”仕立て”に関しまして各国々の癖でしたり特色として捉えられる、縫製や生地の選択に至るまで明確な方向性を持ったものつくりを感じられます。モードの基盤となるフランスの仕立て、硬派で音楽が香る様なイギリスの仕立て。受け継がれる専門家が仕立てることによりその土地の空気感や感性が漂うプロダクトにおきまして、ではイタリアは?と考えますと繊細な縫製と滑らかなマテリアルの選択が上げられます。年々減少傾向にあるサルトリアルの文化は単純計算であと十数年で無くなってしまうとどこかの記事で目にしましたが、1980 年代に自ら仕立て屋を育成する学校を立ち上げた一人のサルトリアリストの存在をご存知でしょうか。
Franco Sagripanti 氏はローマの地で仕立て屋として、弱冠 22歳 にして 1964 年に自身のテーラーショップを創業。氏の情熱的で繊細な職人技術に惚れ込んだのは当時ローマからミラノへ拠点を移したハイメゾンである Valentino Garavani 氏。メンズ部門のテーラーリングを担当し、国までもが認めるサルトリアリストとしてのキャリアを積み、仕立て屋の育成を始めとする学校を設立。ヨーロッパオートクチュール協会の副会長を務めるなどの多岐に渡る活躍を見せた職人による ” 仕立て屋の作るスポーツジャケット ” は欠点が上げられない程に ” 美しい ” と言う表現方法しか私には浮かびませんでした。
ウールとビスコースによる綾織の透き通る様にライトウエイトでとろみのあるマテリアルの選択から精密な縫製、襟裏や袖裏に施されたスウェード調の化繊使いに色調の渋いオープンチェックを採用したコットンの裏地。大きなフロントポケットはサイドからもアクセス可能な二重構造(本当に便利なポケットデザインです)。現代も尚、メゾンから作り出されているこの様なショートレングスのスポーツスタイルジャケットで勝手ながらここまでの条件を満たしているジャケットにはもう出会え無いと感じています。
New arrival , 80s Franco Sagripanti Sartorial sport-style jacket.
SURR by LAILA 鈴木
03-5468-5966
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カラーレス・ジャケットっていつ産まれたんだろう。とふと想ってみましたが、あの職業用だとカラーレスではなくスタンドカラーだよなぁ であったり、あの銀行家のコートは 150 年くらい前だもんな、あれは格好良かったよなぁ であったり、そもそもミリタリーの仕立服でカラーレスってないんじゃないかな であったりと、ネット検索が気乗りしなかったので脳内検索で済ませたばかりに不明瞭な情報とも言えないほどの雑記しかヒットしませんでしたので、取り急ぎカラーレスは趣味嗜好に伴うアレンジ ということに勝手ながら着地致しましたが、見た目的な意味合いにせよ機能的な意味合いにせよもしかしたら思想的な意味合いにせよ、 “ 無くしてよ、襟 ” の一言で申し分なく仕上がるほど簡単な話ではないことはネット検索をせずとも解ります。この美は、なかなかどうして問題児であると。
首の周りに寄り添う、あの生地と芯地と重量が在って成立する前立て。それを無くすことでの身体への寄り添わせに必要なパターンメイクの精査とテーラーリングの技術力なんてお話しよりもまず ( 決してそのお話しが無意味というわけではありません。とても重要であり有意義ではありますが、まず最初に論点に成るべきは という意味合いです ) “ 見た目が格好良い ” じゃぁないでしょうか、カラーレスとやらは。カラーレスに限らず装いにおける神羅万象はまずその点の格好良い・可愛い・似合うなどから始まるべきであると本当に心からかねてより想う次第です。
そこに在るはずの襟がばっさりと消失したその顔立ちは、一見すると世にはびこる ( はびこる? ) はい切り落しました的リメイク・カラーレスと万が一つでも近しかったとて、それらとは土台から異なることを言葉を有さず即座に認識させてくれる様々な全ての要素。もったりとした素朴ながら小気味良く上質なリネンの揺れ動きと、それに呼応するドラマティックな形状変化。その根幹を成すサマーテーラードの様式各所に秘められたドラスティックなサルトリア・テクニック。その静かながら熱くプライドから成る、カーディガンのような着用感。そして実はテーラードジャケットではなくサックコートなため自然なルーズシルエットであるという、エルキュール・ポアロもびっくりの巧妙なトリック。
なんてお話しよりもまず単純に格好良い、リネン・サマーサックコート。
1992s Hermes homme collar-less linen sack-coat made by Sartoria
SURR by LAILA 福留
03-5468-5966
[email protected]
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数年前に風を感じて以降、期を追うごとに存在感を増してゆき今では弊店にとって欠かせない要素の一つと成ってくれたとある文化のとある技術力は、じっくりと向き合えば向き合うほど新しさの根幹に在る “ 過去 ” に気付いて心が躍ると共に、今日に至るまで長きにわたって行われてきた諸々における “ 画一性 ” を純度 120% の私感にて想わずにはいられず、ついつい私の悪い癖 ( 性 / サガ ) が出てしまいそうになりますが結局のところ躍り狂う心が勝ちますので、弊店なりの表現や編集を急がずに焦らずに確実に、引き続き社会の迷惑に成らぬようひっそりと行っていきたいなと想う所存です。
夏のサルトリアル。
新しさの根幹に在る “ 過去 ” に関しましては、古来より継承された技術力であったり, その継承方法であったり, 技術力そのものがなぜそうなったかの所以でして、それらは最終的にきっと政治そのものと繋がるであろうことをふとした瞬間に感じますものの、弊店はそれを論点に装いを捉えることを禁としておりますのでここに綴ることはこれまでもこれからもございませんで、結局のところは単純明快な美しさと気持ち良さに帰路致します。
そして画一性 に関しましては、そもそもにおいて巧く綴れる気がしないほどに私的感情の純度が高過ぎますし, 綴れたとしても高純度過ぎて可視化するなんて恐怖でしかありません。いわゆる “ 現地 ” が全てではことを大前提としてどっしりと据えたうえで、私のささやかな経験則におきましては現地の御世話になる皆様方が漏れなく文化と技術に親しみを抱いたうえで自由気ままに勝手気ままに愉しまれているように素直に感じられ、十人十色の在り方に単純明快に惹かれました。それにどのようなエッセンスが加わって諸々の画一性に成ったかは解るような解らないような心持ちですが、現地で味わったパスタの鮮度や滋味は再現できませんものの、装いに関しましては弊店, 我々, 皆様方独自の自由気ままと勝手気ままにて間違いなく表現して頂けることと存じますので、引き続きこれまでに構築されてきました生活様式であったり優先順位であったり環境を踏まえたうえでの趣味嗜好に存分に則って頂き、特に自由気ままに勝手気ままに捉えて頂けましたら幸いです。
New arrival.夏のサルトリアル。
この技術力は今の季節におきましても、見事なまでに美しく、見事なまでに有益でございます。
SURR by LAILA 福留
03-5468-5966
[email protected]
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