経済難に陥っていたミラノにおいて1970年代当時モードという存在は人々において非現実でありファッションデザイナーという職は軟派で時代錯誤的だとされていた時代に独立し、逆境の中で行ったセカンドショーである1976AWにおいて既存のモードカルチャーにはなかった“紳士服の世界に女性的モードの概念を注入“することで歴代幾人かの先人たちのように既成概念を壊し文化をアップデートさせたジョルジオ・アルマーニ。この出来事を弊店のはかつてココ・シャネルが行った“モードカルチャーにおける女性の解放“その男性版であり、幾度か訪れた服飾史の革命であり転換期の一つであると捉えています。
当然ながら結果的に男性像の可能性と視野を驚異的に広げることとなったアルマーニさんの革命と転換はこのなんでもないようなオーセンティックを極める御散歩を起源に開発された敬意を有するバルカラーコートにもしっかりと注入されています。いやなんでもないようでオーセンティックだからこそその味付けとスパイスは際立つかもしれません、うん。
コットン×ヴィスコースの配合によってオリジンヴィンテージの類であるコットン×ポリエステルのそれとは一線を画す極端に軽やかな表地とピュアウールの着脱式ライニングという贅沢な要素性によって極端に重厚な裏地というそれぞれ真逆なベクトルを積極的に突き進んだ異常なまでの重さのコントラストによって着用時に生じる揺れ動きや着こなしで生じるドレープがより大胆にドラマティックに演出される、これこそまさに女性的モードの概念で軽やかなコートや重いコートは紳士服に数あれど重さのコントラストを前面に押し出すような正統的男性用プロダクトのなく、まさしく革命と転換となりました。言わずもがな彼の代名詞でもある生地量のたっぷりとしたオーヴァーサイズの独自設計は完璧なシンフォニーを生み出します。
またね、裏地が猛烈に良いんだ。シンプルに考えて上質で複雑な一着のセーターくらいは軽々仕上げられるクオリティは真の贅沢ではありますがある一定の上質な目線を超えるとこの拘りと時間と労力のかけ具合が当たり前になる。この感性が根底というか根幹にあるからこそ本当に好きですモードカルチャー,ラグジュアリーカルチャー,そしてヴィンテージカルチャー。心身が真摯に癒されます。
New,80s Giorgio Armani pure wool attached lining oversized bal collar coat
ちなみにライニングは袖無しのベスト形状でキルティングも配置されているのでかなりの防寒性を期待できそうです。ライニングを外したらオーセンティックでドラマティックにモードで軽やかなオーヴァーサイズコート、季節感の振り幅の広さと有用性の豊かさは説明不要ですね?
SURR 福留
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見慣れたはずのメタルボタンが見慣れないプロダクトにチョンと付くだけでこうも印象が変わるのか、お馴染みのロゴが文言がどう乗るかだけでこうも新鮮なのか、お馴染み過ぎて昨今ちょっとした近似にすら著作権侵害が訴えられるようになったヒップのタブがこのように縫い付けられるだけでこうも心躍るのか。
ヨーロッパ“企画“ではなく後々のLevis REDやMADE&CRAFTEDの母体となったヨーロッパ“クリエイション“(今回はイタリア)のプロダクトは滅多に出逢えないながら幸運な折にはいつも私を特別に興奮させてくれます。ここまで馴染み深くありながら撮りたいと心から思えるアイキャッチに満ち溢れたプロダクトとの出逢いは本当に本当に久しぶりだったので、これに辿り着いた当時の自分に褒美として柴田慶信商店の白木曲げわっぱを送りたい気分です。
あとねこれサイズ感が秀逸なんです。Lサイズ表記なのですがデカい、とにかくデカい。明らかにファッションとしてアプローチする作為性を感じさせてくれまして、そのムードなんてまんまあの人のオーヴァーサイズコレクションのそれ、あの人の2000年初頭のMA−1シリーズのそれ。クリエイション年表としてはこちらの方が先なので見てたのかな?刺激を受けたのかな?好きだもんね二人ともLevis。真意は今のところ不明ですが私は彼らの源流であると強く感じます。ちなみに普段48サイズ上半身の私が着ても圧倒的にデカいくらい、よりオーヴァーサイズなフィッティングがモダンに映ることは明白です。絶対超格好良い。
本当これ、傑作。
New,early1993AW Italian Creation Levis aviator-style oversized bomber jacket
Levis好きですが全然知らないのでラベルを見て へー1850年創業なんだー と思って軽く調べたら即ヒット、“Levisは創業1853年“。あれ? ということでちょっと深掘りしたら英語の論文?みたいなやつで“第二次世界大戦頃にカタログなどの表記がSINCE 1853からSINCE 1850に変更された、その理由は謎。 ー中略ー 。90年代初頭にアーカイヴ部門の社員が調査しSINCE 1850ではなくSINCE 1853が判明し、以降全ての情報が書き換えられた“ とのことです。ネット情報が錯綜する以前にもそういうちょっとした誤差が生まれていたんですねぇ、それにしてもずらされた理由が謎ってのがまたなんか微笑ましくて好き。
SURR 福留
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これまでも幾度となくVintage Hermes homme(Hermes bagでもHermes jewerlyでも当然Hermes femmeでもなく)を探求し幾つかのプロダクト御提案してきましたが、ある時にふと気が付きました、オーセンティックな雛形のアウターに全くもって出逢えない と。出逢えないレベルではなく出逢えない、というか全く無い と。定番のテーラードジャケットやコートの類い、はたまた一時期の主戦力であったボンバージャケットはそれには当てはまりませんで、例えばカバーオール系のワークスタイルであったりTHEミリタリースタイルであったりあのリーバイススタイルであったりと、古来から存在し特に男性服飾史で強い存在感を放ち、御手本ないしサンプリングないしコピーしているデザイナーはいないんじゃないか思われる(私は本気で思っています)ほどのオーセンティックな雛形のアウターが、ことVintage Hermes hommeにおいては出逢えない、というか全く無い
なぜこんなにも出逢えないのか無いのか。出逢え無さ過ぎて無さ過ぎて“こりゃヴェロニクさんわざとリリースしないでカスタマーである我々を飢えさせているんだな“と妄想まで膨らむ始末。だって去年(だっけ?)東京で行われたHermes hommeのワンウェイの最後に登場した時に彼女着ていたんですものオモックソにオーセンティックな雛形のアウター、ずるいよずるいよ!
ということでこれなんて弊店にとっては最高で私にとっては最強。これぞメンズのアウターな威風堂々たるワークスタイル,完璧な4フラップポケットの配置,有用性大爆発のダブルジップ+比翼スナップのダブルフロント,親愛なるリモンタ社製の屈強かつエレガントなナイロン,裏地ゼロの軽快な構築,そして内側の各所に配置された美しいレザーパイピング。
ずるいよずるいよ!
New,early90s Hermes homme work-style black naylon jacket
あとね、なんだかんだオーセンティックな雛形のアウターって格好良いパワーが100あるとしたら便利パワーも100あるんです。だから過去に製作されたプロダクトが人々の手元から離れないからこそヴィンテージとして追求する時に全く持って出逢えないんだと思います。これは妄想の粋をとうの昔に超えた実感です。
ということで出逢えない理由はヴェロニクさんの販売戦略とプロダクトが素敵で優秀だから、ということでヴェロニクさんとプロダクトが悪い!
SURR 福留
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