ヨーロピアンカルチャー,フランスなんて特に特に特に昔から圧倒的な服飾史的存在価値と市民権を有している“修繕が施されたプロダクト”。それらは自ずとファッションデザイナーの品ではなく労働のためや生活のための品々で修繕にはそれらを予想・妄想・想像させる気配が漂い、イコール歴史そのものだからこそ前述の存在価値として尊敬され続けてきました。それらを集めた博物館展示も珍しくなくナポレオン・ボナパルトの豪華絢爛な実物衣装の並びに修繕がびっしりと施された市民の衣類が飾られていたりと非常に興味深い構成だったりします。
ゆえにかねてより存在する修繕が施されたプロダクト専門のコレクターたち。彼らや彼女らにとって仕事相手は往々にしてファッションデザインの御手本を探すデザイナーや会社であったり貯蔵品を探す博物館関係者であったり熱心な個人収集家であったりと、ファッションコレクターの中でも敷居が高い存在だったりしまして、自ずと埃っぽいことも現代的なシルエットではないことも極端な話ですがもはや服としての体裁を保っていなくても問題無し、“なぜなら生地そのものが修繕そのものが歴史だから”言わんばかりの威風堂々たる佇まい方やコレクターの表情もまた非常に興味深く、なによりも独特。
実はこれまで弊店では彼らや彼女らとのコミュニケーションはほとんど交わされなかったんです、弊店にとってしっかりと現代のファッションとして向き合えるプロダクトであることは必須条件なので埃っぽいものもシルエットが好みでないものも服として成立していないものを選ぶことができませんから。見る分には触れる分には特段に楽しく刺激的なんですけどね。とあるコレクターが修繕された生地の一部分や古い生地の一部分を大量に集めた分厚いファイルを所有していたのですが物凄く素敵で猛烈に欲しかったです、価格を聞いて無言で戻しましたけど。きっとあれはどこかのメゾンやデザイナーが獲得したんだろうなぁ、まさに服飾史そのものでした。
ということで素敵な素敵な修繕が施されたプロダクト。弊店が旧LAILA VINTAGE体制からSURRになるにあたって、それらに敬意を払うべくアートリペアという勝手ながらな冠にて稀に御提案してきましたが、もうここ数年その文言を使っていませんでした。まぁ元々御提案したいと思えるそれらなんて滅多にありませんでしたが、だって奇跡のバランスみたいなもんですもん。本当に久しぶりな御提案となります、アートリペア・プロダクト。
特徴であり象徴である背面の大型ポケットそのものすら撤去されている50年代のハンティングジャケット。その全体に施された修繕は筆舌に尽くし難いです。一体何人の手仕事が関わっているのだろうか、一体どれくらいの時代を跨いでこの姿に辿り着いたのだろうか。予想・妄想・想像はとどまることを知りませんが決してその域を超えません。当然ながらしっかりと着るための服として成立していますしこれからも成立し続けるでしょう、生地の表面におそらくは防水を目的としたコーティングが施されていたようで現状“コーティングが施されていたんだろうな”と思わせる程度でほとんど消えているのですが、ここまで修繕されながらも生地強度が残ってくれているのはその消え失せたコーティングが大きな要因だったと思われます。
なお両胸のポケットボタンが欠損していたので私物コレクションの90s Hermesゴールドボタンを縫い付けました。敬愛なる服飾史、親愛なるアートリペアということで。
New 50s French art-repair cotton hunting jacket
SURR 福留
△
これは本当に”感動した素材”なんです。様々なカシミヤに触れてきましたけど、バランタインのスコットランド製特級カシミヤに出会った時の衝撃は、今でも忘れられません。最初に手に取ったときは「軽いな」という印象。でも、実際に袖を通した瞬間、ただ軽いだけじゃなくて、肌にしっとり吸い付くような柔らかさと、肌触りに正直”何これ”と驚きました。これが特級ランククオリティのカシミヤかと圧倒されました。デザイン等で驚くことはあるのですが、素材一つでここまで印象に残ったのは初めてでした。
こちらのニットがまさに、その”感動した 素材”であるバランタインのスコットランド製特級カシミヤです。シンプルな無地も勿論好きなんですが、この幾何学的な切り替え模様を取り入れていて、深い胸元にしっかりとしたリブ、見た目にも相当なこだわりを感じる一着です。これに慣れてしまうと、”特級カシミヤ以外を着れない”なんて贅沢な事を思うようになりました。
以上、”感動した素材”についてお話しさせていただいたのですが、これからも、この場では私自身が心から良いと思ったものや、実際に感動したことを、素直に言葉にしてお伝えしていきたいと思っています。
SURR 古川
△
秋冬の一番最初に着られるカシミアって超軽量かシルクとの混紡なんじゃないかなって思う。で、こちらは超軽量でカシミアシルクの混紡セーターという弊店にとっては特に希少種の一つ。ナチュラルフィット設計でモックネックで冷たいホワイトカラーっていうのも嬉し過ぎやしませんか?
/ 90s malo light cashmere silk sweater
巨匠全盛期のカジュアル提案でワークSTYLEの味付けとデニムテクスチャーのスパイスで自然体ながら確かに響くデザインシルエット。今までも大切な存在でしたが今まで以上に大切に感じざるを得ない。私は簡単にRest In Pieceなんて公の向けて言わないで心の中でもっと大切に想う。
/ 90s Armani Jeans work-style denim shirt
オリジンカルチャーだったら重さや硬さすら内包した“原始の革の上質さ”とかデザイナーズカルチャーだったら唯一無二の“デザイン性”とか“スタイルバランス”とか“クレイジーな個性”とか、レザーウェアの判断基準って幾つかあると思うんです。で、個人的に思う重要な判断基準がやはり“品質”なのですが、となるといかんせん候補がギュッと少なくならざるを得ない茨の道なので親愛なるブルネロ・クチネリさんがレザーウェアを贔屓目なくらいに愛してくれるのは本当に助かると言うか嬉しい、だって彼ほど間違いない人物ってそうそういないんだもの。彼ならではのクラッシックカルチャー目線の“レザーウェアとしての普通さ”にさりげないデザイン感性が注がれたとんでもなく軽やかで柔らかな最上品質のレザーウェア。これってきっとコンサバティヴだと思う、そしてコンサバティヴって最強だと思う。
/ 00s Brunello Cucinelli biker-style design leather jacket
一つのミスが即座に命の危険に関わるってミリタリーおける様々な環境の中でも稀なので、空挺部隊,パラトルーパーのために設計されたプロダクトの数々は自ずと特に特別なものとなり特徴的なものとなり、結果的に必然的により濃くモードカルチャーと繋がることとなりましたのでどの国でも空挺部隊のプロダクトって特出して格好良いんです。ベルギー軍のこれもまさにそう、パズルを組み合わせたかのような象徴的な迷彩紋様に空挺部隊特有の個性的な意匠の数々。
/ 1963s Belgian Airborne Forces jigsaw camouflage paratrooper jacket
Uomoの最初期頃のヴァレンティノ=男性に向けてのイタリーモードの基準。造形的な肩を筆頭としたデザイン概念にピュアウールギャバジンのテクスチャーに落ち着いたカラーリングに明らかなる軽量感といった良い意味で最老舗のアチラやアチラのトレンチコートとは異なる要素性が“コート屋のコート”と“デザイナーによるコート”のそれぞれがこの世に存在して然るべきな意義を示しています。
/ early80s Valentino Uomo wool gabardine trench coat
超厚切りの食パンを小脇に掲げるくらいのサイズ感。何言ってんだこいつと思われるかもしれませんが僭越ながら個人的には適切な比喩ではないかと思っています。そして超厚切り食パンくらいのサイズ感なので財布系も小物系もスマホ系もスッポリ入るのでものすんごく使いやすい はず。
/ New 1985s Hermes cross body small leather bag
New
あとBest Companyのスウェットジャケットがありますが前回古川が書いたので割愛します。色々な新作、機会ございましたら。
SURR 福留
△