60年代のフレンチプロダクト。親愛なるコレクターいわくスポーツジャケットの一種とのことですがこんなデザインのバランスと言うかスタイルのバランス、フレンチウェアやフレンチワークのカルチャーどころか全てのファッションカテゴリーにおいてこれまでに見たことがありません。ウールとピケのコンビネーションで色味もさりげなく確実に洒落ていて,ちょっとバイカージャケットっぽい前立てに胸元のフラップレスポケット(しかも内側にしっかりとピケを配置という粋),ダブルアクセスのサイドポケット,これまた洒落た配色のウールライニング。シルエットもテーラー仕立てで猛烈に綺麗でトドメは着用感が極めて少ないフレッシュなコンディション。格好良過ぎる。
KIMONOを連想させる極端に造形的なデザインシルエットは80−90年代のウィメンズモードシーンにおいて定番的な世界観で様々なデザイナーによるアプローチが散見しますが、それが純男性用,しかもLoro Pianaのウールカシミアマテリアル(生地感トロットロ)を用いるというクラッシックカルチャーから発されたというのはこれまたかなりかなり稀なこと。デザイナーやヒストリー不明なイタリーアノニマスのプロダクトですが、根幹には抜群の鮮度と感性が光りまくりです。こういうのが時たま“実は⚪︎⚪︎がデザイナーを務めていました”みたいなローカルでしか出回らなかったような事実が発覚することがあってまた抜群に楽しい。
“招かれた際に家主の空間を汚さないようアウターを裏返しにする”というヨーロピアンカルチャーにも確かに根付いた素敵な素敵な他者への配慮によって時たま存在するなんで?というほどに美しいライニングの数々、Valentino Uomoの初期クリエイションであるこちらの艶やかなペイズリー柄も見事です。あとタータンチェックのウールコートなんて素敵過ぎ、あとサイズ表記44なんてコートじゃ初めてなんじゃない?というレベルで稀有過ぎ。
2010年代とヴィンテージと呼びきるには少々若いですがこの面構えですから、そんなん関係ありません。フランス海軍におけるデッキジャケット、屈強な防水の素材感に“国そのものがデザイナーである”という純然たる事実と“まず軍など国の機関のために設計や開発がなされて、時間が経ってから一般的な企業もそれを流用することができる”という社会の縮図を改めて思い出させてくれる究極的なプロダクトデザイン感。男前過ぎます。着脱式ライニングも嬉しい限りで年代うんぬん以上に弊店にとって歴代トップクラスにモダンな感性と存在価値が詰まった一着です。
実は というわけではないのですが、私全然馴染みがないんですよローデンコート的なプロダクト。2年前くらいだったかな、Burberryのそれを御提案したのが初めてで最後だったと思います。実は というわけではないのですが、なんだか食指が動かず今に至るんです。でもこれはなんだかとても素敵に感じました、セレクションの場にある程度の数が揃っていたのですが選んだのはこの一着のみでして見比べて初めて分かったのですがマフポケット付きの個体はこれのみ、確かにかなり好きですマフポケット。あとフランス産のローデンコートってあるんですね、珍しいのでしょうか?教えてフレンチマニアさん。
これ滅茶苦茶綺麗です、つぶつぶの色味が散りばめられたなんとまぁカラフルな肉厚ツイード。50年代フランスの仕立てなのでヴィンテージらしいぎゅっとしたある程度の質量があるコートなのですが、本体が丸みを帯びたパターンメイクなのと着丈が長過ぎないこともあって、個人的には重いと感じず“しっかり適切に暖かいんだろうな”っていう安心感が先立ちました。あと細かいんですが肩線と袖の縫い合わせが連結されていまして、これって個人的には地味ながら実はあまり出逢えない構築な印象なんです。1995年に首後ろチョンチョンチョンチョンのあの人が人形の服をテーマにクリエイションした際シンボリックに取り入れた構築でして、以来出逢っては地味にテンション上がるようになってしまいました。肩線と袖の縫い合わせが連結されているの、結構際立つんですよね。
New. Winter product
都内もそろそろしっかりと寒くなってくれそうな気配、嬉しい冬ですね。
SURR 福留
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1999s
1995s
early90s
90年代に分布するHermes hommeのピュアカシミアプロダクト。当時積極的に採用していたホースライディングの仕様を盛り込んだチェスターフィールドコートにヴェロニクが大人の男性において必須と言い切ったネイビーブレザー、そしてピュアカシミアとナイロンのリバーシブルスポーツジャケットというどこをどう切り取っても捉えても最上のスタイルで贅沢であると同時に現実的でもあり極限まで完成された究極の一着と言える三着のヴィンテージHermes hommeプロダクト。
New.90s Hermes homme pure cashmere products
一着だけでも弊店にとっては大問題ですが今年は幸運にも異なるスタイルを三着御提案することができました。三種類から選べるという環境、少しでも楽しく感じて頂けましたら幸いです。
SURR 福留
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先日帰国した買付けの旅順はフライトの都合により珍しく早朝5時にパリ着のスケジュール。普段というかほとんどは夕方前くらいに到着してその日は休養もしくは軽くのみ活動して翌日から本格的に買付け開始がデフォルトだったのでイレギュラーながら到着して即座に行動開始、機内で意識的に睡眠を摂ったのでさほど眠気を感じなかったのですが言っても12時間以上のフライト&時差ボケ(私は少なくとも二日間は抜けない)なのでよーし気合いを入れなきゃなーと独りごちながら早朝に到着した今旅最初のアポイントメントにて奇跡と言っても良いほど幸運にも出逢うことができたのが垂涎のレザープロダクトでした。
勝手に心の師と仰ぐ御馴染みのコレクターが“Leather is finish”とはっきり言い切ったのは記憶に新しい限りなので(確か2023年の中頃だったかな)2022年,2023年と幸運にも2年連続で御提案できた政府関連企業や国営企業のためのフレンチワーク・レザープロダクトのセレクションは今年は難しい、もしくは一貫して敷いてきた“重くない個体かつ著しくコンディションが良い個体のみ”という私の判断基準を著しく下げなくてはいけないだろうと,良くない言い方ですが妥協せざるを得ないだろうと覚悟して臨んだのですが、驚くべきことに歴代のセレクションと比べても微塵も遜色がないどころか数点に至ってはこれまでに出逢ったことがないほど美しいコンディション,これ一度も袖通されていないんじゃない?なんて個体にも出逢えまして、眠気も時差ボケも一瞬で吹っ飛んでくれたのです。
本当に驚きましたし想定外過ぎてかなり動揺してしまいました、もちろん嬉し過ぎる想定外ね。今年もこれまでと同じく重い個体とコンディションに難有りの個体は一切選ばず、現実的で実用的で有用性に富みモダンなプロダクトデザインとして,なんだったら現代のプロダクトとして捉えられる暖かなレザーコートのみを私の勝手な判断基準ながら厳選。極めて月並みな表現ですが総合的には歴代最高峰のラインナップになってくれたように思います。
New. 50-60s French Government Worker Leather Selection
本当に幸運なことに今回は特に沢山の個体が揃っていましたが、そこからセレクションが叶ったのはたったの十着のみでした。しかしながら弊店にとって十着という数はしっかりとしたバリエーションです。さぁ今年もレザーを,本物のレザーを,もう新たに製作することが叶わないロストプロダクト的なレザーを楽しみましょうぞ。
Leather is not finishでした、今のところは。でもただただ幸運だっただけであくまでyetなだけです、あくまでね。
SURR 福留
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