ダブルブレストという区分をより自由な尺度で認めようとする際、最も、その振り幅が広いとストレートに感じる内容は、謂わずもがな、コートでしょう。袖を通した後、どう着こなすもんかと視えないコントローラーを握ったときは、○○×△と秘伝のコマンドを入力をせずとも、その衣類にいとも簡単に認められる具体性として、良質な生地の分量、つまりは、オーバーフィッティング(このバランスが常に絶妙だと感じるのは80年代ISSEY MIYAKEの作品)
定石なるロジックは不必要。だからこそ叶う変則的かつ超然とした出立ち、決して飛翔ではない包み込まれるムードは、“ ファッショナブル ” という視点でも、“ クラシカルに基づく男性特有ルール ” という視点でも成立する、
いわゆる “ ずるいやつ ” 。
あらゆる時代の服を着て、あらゆる国の仕立てを視て、あらゆるデザイナーの思惑を吸収してきた強者も、その重ねられた絶対感覚の末、仮に、飽和点に達した場合に往く付く先として「目の前のその服はあたたかいのか否か」。
あらゆる時代も、国の仕立ても、デザイナーの思惑も気にしない自称ゲーマーでさえも、一歩外界へ出るとき選ぶ1着はおそらく「あたたかい1着」でしょうから、立ち戻るはそういうことなのでしょう。オシャレは我慢、という文句こそ遠い国まで飛翔してしまえとわたくしは思いますが、風邪を引いたら元も子もありません。どうぞ身体は大切に。
所謂90年代らしい “ おおきさ ” ではないモダンに振れたその “ おおきさ ” は、謂うなれば絶妙であり、謂うなれば2000年初期のジョージクルーニーでありますが、いずれにせよ “ ファッショナブル ” という視点でも、“ クラシカルに基づく男性特有ルール ” という視点でも成立する、いわゆる、ずるいやつ、でして、44のわたくしでも、48(又は50)のディレクター福留でも成立する実際的なフォルムは、その時代最高峰の仕立てだからか、その国トップレヴェルの生地なのか、そのデザイナーが巧妙に仕掛けた思惑によるものかは知る由も御座いませんが、ダブルブレストという区分をより自由な尺度で認めようとする際、最も、その振り幅が広いとストレートに感じる内容こそ、謂わずもがな、コートで御座いまして、詰まるところ、今回ご紹介にあたる2着で御座います。
New arrival 60s British only cashmere double-breasted chesterfield coat
New arrival Late90s Yves Saint Laurent cashmere & wool double-breasted chesterfield coat
重ねられた絶対感覚の末が、実際に、飽和点に達した達人にも認めて頂けるであろうこの2着の “ あたたかさ ” は、1年に数回しか外出しない自称ゲーマーにもきっと。
ジャンクションを切り替えて、どうぞ心が往くままに。
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
//
規則的に位置付けられている縞模様は、5色の羊毛で構成された単位模様が計画的に並べられたテキスタイル。ベースカラーは現実性を帯びたオックスフォードグレイ。そこに映える無数に伸びた黄褐色のラインは、人類が最も古くから用いている天然顔料の1種であるシェンナ色を想起させます。さらに注意深くみてみるとボルドー色も見え隠れする抜群な均衡は、謙虚で大胆、左岸的な主張でしょう。
ムッシュのDNAを受け継いだ美しき好手。
休むついでに長考しましても、明快に感じ取れる余裕を保ったダンディズムの仕組みは実のところ単純明快で、答え合わせは6つ釦のダブルブレスト、そのうえ、掛け釦はひとつ。この場合、釦を3カ所しっかり留める仕様では畏まってしまう場面も、6釦で1掛けの仕様はアウトサイダー。自由な提案とスタイルこそ叶う懐の深さを、具体的に示すポイントは先ずはここでしょう。セクションによっては不向きな仕立てで御座いますので、お仕事使いにご検討の方は別の1着をご紹介させて下さい。
左岸的な主張をクラシカルに表現したパリジャンの標本のようなダンディズムは、袖を通した段階で気持ちがよい音とともに身体が吸い込まれ、仮にもそこでロマンティシズムの本質を問いたら、一寸の狂いも躊躇いも異状もなく、従順なまでにその回答をレスポンスしてくれましょう。
それは、青年でも、紳士でも、勉強ではなく背伸びを本業とするティーンエイジャーでさえも。
男性でありさえすれば。
80s Yves Saint Laurent double-breasted tailored wool jacket
昨日、福留も申しておりましたが、ダブルブレストというステージでは、自由な解釈/再解釈のみで構成頂きたいものと、我々も再認識のうえ、再提案したいと、今回2017A/Wの中心的なエディットのひとつに挙げさせて頂きました。
たとえシングルのテーラードのうえに重ねようとも、ミリタリーピースにチューニングしようとも、我々はきっと首を縦に振るでしょう。
ましてや、女性とデートの際でも、表参道の中心でファッショナブルに活躍させるでも、Xmasに両手が空きそうな男達による作戦会議でも。
今からでも遅くはないと、先ずはダブルブレストを。
SURR by LAILA 小林
03-5468-5966
[email protected]
//
今期の中でも思い入れの強い編集ですのでどのように綴ろうかと思案しておりましたが、考えるのは止めにします。ファッションピースとしてスタイルとして、ダブルブレストのテーラードジャケットもまた、着る人は着る, 着ない人は着ない存在でしょうか。それはそもそもの好き好みなのか、出逢うきっかけ有る無しなのか、またはイメージが論点になるのか定かではありませんが、私一個人の感情としましては一層に沢山の方々にお楽しみ頂きたい存在と、お楽しみ頂くべき存在と以前から強く想っておりましたので、じっくりと世界中からダブルブレストを収集してまいりました。
時間をかけたからこそ叶った、様々な方向に向いた個性の良い意味での衝突を改めて SURR の空間で眺めると、考えることが合わない考えに至りました。ダブルブレストは男性性を強く主張する要素として主に認識されていると私は想うのですが、“ その枠に入っていることそのもの ” が私には調和致しません。もちろん、その認識で構築されたダブルブレストは数多く存在するでしょうが、そもそもヴィンテージという要素を選ぶに際しては、創る側の意思より着る側の意思が優先されると常々私は考えます( もちろん創り手への敬意を抱いている前提です )。ネットを彷徨ってもSNSを彷徨っても本当の意味での着こなし例が存在しない、自由度のみで構成される、裏を返せば自由な感性が求められる。酸いであり甘いでもあるからこそ、ヴィンテージはいつまでも魅力的な存在です。
弊店を御愛顧くださる皆様方は本当にヴィンテージを、そしてご自身の個を存分にお楽しみになられているようにお見受けでき、いつも素直な気持ちで学ばせて頂いております。だからこそ心から御提案したい一つがダブルブレストのテーラードジャケット。クラシックに着るもコンテンポラリーに着るも、フェティッシュに着るもコケティッシュに着るも、全て心から御推奨したく想うのが今回の編集, Vintage double-breasted collections でございます。
本日より御披露目致しておりますので、機会ございましたら。
SURR by LAILA 福留
03-5468-5966
[email protected]
//
既に幾つかの媒体様で御紹介頂いております通り、明日 23 日 ( 木 ) より、弊社系列の LAILA VINTAGE にて “ YVES SAINT-LAURENT ARCHIVE ” と題したエキシビジョンを開催させて頂きます。詳しく記すことはここでは控えさせて頂きますが、私にとってこれまでの十何年間において、 “ 一番好きなデザイナーは ” という問いの答えであり続けてきたムッシュの YVES SAINT-LAURENT をこのように表現することが出来、服飾従事者として心震える想いです。
今夜はスタッフ一同力を合わせての空間づくり。長らくの構想が実を結ぶと想うと楽しみで仕方ありません。こちらに関しましては恐れ入りますが是非とも機会をつくって頂き、御来場くださいますよう心からお願い申し上げます。
//