弊社事ながら二月が切り替え月なので勝手に節目な気分になっていますが、年明けだねぇと年末年始休み感に後ろ髪を引かれていたら1か月経って、まぁ言ってもやっぱり寒くなるでしょなるでしょと思っていたら先日エントランスの管理人さんに“もう春感じているかい!”と粋でいなせな挨拶をされて、えっ極寒に腹くくってるのって私だけ?もう皆春気分?と思いながら週間天気予報を観ると一桁の都内最高気温がちょこちょこありつつもまたすぐに二桁に戻ったりして、そうなるとすぐに三月で極寒だとしても去年以上にギュッとした日数に成るのかしら なんて独り言ちてみたり。
さりとて最近も寒い夜は寒いですし、風邪系も流行っているとかいないとかなので気を付けなきゃだし、寒くなるにはなるはずなので引き続き覚悟です覚悟。皆様もお気を付けくださいませね。
さて、二月ですよ二月。前述の通り個人的に節目な気分と言うことで新しい顔を御提案させて頂こうと思います。なんだかんだ8か月ぶりになってしまいました、ヴィンテージアイウェアの新作御披露目。いつもは平均して18点ほど店頭に並べていますが、新作15点とお出ししていなかったメンバーも含めて倍の36点をズラリ並べておりますので眼が悪くティーンネイジャー時代からヴィンテージアイウェアの顔で人生を送ってきた私は楽しいです。余談ですが“眼が悪い”ないし“視力が悪い”って表現にかねてから違和感を感じています。悪いってなんか適切じゃなくない?と。視力が弱いもなんかしっくりこないしなぁ、なんか良い表現ないものだろうか。御客様との交流で“眼は悪いですか?”ってお伺いするの、ちょっと嫌なんですよねぇ。








敬愛なるカルティエ社において時計部門と同じく顧客の“作ってよ”の一言がきっかけとなり1983年に発足されたリュネット部門。それまで専門外だったにも関わらず既存の宝飾分野技術力によって一挙に世界最高峰の地位に躍り出て、あまりにも好評ゆえ生産が追い付かなくなってしまったので“良かったら一緒に仕事をしましょう”という手紙と共に部分パーツと製作指示書を世界各国の眼鏡職人に送り協力を仰いだものの、誰一人としてカルティエが求めた技術力に辿り着けなかったため結果的に自社職人のみで製作せざるを得なかったプロダクトであり、現代のカルティエ職人もその技術力を有さなくなってしまったがゆえ今となってはロステクノロジーとなってしまったプロダクト。大々好き。
今回はレンズをぐるりと囲むFULLリムの後継として90年代に製作されたHALFリムシリーズより、18Kイエローゴールドのヴェルメイユ個体と750カラットプラチナのヴェルメイユ個体をそれぞれ1点ずつのみではありますが御提案させて頂きます。これまた余談ですが買付の旅でヨーロッパを深堀りしていた時、フランスの端っこの田舎町の駅から遠い住宅街にポツンと眼鏡屋があってこれらのヴィンテージカルティエを大量に扱っていたのですが、全てPARISなどで出逢えた際と全く同じ価格帯で取引されていて、エリアによって水やビールの値段が大きく異なるのが通例だったこともあってとっても驚きました。こんな端っこの田舎の住宅街でも中心地と同じ存在価値ならサハラ砂漠のど真ん中でも堂々と鎮座してんじゃないの なんて今となってはちょっとよく分かんないことを思いながらその地のちょっと癖がある伝統料理を食べて教会だけ見学して帰ってきたのは良い想い出です。

New arrival,90s Lunettes Cartier gold vermeil and plutinum vermeil.
SURR 福留
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とにかく痺れた。南イタリア僻地のコレクターの下で出逢った一着のレザージャケットは本格的なレーサー仕様なようでそうでない、ヴィンテージらしさ満載で在りながら絶妙にモダン、そしてカテゴライズが難しい,しいてするとしたらオンタイムのモードシーンに当てはまるような爆発力に満ち溢れた存在感と世界観を有していたのです。




“なんだこの赤と白の滅茶苦茶キテるレザージャケットは”。初見の衝撃は以前にロンドンで味わったBest Companyとの出逢いを彷彿とさせながらもそれとは一線を画すファッションの香りとモードの気配でして、アノニマスの濁流に埋もれそうなところをコレクターの“リー・トレヴォーって知らない?”という一言が見事に掬い上げてくれました。バイカーカルチャーがより旺盛を極めた70年代にフランスで産まれ盛り上がったからこそ短命に終わってしまったことで一部において伝説的な存在として知られるLee TREVOR、このエピソードもまた西海岸のアチラさんを連想せずにはいられません。モーターサイクルとリアルクローズ及びファッションが近づきやがてモードとリンクするきっかけを創ったそれらのカルチャーですが、その当時業界内で禁忌的な扱いであった他カルチャーのサンプリングを唯一行っていたのがLee TREVORでして、しかしながらある種反則とも言えるその行いは過去の作品群から着想を得ることで歴史を繋いできたモードの本国フランス出身であるトレヴォーさんにとってはことはごくごく自然だったのだろうと思います。


Stewart,スチュアート。レーサー本人の名前でしょうか、それともレースチーム前でしょうか。バイカーカルチャーに軸足を置きつつオリジナリティを探求したトレヴォーさんは当時においてアメリカンスタイルを踏襲することが多く、アイキャッチが多い過激なデザインが主流だったため、胸元にStewartのパッチワークと刺繍を施した“だけ”というのはその実珍しい=物静かな方というのもまた堪りません、この滅茶苦茶キテるレザージャケットはトレヴォーさんにとってシンプルプロダクトなのです。
ユニフォームもまたワークやミリタリーと同じくデザインの教科書の一つ、特に近年においてこのレーサージャケットの世界観に猛烈なモード性を感じるのは私だけではないはず。癖の強いスタイル性もそれを助長します。

New arrival,80s Lee TREVOR racer-style leather jacket.
もう一度言いますがスタイル性、癖が強いです。強い肩と強調されたゆったり感とスポーティーさは時代性と一言では片付けられないバランスで、バイカーカルチャーとアメリカンカルチャーをモードのDNAが根幹に流れるフレンチの哲学で仕上げるという立派な立派なデザインの成り立ちとなっておりますので私はこの癖が詰まりに詰まったスタイル性、猛烈に惹かれますしガタイが良い私が着ても逆にありだと思えるほどの“デザイン”シルエットです。稀にあるんですよ“こんな人に似合うだろうなぁ”という想像が全く浮かばない癖のベクトルって、で、これぞというパーソナリティとマッチした時に“なんでこれが頭に浮かばなかったんだろう”ってこれ以外の答えが存在しないと思えるレベルでしっくりくるんです。その時に出るドーパミン、一回味わうと虜になりますよ。きっとハンターも同じドーパミン出ているんじゃないかって私ずっと思っているんですよね。
SURR 福留
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主にイタリアンカルチャーで時たま出逢えるカシミアを用いたライニング、いつも思います良い意味で狂ってんなぁと。そりゃ軽いだろうし暖かいだろうけど、表地においても特出した贅沢要素であるカシミアを見えない内側に配置するなんて、そのクリエイションへの心意気は狂っているほどに見事で私は大好きです。と言っても簡単に出逢える存在ではないのでいつも新鮮かつ喜ばしい気持ちになれるので今回もそうかな全くもうワクワク と思ったら一味違いました、これに関しては狂っているわけではなく極めて知的で実用的なライニングというか裏地いや表地、裏地表地の一着だったのです。


そう、リバーシブル。ラムレザーサイドとウールカシミアサイドによるリバーシブルなのです。いやー素晴らしい、見事過ぎます。これを設計したのは稀代の天才靴職人,サルヴァトーレ・フェラガモの次男であり現在は会長のレオナルド・フェラガモ氏。イタリアンカルチャーらしい豊かな人生を送ったからこそ気付けて思い浮かべて構築に至れる贅を尽くしたファッションを通じてのライフスタイルの在り方、私は本当に好きです。もしかしたらひょんなタイミングで大金持ちにはなれるのかもしれませんが血縁そのものの金銭環境とは一味違いますし、もちろんお金があるから豊かというわけではありませんが、“え、パンが無いならお菓子食べれば?”であったり“え、職が無いなら城買い取るからそこで働いてもらえば?”といったマインドに素で辿り着くには、それまでの生き方と環境が大きく関わるというもの。そのマインドが良い悪いは人それぞれの判断ですが、少なくとも普通ではない頭が思い描くファッションであったりライフスタイルはやはり面白いと思うのは間違いなく私が普通で凡人だから。


いやレザーとウールカシミアのリバーシブルって格好良いし着易いし、面白過ぎるし素敵過ぎるって。

New arrival,90s Salvatore Ferragamo lamb leather×wool&cashmere coat.
シルエットは少々細目のスタンダードフィット、単体で充分暖かいからそこまで着こむ必要ないんじゃない?というレオナルドさんの感覚が向こう側に透けて見えるようです。またこの一着は良い意味でデザイナーズの世界観には属さない究極的にプレーンな個性でして、だからこそ構築の面白さと素敵さが猛烈に際立ちます。いやいや、レザーとウールカシミアのリバーシブルって、本当に。楽しいの作ってくれちゃってさぁ、もう。
SURR 福留
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