持っていなくては生活出来ないという事はなく、ましてや嗜好品に近しい “ 紳士の小物 ” 。 しかしながらそれらがある事で日々が豊かになるのは事実で、共に過ごす日常で錦な心が育まれるのではないかと思い Paris から向かい入れた次第です。

 

 

 

 

 

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70s Delvaux , clutch bag

 

ちなみにですが “ 紳士の小物 ” というキーワード、とても大切に想っておりまして、今後も登場致しますのでお見知りおきのほど宜しくお願い申し上げます。

 

 

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Hand finish & Bacter / Diary197
23.10.2015

例えば。
“ 一つのジャケットを仕立て、それを一人の男性に30年間愛用してもらう。それを回収し、作品として完成。”
哲学に則って育まれたカリームの美意識において、これがクリエイションの一つの理想です。しかしながら現実問題として難しいがために様々思案と試行錯誤を繰り返した末に生まれたのが前回のエントリーでご紹介した 4Saison なのですが、その後も構想と行動を繰り返した末に彼の表現は更なる進化を遂げました。

 

 

 

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その一つは “ Hand finish ”

クリエイションの過程で生じる自然の力が洋服に与えた変調に対して、様々な手法を駆使し調整的デザインを施すのですが、それらは全てアトリエチーム在籍の一人の女性によって行われています。

 

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時に膨大な箇所に及ぶそれらを一針〃,一編み〃。途方に暮れるほどの時間を費やした結果、完全手仕事のクリエイション・ピースに到達します。決して無作為に行うのではなく繊細な配慮と心意気をコントラストとするそれらは、100年前の人々が行っていたファッションを目的としない “ 明日着るための施し ” に近しくありつつも、あくまでモダンクオリティ。
これを初めて目にした時は心が震える共に、カリームが持つ感性の儚さと、その女性の技術力と探求心と、何より “ 手仕事 ” に敬意を払う職人賛歌の姿勢に、心から敬意を覚えました。

 

 

 

 

 

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そしてその一つは “ Bacter ”
名の通りバクテリア=微生物の力を借りて行われる、より独創性に富んだクリエイションです。
微生物はもちろん自然界に累々と存在するため、 4Saison でも恩恵を受けていますが、それをあえて人為的に生成し培養液に衣類を投入。微生物は “ 天然素材を食べる ” という一つの特性を持っているため、コットンやウールなどのマテリアルが部分的に変調し、4Saisonとは異なるアプローチが完成します。

 

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時に上記の Hand finish collection と組み合わせて調整的デザインに到達させるのですが、更に特徴的なのがテキスタイルデザインにも似た色調変化です。
 

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不規則かつ不可解な濃淡と紋様は一切操作する事が出来ず、微生物の完全主導による変調。まるで抽象画を纏っているかのような偶発的テキスタイルデザインにはカリーム自身、驚きと興奮を覚えたそう。

 

 

 

4Saison 、Hand finish 、そして Bacter 。これら全てに共通するのは “ 人の手による作為を起点としつつ、終着に向かうまでが完全なる自然の作用 ” という事。
各変調はそれぞれが異なるベクトルに向かっているため、衣服として捉えた時に ( 誤解を恐れず表現するならば ) 違和感を覚えますが、作為で始まりつつ自然が大きく作用しているため、その違和感は逆に心地良く楽しいのではと思います。

 

時にモード、時にエッジィ、何よりアヴァンギャルドでエレガント。
私の主観ではありますが、ここ数年で感じた事のない興奮と刺激を覚えるリアルクローズです。

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Karim Hadjab のアイテムは全て一種の未完成。
袖を通し、実質的に生活を共にする事で生じる風合いや味わい。ボタンを縫い直したり、時に解れや破れを御自身の手で調整するといった全ての行いで常に変調し続け、進化し続けるのです。

カリームの口癖。『 私はきっかけを創っただけだ 』

 

 

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