90年代の傑作達 / Diary459
27.10.2017

 
東西ドイツが統一、イギリスではマーガレット・サッチャーによる政権が終わり、マイルス・デイヴィス、フレディ・マーキュリー、カート・コバーンは神に看取られ、WTOが発足、タイガーウッズはマスターズを制し、インターネット、携帯電話が爆発的に普及、わたくしが誕生した年に「羊たちの沈黙」でアンソニー・ホプキンスが偉大な功績を残した。
 
 
そんな1990年代に仕立てられた3着の衣類は、「傑作」という二文字で括るには安易やもしれないと臆する程に、素直にも素晴らしい内容で御座いました。延々と綴るわけにはまいりませんので、数枚のピクチャーとともにご賢察の上、あとは是非とも店頭にて。兎にも角にも触れて頂きたいという無垢な思いが強い3着ですので(内1着は特に)、お時間叶いましたら、どうぞ宜しくお願い致します。
 
1990年代のムードをストレートに感じて頂きたいのではなく、ファッションという見地では過去の歴史があるからこそ成立した良き時代であると同時に、またはそれを背景として忍ばせながら、引き続き、男性のための上質な衣類としてご潜考の程を頂けましたら、何よりに想います。
 
 
 
 
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90s Yves Saint Laurent wool & cashmere short coat
 
この1着に関しましては、申し上げることは何も御座いません。
 
 
 
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能力の許す限りに向き合ったのですが、どの視点から考察しようとも悠々と遥か上を往く。
そんな1着は、驚くべき事に90年代に製造されたロイヤルピース。アナーキーなこの1点をお認めになる方もまた、大変失礼ながらアナーキーな飛上り者であると。
 
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90s British royal army tanker crew piece utility vest jacket
 
まさに傑作。
 
 
 
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カシミア、カシミア、カシミアと、先日より口数も多くしつこいばかりにエントリーが御座いましたひとつの天然素材。
例えばその天然素材を用いた衣類、「コート」という区分になりますと、くっきりと鮮明に明瞭に “ その差 ” に気付いてしまうステージであると思いますゆえに、少なからず男性のための上質な衣類として皆様に、さらに絶対的な自信をもってご紹介するとなると、 “ その差 ” をある意味では感じて頂きたくない想いのみで精査してまいりましたが、幾分そこに厳格な基準値を設けてしますとそう易々と見つかるものでもなく、昨年漸くエントリーが叶いましたその1着はやはり其の1着で御座いました。
 
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手のひらを垂直に5cmほど滑らせるのみ。瞬時に算出するコンピューターのように、明示的かつ鮮明に、どれほどの内容かをご理解頂けるやもしれません。ましてや、少しばかり摘んでしまいでもしたら。
 
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どの角度から眺めようとも強力な吸引力によって惹き付けられ、あまりにも強烈で、あまりにも勁烈なその1着は、これからしばらくは脳内イメージを支配されそうです。内側に端正に縫い付けられたファブリックネームを垣間みますと、点と点が結びつくより前に、そりゃそうだろうと、納得のゲージが溜まると同時に妙な安心感に襲われ、にもかかわらず脳内イメージは支配されたまま。
 
 
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シンボリズムとは真逆に位置する素晴らしき衣類。
90年代の傑作としまして、ご賢察の程を宜しくお願い申し上げます。
 
 
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90s Balenciaga pure cashmere oversized coat fabric from “ Loro Piana ”

 

 

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インディビジュアルな世界 / Diary458
20.10.2017

 
 
 
ドキュメンタリー映画きっての雄、フラハティの「Man of Aran」
 
島唯一の蒸溜所から丁寧に送り出されるスコッチ「Arran Malt」
 
 
 
アラン諸島と直接的に繋がる情報をイメージしたとて、上記2つが限界。
とはいうものの、フラハティを知らなければ18ヶ月に渡って記録した過酷な生活状況を知る術もないでしょうし、シングルモルトが好きでなければBarすら入らず、マスターから蒸留所の話も聞けないでしょう。
 
 
 
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アイルランドの西岸、ゴールウェイ湾に浮かぶアラン諸島をダイレクトに思い浮かべるには「Alan sweater」がなにより。石灰質の岩盤のみで形成された島々で暮らすアイルランド人の主要産業は、農業、そして漁業でありますが、常に強風が吹き荒れる海上において男達の無事を祈り、将又、海の神に看取られた際に身元を特定するべく、女性達の手によって立体的かつ縄上に編み込まれた白いセーター。これが「Alan sweater」またの名を「Fisherman sweater」
 
 
6世紀も昔、あるいは1900年初頭と、その起源は諸説ございますが、少なからず、2017年10月20日今現在においてしましても、その島ではそのセーターが編み続けられていることも御含み置き頂きたい。
 
 
 
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どのようにして生まれ、どのようにして広まり、どのようにしてファッションとして根付いたのか。
 
その究明にあたり努力を続行してきた世界各国のファッションジャーナリストや研究者には頭が上がりませんが、今でも尚、“ 諸説ある ” と定言化が困難である区分でしょう。それほど、ある限定された土地の限定された歴史を読み解くというのはとてもセンシティブで、スタティックな内容であると感じます。シンボリックな存在としてのみ我々の脳裏に焼き付いているのは、やはりそういうことだと思うのです。
 
 
スコットランド人が愛用していたガンジーセーターを元手に編みの独創化が進んだ、や、
母親が息子のために教会の堅信礼にあたり、普段のネイヴィやオートミールではなく、晴れ晴れしい真っ白なセーターを編んだ、や、
とあるユダヤ人は、この見事なまでの装飾的な編みは聖人の賜物であると、独自の解釈論を講じて英国に広めた、など。
 
「善か悪か」の物差で突き詰めると、どの説も素直に「善」ですので、それはそれで良いのでしょう。
何を信じて、何を論ずるかは。
 
 
少なからず、ファッションの視点でいち早く着眼したのが、クリスチャン・ディオール氏であったことは、これも一説として記しておきます。
 
 
 
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その永くにわたり伝わってきた歴史の中で、文頭の説や、“ その編みは家紋を意味する ” などもございますが、たとえば母から娘、祖母から孫へ、仮に家紋としましても、その家紋の設計図は1枚たりとも存在せず、家庭料理や伝統料理のそれと同ベクトルで存在する内容であること。
 
縄の種類、織り幅や立体の高さ、厚み、長さ、それらイメージの具現化は、完璧に独立したインディビジュアルな世界。
 
家紋にせよ、男達の無事を祈った具現像にせよ、着るものを有効的に独立させるベクトルのみは共通で、それは恰もファッションの視点でさえも適う、純粋かつ洗練された個々の美しさに繫がりましょう。
その島の歴史と伝統を孕んだステージであると同時に、それらを渾然一体に身に纏うことで、その物語の一員になれる感覚は、仮にファッションにおいてでも、将又、ファッションとして括らずとも、有効的に認められる内容であるとわたくしは思います。
 
 
 
少なからず、そのストーリーとベクトルを全享受したか否かは、細かな説明やロジックやギミックなど決して必要ではなく、1着の編みと色、そして身体に沿わせたときに感じる匿名性のみで、事が足りましょう。
 
たとえそれが、1999年に発表された1着だとしましても。
 
 
 
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1999a/w Maison Martin Margiela tutle-neck Alan sweater
 
 
 
 
“ どのようにしてファッションとして根付いたのか ” この3番目のステージにおいて、立役者のひとりとなったことは、彼のクリエイションや他の作品に目を通す度に、やはりそうなのだろうと思います。
 
 
 
そしてここまでを頭の片隅におきながら、端正に編み込まれたアランセーターを身の纏い、どうぞオーセンティックバーへ。おそらくアランモルトを注文せずとも、とある島の蒸留所の話を聞かせてもらえるでしょう。
 
 
少なからず、この1着は。
 
 

 

 

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5/100ないし1/100 / Diary457
18.10.2017

仮に 100 人と相対したとして、そのうちの 50 人が褒めてくれる服と 5 人が褒めてくれる服があるとした時に、私は後者を好ましく思う傾向があります。厳密には傾向と言うよりも紆余曲折を経て後者のタイプを選ぶようになったのですが、元来周りから着ている服などを褒めて頂く機会がほぼ皆無なのでそもそもの論点として当てはまっておらず、極々稀に褒めて頂く機会があったとて “ えぇ、はぁ ” と誰も幸せにしない薄ら笑いを張り付けた全くもって気が利かない、褒めてくださった方に申し訳が立たない愚鈍な受け答えしかできない有り様ですが、しかしながら惚れ込んだ一着 ( 一点 ) があまり褒められない、もっと言ってしまえば “ それはちょっと ” とまで言われたとしたら私は逆に嬉しくも思います。なぜなら他者に認められない自分の感覚は ( 場合によっては最も ) 大切にしたいと思うからです。

そもそもの人間的素養が主たる理由ですが、私は “ 総柄もの ” を着ると評判が悪い傾向にありまして、しかしながら総柄は大好きな一つですので、やれ職務質問だ、やれセカンドバッグが合いそうだ、やれ電車で隣に座りたくないだ言われたとて決して心は折れず、5/100 ないし 1/100 のお褒めをささやかな心の励みにしながら、今後もカジュアルであったニットをラグジュアリーな存在に昇華させたミッソーニは私にとって重要なワードローブの一つであり続けることと、わざわざ我々が御紹介するまでもなく現代においても認められた存在ではありますが、ヴィンテージにおける良い意味でミッソーニ “ らしくない ” 存在価値と、上質で情熱的なアート・ニッティングワークの求心力を引き続き SURR にて御提案し続けますことを、僭越ながらここに誓います。

 

 

 

 

 

SDIM1907

80s Missoni

ちなみにこちらは素肌での御着用を心から御推奨。

 

 

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