
あの期間はそもそも外に出る機会が少なく、なんと言っても一時休店によって御客様に前に立つという機会が無くなったこともあって、これまでは人知れずと三週間から一か月に一回のペースで通っていた美容院に行かない時間を過ごしたからか、もしくは別の理由かもしれませんが、運営が再開して久方ぶりにマンションの前で会ったご近所の Nさん ( 呑み屋に行くと知らない人と必ず友達に成れる柔和でちょっとお茶目な紳士 ) に “ マイルドになったねぇ ” とふとした一言をかけて頂いた時、私は長らく人柄の形容詞やニュアンスにおいてセクシーであったりアヴァンギャルドであったりといった表現は思い浮かべていたものの、一度としてマイルドという表現を思い浮かべてこなかったこと、そして今の自分にとってマイルドというニュアンスが驚くほどに心地良く感じたことに気付きました。

そうかマイルドか。マイルドねぇ。想えばこの生業に就いてから周囲がほとんど ( 色々と圧倒的な ) 年長者で埋められ、常にその人たちと一日でも肩を並べると言うか認めてもらうと言うか、それを念頭に置いて過ごし続けてきましたが、装いにおけるモードであったり人としての在り方におけるセクシーであったりアヴァンギャルドであったりを意識する過程で様々な衣類に手を出しては右往左往し、純金髪にしたりモヒカンにしたりしながらリッチやハイエンドを目指してきました。その道中でマイルドな人としての在り方を想い浮かべたことは紛れもなく無かったです。
OK。私は齢をとったのだ。もちろん社会においてはまだまだ引き続き若輩者で未熟者ですが、この生業に就いた頃と比べると圧倒的に齢をとったのだ。まずその点をしっかりと咀嚼して呑み込もう。そしてどうやら今の私は想った以上にリッチを装ったり元からハイエンドですよというふりをしたり、そう想われるためになにかを盛ったりすること行為やマインドを自分から遠ざけたく成っていること。イコール自然体で居ることに, 自然体な人の在り方に, 気持ちとして頑張っておらず実際頑張っているように視られないマイルドな自分の在り方にこれ以上ないほどの心地良さを感じていることを自覚しよう。 これが割合最近の気付きでした。生きていると様々在って、やはり愉しいですね。

また、マイルドな在り方によって自身の装いにおける一つ一つが生まれ変ってくれたことも何より愉しいです。不変や素朴の強み、上質さや職人技術の有用性、看板の価値観 etc.etc. また更に熱が高まりそうな予感。依然変わらずいや俄然愉しいヴィンテージ / アンティークの世界において、取り急ぎ今までで最もワークとミリタリーに惹かれています。自分が着る要素として。
SURR by LAILA 福留
03-5468-5966
[email protected]
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当時、学生時代から親しい友人にある日、「台湾でアイドルになる」と冗談の様な話を唐突にされてから早6年程が経ち、今や立派なバラエティータレントに。最初の話と違くない?と思いながらも活躍している彼から久方ぶりに夜中電話があり、テレビ電話を通じて、学年は違えど髭も無くTheアイドルな髪形な彼に、こちらは髭の濃い今や長髪の一歩手前のおじさんになりつつある自分との生活のギャップを感じたのは少しのショックでしたが受け入れつつの長電話をしまして。お盆の時期も相まってどこかに行きたいと言う話題から数年前に訪れた台湾にまた行きたいね。なんて今のご時世では難しく、計 4 週間の隔離を考えると最早夢の様な会話から、年 2 回旧正月と丁度お盆の時期に帰国していた彼にとっては今回の影響は辛過ぎる。”どこかに行きたい”事柄より”母国に帰れない”事実は旅行したいという欲求より計り知れない程のもどかしさだろうと話を聞きながら他人事ですら危機感を覚えました。そこから派生した共通の趣味であるアニメの話から最近配給された日本が沈没する作品の話題になり、更に彼の気持ちを沈めた結果となったのはさて置き、ハッピーな話題でもと考えましたが、まぁ思い浮かばないので装いぐらいはパッと明るくいきましょう。

New arrivals,80s Best Company Tee shirt.
素晴らしく夏(派手)をご体感頂けるデザイン。何故イタリアを本拠地とするベストカンパニーがハワイ島のモチーフ?と考えると80年代のイタリアにおけるファッションから生活に影響を与えたムーヴメントである”パニナロ”が頭を過りました。そのムーヴメントが起きる前、発端は1970年代に起きたイタリアからアメリカの留学ブームが一つの要因だと考えられ、アメリカで学生時代を過ごしたイタリア人達による感じ方や憧れが形になったパニナロと言うカルチャー。そのアメリカ州の一つハワイも彼らに取って憧れの存在として挙げられるのではと解釈しています。その彼らから絶大な人気を誇ったベストカンパニーのデザイナー、オルメス氏の過去のインタヴューではパニナロ達の為には洋服を作っていない、自分の作りたいものを提案していると綴られていましたが、私の解釈では真意はどうなのかが気になるところ。それはさておき、ブルージーンズにティンバーランドなパニナロスタイルより、トラウザーズにタックインして足元は革靴かサンダルのスタイルでTシャツとのミスマッチ感を御愉しみ頂きたい品々です。

Tシャツにガゼットを施すデザインは同社のスウェットシャツを看板として作り続けたオルメス氏ならではのハーフスリーブスウェットシャツと言うニッチな解釈。

飾りでは無いジグザグなステッチワークは熟視しなければ分らない程の繊細なタッチ。変質的な拘りを感じられますが、柄は敢えてなのか合わさない自由さ。

An Exciting summer waiting for you!
刺激的な夏があなたを待っています!
逆に今着たいメッセージの破壊力。
来年こそは何処かへ行きたいものです。
SURR by LAILA 鈴木
03-5468-5966
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私事ですが、 8 月を以て SURR に属し 1 周年を迎え、本日切り良く歳を重ねました。まだまだ至らぬ点も御座いますが、改めて宜しくお願い申し上げると共にお客様方に変わらぬご自愛の程を宜しくお願い致します。私にとってもですが、皆様にとっても激動の濃い半年になったと想います。普通とは?と今を順応するにも以前の様なリズムでは生活する訳にも行かず、何かのせいにする訳にも行かず。この状況下でも私は只々洋服が好きでそれに携わり、同じ感覚、もしくはそれ以上の尺度で一つのプロダクトに集中する、夢中になって下さり日常的に寄り添うお客様方に多大なる御礼と多少の嫉妬(私も欲しいものを沢山見送りました)を想い、感じています。お客様にとってのヴィンテージ、お客様にとってのアーカイヴと言う視点でご満足頂けるよう精進すると共に、この状況下では不要ではと感じる方へも着て・感じて頂き、装うことで今を愉しく我々のセレクトをご体感頂けたら幸いで御座います。
さて、今回はご案内の叶うトラウザーズの中でも一際シンプルながらに濃い一本と出会いましたのでご紹介させて頂きます。

ブルージーンズ=の存在とも言える Levi’s 社がアイロン要らずをモットーに 1963 年、永続的な折り目を入れたトラウザーズを発表。STA-PREST、通称スタプレで御馴染みのこの革新的なアイデアは女性衣料メーカーのプリーツ加工を参考にしていまして、コーティングされた衣料を独自のシステムで ”焼く” ことで生地と樹脂を定着させることによって生まれています。この今までにないアイデアを呈した責任者は「この事業が成功しない場合はパンを焼いて生活する」となんとまあアメリカ人らしいジョークは当時ウケたのかは定かではありませんが。コットン × サテンの試作から最終的には合成繊維と天然繊維の混合が耐久面に優れていることから現スタプレと変わらぬマテリアルの配分となりますが、本品に関しましては「これ、スタプレなのか?」と非常にライトオンスなマテリアルが魅力でして。開発段階で生まれたかのような、シャンブレーの様なシャリ感にチャコールグレーの色調は素材の軽さと色味の重厚感が良いバランスを生み出しています。Levi’s Spotswear とは STA-PREST の表記の無い前進に当たり、”Never Needs Ironing” と言うスローガンを掲げていまして、当時、一部の担当者は実際に履いていたトラウザーズを脱いで、携帯式の洗濯機に入れ、「ほら皴にならずに、折り目も残ってるでしょ~」と小売り店に営業をかけていたそうです。そんなアメリカらしい大胆な売り文句で販売さられていた訳ですが、本品はフランスの商圏へ向けての一本ですので、どこかモダンに品良く感じてしまうのはそのせいなのではと、履いてみると解る腰回りのゆとりから裾に向けての美しいカットラインを是非、ご体感頂ければと想います。

60s Levi’s Sports wear summer trousers for France.
カジュアルにもドレスにもと汎用性の高さも勿論素敵な一本ですが、ミニマムな設計からタブも付きませんので、外見では Levi’s としての情報が無いもの、私には堪りません。
SURR by LAILA 鈴木
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