新入荷のとあるコットンテーラードは一見するとヴィンテージらしい旨味が溢れる佇まいですが、素朴を極めたかのようなその出で立ちには大変に興味深く趣き深く感慨深い背景が潜んでいました。
アメリカの歴史そのものとも密接にリンクする老舗中の老舗ブランド, Brooks Brothers 。時代や国を越え紳士服という区分において徹底的かつ多角的にアプローチし続けているからこそ、そのヴィンテージピースには多彩なバリエーションが存在し人々を楽しませていますが、この度、熟練のコレクターから譲り受けた一着はこれまで目に手にしてきた何処にも何にも属さず、ヴィンテージを越えてアンティークと言ってもおかしくない年代でありながら、独創性と何より確かな新鮮さに満ち溢れておりました。
用いる素材やターゲットやアイテムなどに応じて、それに適した生産背景を選択するのは現代でも同じくかと思いますが、1920年代のブルックスブラザーズにおいてそれに伴う英国のクリエイションラインが存在することを知った時は驚き、なにより品質を追求する姿勢を心から嬉しく思ったものです。
“ コットン素材のテーラードジャケット ” という条件に則れば、当時の仕立てはもちろんのことワークウェアにも数多く存在し、オーセンティックなピースゆえそれらとの共通項が数多く見受けられますが、ブルックスブラザーズの美意識を英国で表現した一着はやはり “ 別物 ” として捉えて頂けるように思えてなりません。
藍染めならではの素朴ながら奥深い色調とテクスチャーも大変に魅力的ですが、何よりはやはりパターンメイク。
背中に寄せられた肩線や前方に振られたアーム、美しい前立ての落ち加減など、仰仰しさの欠片もない、それこそオーセンティックなテーラーの要素が “ 英国ならでは ” の美学に沿って設計されているからこそのフィッティング。現代に比べるとゆったりとした身幅もある種この時代ならではの構築ですが、その余白は決して余計ではなく、逆にドレープが現代的な空気を演出してくれるのも “ 立体 ” に対して的確な配慮があってこそと言えます。
この過ぎるほどに繊細ながら、袖を通せば表現される美意識を細部に宿らせるためには、本国ではなく英国の伝統力を用いる必要があったのでしょう。それによって一見すると同じくなようで最終的にははっきりと異なる表現に辿り着いているからこそ、私はこの一着を真にミニマムだと思い、心打たれました。
1920s Brooks Brothers UK creation line, indigo cotton tailored
古い年代ゆえに様々な捉え方が出来る一着ではありますが、 SURR としてはあくまでリアルクローズとして。どう着て頂いても、是非に。
SURR by LAILA 福留
03-5468-5966
[email protected]
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1947年に誕生したラングラーのデニムパンツ, 11MWZ はウエスタンムーヴィーの衣装デザイナーが手掛けたゆえに “ 世界初のデザイナーズデニム ” と称されているのですが、それ以上に私にとっては人生初のヴィンテージデニムというある種特別な思い入れがある一本です。
出逢いは以前にご紹介した Levis 606 より遥か昔で、昔過ぎるために何故それに手を伸ばしたのか、決断したのか全く記憶にないのですが、四季折々の表情豊かな日本で育ったとは思えないほど情緒に欠ける私めのことですから、ただなんとなし気に入ったのでしょう。
ただなんとなしと言えどもなんだかんだで愛用致しまして。と申しますか未だ現役真っ只中なのですが、いかんせん長らく穿きに穿いておりますものですから、各所の修繕が捗りに捗っておりまして、数年前から2代目を探しているのですが、どうにもこうにも出逢えませんでほとほと困り果てました。
現在愛用しております言わば初代が60年代のものですから、2代目は例え値が張ろうともそれより古いものをと思ったのですが、足を使っても伝手を辿っても出逢えません。サイズが、色合いが、価格帯が等々ではなく単純明快に選択肢として存在しないという現実に向き合わざる得ませんでして、極々々稀に出逢えたとしても初期に存在するライトオンスだったりしたものですから、決断には至らぬ月日を過ごしていた最中、まさかのセレクション ( 仕事 ) で一本手にすることが出来るという現実。これを自分のものにすることが出来ない現実こそ私の職業的宿命ということで、いざ尋常に潔く御紹介をば。
これ以降とは明確に異なるヒップの W ステッチ。ブランドを象徴するアイキャッチでありながら見方によっては味わい深いとも下手巧とも解釈できる、この時代ならではの存在感に私はどうしても惹かれてしまいます。また、元々がスリムに寄せられた美しいレッグラインの流石初代デザイナーズデニムと言える佇まいですので、それに古い年代ならではのデニムの, インディゴの要素が合わさりますと鬼に金棒、虎に翼。
しかしながらこの濃さには本当に参りました。一度抜けてしまった藍は ( 染めなおさない限り ) 二度と戻ってこず、何にも替えがたいからこそデニムの重要な判断基準とされる “ 濃さ ” という要素におきまして、ほんの数回水が通っただけであろう限りなく未使用に近いインディゴブルーという条件には、これからの素晴らしき進化と自分だからこその進化と、それに伴う “ 幾ら積まれても譲れない仕上がり ” を是非ともおおいに御期待くださいませ。
50s Wrangler 11MWZ
私と致しましては同量の魅力を感じておりますので比較するつもりはありませんが、現存数に伴う流通数からかヴィンテージ・リーバイスより有利なプライスゾーンを保持しているのがヴィンテージ・ラングラーの特徴でして、仮に同年代の同濃さがリーバイスで見つかった場合、相当に気軽な買い物ではなくなります。
と言ってもリーバイスより圧倒的に出逢えず、感覚的に美しいと思えるスタイルを表現できますので、極めて高い存在意義を私自身は捉えておりまして、人生初のデニムという個人的な感情を差し引いても、着用者の 『 個 』 を現すある種のマスターピースとして、心よりお薦めさせて頂きたい次第でございます。
SURR by LAILA 福留
03-5468-5966
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私は基本、ヴィンテージはスタイルに捕われること無く縛られること無く自由な感覚で着て頂くべきと思っておりますもので、こと生活用品やファニチャーに関しても同じくでして、 SURR に鎮座しておりますショーケースは元々50年代にフランスの仕立て屋で使用されていたシャツ専用の陳列棚なのですが、シャツを収納する機会の方が少なく、その混沌具合がなんとも楽しい限りです。
この度はシューズが入荷致しましたので、ここぞとばかり埋め尽くしました。これに限らずヴィンテージを自由に楽しむ姿を過去の創り手や担い手が見たらどう思うのだろうか。と、ふと独りごちることもありますが、まぁなんだかんだで親指を立ててくれるのではないかと勝手に想っております。自由さを受け入れてくれる、何より優しく受け止めてくれる長い年月を過ごしたヴィンテージならではの懐深さが、ことのほか大好きでして。
SURR by LAILA 福留
03-5468-5966
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