Zの味 / Diary1223
10.5.2024

親愛なるThem magazineさんが数年連続で編集しているヴィンテージ専門版誌(そういえばサイトで近いうちに発売する最新版が告知されていますね、オフィシャルのインスタグラムのトップリンクからも購入予約ができるそう。一昨年や昨年も即SOLDで買えなかったというお客様の声を複数回耳にしました、今回も必buyですね)など、様々な方法と角度にて人々に知れ渡り続けたことで日本国内においても既に市民権を獲得したと言ったとて大袈裟ではないのではと思えるヨーロピアンヴィンテージの世界は、弊店にとって王道で不動の存在だったもの御提案する機会は年々と減ってしまって今に至ります。それには様々な理由と必然性がありますがそのうちの一つが“より刺激を求めてしまったから“

↑これってファッションカルチャーあるあるなのでしょうか?私はそう思っているのですが。

Aという味を知ってしまうと、それはそれで良い(最高)としたうえでBという味を求めてしまいBの味を知ってしまうと…………個人的にはずっと終わらない幸せと苦しさが同居するジャーニーでしてその度に過去の味を一旦全て忘れたいとふと思ったりするものの、そんなの叶うはずがなく。そのジャーニーとその他理由のマリアージュによって弊店の空間から徐々に主にフレンチワークのヨーロピアンヴィンテージという文化が姿を消していきました。

そりゃZの味なんてそうそう出逢えませんよ。個体としての希少性に加えて年代とコンディションとシルエットバランスとサイズ感という過酷極める条件が合わさりますから、弊店の環境ではお金を積んでも手に入れられない存在ですし極端な言い方にはなってしまいますが探すものではない存在です。探す労力+時間+情熱と出逢える成果の公式は絶対にイコールにはなりません。その方法を続けていたらきっと私は世界中からヴィンテージを探し求めるこの生業を続けられていなかったと思います。心ポッキリ。

 

 

なので前回の旅順でこのZの味と出逢えた時は本当に嬉しかった。無欲の勝利だなんて自分都合過ぎることは思いませんが探し物ほど見つからないメソッド宜しくで出逢いを強く願い過ぎていなかったことが功を奏したと思っています。

フレンチワークにおける20年代というポテンシャル、⚪︎⚪︎職業用といった同カルチャーにおいて定番的なカテゴライズが当てはまらない独創的なアノニマスプロダクト感(唯一色と生地感がレイルロード系のといったところでしょうか)、当然ながら繊細な職人技術力による意匠の迫力、当たり前のように各所に注がれる決して当たり前ではない贅沢な仕立ての概念、何よりも嬉しい現代的なシルエットバランス。

弊店はアンティークに敬意を抱いているものの至上主義ではございませんしなんだったらアンティークアンティークしているのが苦手なくらいですが、この一着にはそのマイナス要素がないうえに時代を遡ることで得られる旨味と強みの全て備わっています。

 

 

 

 

 

New arrival 20s French work belted half coat.

 

猛烈に痛快に単純に純粋に格好良いこのZの味は10年前も痺れんばかりに稀有です。

 

 

SURR 福留

 

 

クレイジーなMサイズ / Diary1222
8.5.2024

平置き実寸で肩幅65cm、

 

 

身幅も65cm、

 

 

着丈が90cm。ちなみにヨーク縦幅は最長25cmで袖丈が60cmで裄丈が95cm。

 

 

そんでもってサイズ表記がM。この時代のGianni Versaceにとって、いやVERSACE JEANS COUTUREにとって、いや同クリエイションの1992年にとってというのが正しいでしょうね、これでMサイズ表記を堂々と縫い付ける感性は。

いやはやどうして驚くというより笑うと言うか、なんか嬉しかったですねここまでも独創的で独善的で提案力に満ち溢れたファッションデザイナーがかつて存在してファッションを愛する世界中の皆んなを楽しませていただけに留まらず30年以上時を経た我々をもこうやって驚かせて喜ばせてくれることを。ファッションデザイナーによって時代によってファッションの区分によってサイズ感は様々であると思い続けてきましたし店頭でも高い確率で口にしてきたものの、ここまでクレイジーなMサイズにはついぞ出逢ったことがありませんが、当時のキャンペーンAdを見るとやはり腑に落ちます。これぞファッションデザイナーのクリエイションだと。

 

 

それはもう大胆に肩を落とし、特出したオーヴァーサイズだからこそ生まれるスリーヴの造形美と軽く折り返した時のニュアンス感、特にアメリカンワークなムードを感じさせるコーデュロイ素材とステッチの意図的なコントラストにウエスタンムード漂う各所の意匠。これぞ全盛期のジャン兄の創造性、メデューサが特に誇らし気に見えるのも気のせいではないはず。

 

 

 

 

 

 

 

New arrival 1992s VERSACE JEANS COUTURE work & western-style oversized design shirt.

 

ファッションプロダクト単体で捉えたとて特出してオーヴァーサイズのシャツとしては着丈の長さとポケット位置に個性があり過ぎて羽織りとしてはヨークなどのパーツに違和感を覚えずにはいられない、どこからどう見ても不可思議な立ち位置だからこそ様々な捉え方が叶う有意義でユニーク,という言葉ではとてもじゃないけど片付けられない、でもそもそもにおいてシャツ感覚のウェイトでフラップ付きのポケットが前面に四箇所付いているのって新鮮だし便利じゃない?な一着です。

“これぞファッションデザイナーのクリエイション“にまた出逢えますように、宜しくお願いしますねジャン兄。

 

 

SURR 福留

 

 

ヴェネツィア / Diary1221
3.5.2024

ロンドンはサヴィルロウのビスポークスーツを嗜む父とパリのオートクチュールを着こなす母が北イタリアで営む古書店の子として生まれ幼少期から自国はもちろん様々な国の歴史的文化と触れ合い、建築を学ぶも訳あって志し半ばで断念した後に幼い頃知った多国籍文化に惹きつけられるように数年間世界各国を放浪し、各地で出逢った民芸品や工芸品,布地や宝石などと共に帰国し、それらを用いて愛するパートナーや友人に洋服を製作することでファッションデザイナーとしての才能を開花させた異端であり天才,ロメオ・ジリ。

 

 

社会的要因もあって肩の強さやウエスト細さを造詣的に強調し新たなファッションスタイルとなったボディコンシャスを正統に経験したがゆえその概念に違和感を覚えたジリさんが辿り着いた造詣的であろうとも肩やウエストに意図的な強弱を付けずあくまで身体そのもののコントラストを表現する“新たなボディコンシャス“は後はミニマムモードとして後のファッションデザイナーの道標となりましたので、今回ご紹介する新作の1990SSオーヴァーサイズシャツもまた造詣的でありながら過度な強調がない極めてミニマムな構築であると同時に極めて独自性に満ちています。このシーズンはジリさんの地元に程近いヴェネツィアをインスピレーションソースとしており、このシャツを筆頭に登場する様々な色調はヴェネツィアングラスを思わせる蠱惑的な発色であると同時に随所に東洋文化を感じさせる複合的な,そしてジリさんにとっては必然的な世界観を内包していました。

 

 

この生地感なんかまさしく超オリエンタル。ちょうど昨日かねてからお世話になっている生地のスペシャリストYさまがレクチャーしてくれたのですが、この生地感はアジア圏を思わせる語感で呼ばれ主に50から60年代頃に和服用などで人気を博していたそう。それを1990SSのプロダクトとして採用したのは古参への挑戦心か懐古主義ゆえか東洋文化への憧れか放浪旅の甘酸っぱい思い出か。いずれにせよ2024年の目線で捉えると古臭さも流行遅れ感もない猛烈に美しい発色とエレガントな癖を感じられる楽しいテクスチャーですね。

 

 

 

 

 

New arrival 1990SS Romeo Gigli Camicie design collar oversized shirt.

 

本当に全くもって出逢えないロメオ・ジリによるRomeo Gigliのメンズクリエイション、2021年ぶり四着目の御提案です。今回の一着も本当に本当に濃いのですがこの抜群に造詣的でありながらモダンであり、かつ今の“造詣的なオーヴァーサイズ“(それこそジリさんが違和感を覚えた時代のボディコンシャスの概念ですね)と一線を画すオーヴァーサイズ。見事です。

美しい発色は本当に痺れます、なんでしょうね才能が発信してくれる圧倒的なエナジーって。ファッションの力,モードの力って本当に尊い。

 

 

SURR 福留

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