弊店は例年において “ 真夏の御提案 ” がほとんど叶ってこなかったという誠に恥ずべき自負がございまして、それは私自身が冷えに弱いなどでそのような装いが不得手である点と、純粋に御提案したいと心から想える品との出逢いが希薄であるという点が理由として挙げられるのですが、先日から続く湿度に伴う過ごしにくい, ある種真夏の太陽よりも過ごし辛さを痛感する, この時期の辛さはお大袈裟でなく体調を崩しかねない、日々を体感致しますと、先日の旅においてこれまでにはない世界観の幅と数と以上な密度にて今期は “ 真夏の御提案 ” が叶いますこと、心から嬉しく想います。
毎度絶頂的な芸術観点からなる美意識を発揮してくれる “ 織りの専門家 ” 、存在自体はおそらくは定番の枠にて固定されているながら弊店にとっては選ぶという判断が極めて難解でありこれまでにほとんど御提案が叶わなかったため大変に喜ばしくなによりも幸運に想える1900年代初頭の “ 穿く麻 ” 、氏の表現においても特に前衛的であり結果的に現代と繋がることととなったイタリアンモードの王による “ 未熟と成熟 ” 、数年前から弊店を魅了して止まない独善性と品質に対する姿勢と実行力から成る時代に取り残されているようでどうしようもなく惹かれてしまう “ 中毒性 ” 、そして、彼女もまた伝説的なモードの立役者の一人でありながらその芳醇な略歴の中で1年と半分しか存在しなかったがために出逢いを願うことすらも叶わない, 出逢えたことが, そしてこのように御提案が叶ったこと自体が弊店にとって一つの “ 事件である一着 ” 。
空間で御品と向き合うとこのような編集が叶ったことは 運が良かった以外の何ものでもない と改めて想うほどに私にとって真夏の御提案は難解な, 正直に申しあげますといついかなる旅であろうとも、出逢えることに期待心を寄せていない区分でして、“ 織りの専門家, 穿く麻, 未熟と成熟, 中毒性, 事件である一着 ” の計九着からなる御品と出逢えたことは、仰々しい表現となりますが私にとっては一つの奇跡です。
Newarrival. Midsummer propose.
SURR by LAILA 福留
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例えばジーンズを小粋にお召しの御客様と交流させて頂いたらすぐさま帰宅してジーンズに履き替えたい衝動にどうしようもなく駆られるほどに、私は影響を受ける際には素直に受けて直情的な想いを巡らせる性分で、自身の中に在る気分は良しにせよ悪しにせよ受け入れるようにしておりまして、昨年にアンバーリングを御提案させて頂いたのも紛れもなくその直情によるもので、かねてより主に繊細なリングを周囲の人々から恐れられる異形の野獣が一輪の薔薇を大切にするがごとく好みの対象としていたものの、これまた前述のジーンズ方式と同じくな偶発的経緯を幾度か経て心が繊細の逆に位置する装飾的リングを求めるように成った末に出逢いが叶い御提案させて頂いた次第だったのですが、その感情は一時的なものではなくアンティーク・ファインジュエリーの取捨選択にもはっきりとした変化を及ぼすことと成りまして、このように直情的過ぎる自身の潜在意識にはやはり腹と頭を抱えますが、ことこの生業に関わることであれば直情も大切である とも考えております。
この度の新作群は最古が 1864 年となり、アンティーク・ファインジュエリーに関しましては最新で 1960 年代 ( 注:弊店では 1940 年代以前の御品をアンティーク・ピース、それ以前をヴィンテージ・ピースとして御提案させて頂いておりますが、これらに関しましては “ アンティーク・ファインジュエリー ” という呼称で統一させて頂いております ) となりますが、これまでに御提案させて頂いた幾度かに比べて特に装飾的リングが目に付く印象を私は抱きまして、アンティーク・ファインジュエリーという世界には時に出で立ちの傾向や方向性が近しいものが在りながらも、あくまでそれらは近しいだけで結局のところは全てがそれぞれに異なる無垢な 1 の存在感を有しているのが特色であり現実であり、男性のおける装身具という要素に難しさを感じ, だからこそそれと向き合う意義と価値となによりの面白みを感じる私にとってはこれまでもこれからも独立した存在かつ心と寄り添ってくれる解の一つで、弊店におけるこれまでの幾度かは常に異なり続けていたものの、この度の新作群で装飾的リングが目に付くことと成ったのは喜ばしく、例えば女性的とも捉えられる曲線美の内部に白金とニ十石のダイヤモンドを載せた一つや、男性性が強く宿った形状に三十二石のダイヤモンドを載せたうえで光を集めるための細やかな職人技術が施されたこの度の最大幅を有する一つや、七石のうちの一つがそれはそれは大きいダイヤモンドの大胆な輝きと共にヴィクトリア期らしい装飾の趣意による独創的な立体感をお愉しみ頂ける一つなど、それぞれにおける物質としての華やかな 1 の存在感がケースの中に鎮座しておりまして、それら個の質量は空間全体と対比させた際には 0.1 %以下となるのでしょうが、全体に及ぼす影響はその数値以上に強大ですので、絶望的に華やかさの足りない私がようやく一人前の人間に成れたような錯覚を受けますが、きっとそれらが旅立ったら元の野獣に元通り。読書と空想が好きな父親思いの美しい女性がやってきて人間に戻れる日はいつに成ることやら。
引き続き皆様方の日々が豊かになる何かに成れましたら幸いです。
SURR by LAILA 福留
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私は傘が心に寄り添わない性分で、鞄以上に可能な限り持ち運びたくないため不自然なほどに濡れるのもいとわない日々を過ごしており、とは言え限界があったためその度に簡易品を購入しては失い続けていたのですが、その繰り返しがあまりにも虚しかったため “ 逆に大きな犠牲を払えば持ち運ぶのではないか ” と想い立ったある晴れた日に手に入れた一本を愛用していたのですが、高度一万メートルで十数時間過ごしてから少し経った先日に知人宅を訪ねた際うっかり置いてきてしまい失意に暮れました。実は以前にも一度同じ意図で手に入れた一本の傘がありそれはタクシーの中へ置き去りにしてしまったのですが、どういうわけかある日自宅の押し入れにそれが在り、心の底から驚く という夢を知人宅から帰った晩に見まして、都合の良過ぎる自分の潜在意識に腹と頭を抱えた次第です。
このように私は元来大変に大変に粗野な人間でして、正直に申しあげましてこの生業に関わること以外の全てが, 例えばシチューのパッケージに書かれたレシピを読まずに作る, 絹豆腐のつもりで木綿豆腐を買うなど、残念な有様で、きっとこの生業に対して私の中に在る考える力が全て注がれているであろうほどに本当に本当に残念な日々を過ごしているのですが、考える力の全てを注ぎ続けようとも経験を積み重ねようとも、この生業では予想や夢想や考察を上回ることばかりが巻き起こり “ 愉しい ” という感情が尽きることはありませんでして、最近におきましても一つのブレスレットが心を愉しく愉しく掻き乱してくれたのです。
それは我々ごときが御提案すること自体が野暮なほどの存在価値を社会的にも歴史的にも既に有し、その立ち位置に甘んじることなく縦横無尽に自由な感性と時に驚くほど遊び心溢れる表現力と実行力を発揮し続ける親愛なるメイカーによる 80 年代初頭の一品で、三つで一列となった輪が十二列連なる全箇所において研ぎ澄まされた形状から生じる摩訶不思議な稼働表情と、貴金属に一切の馴染みがない御方でも無意識的に強い求心力を感じて頂けるほどに厳選された、九つのアルファベットと一つの記号とドットから構成される刻印に紛れもなく相応しい素材表情から、男性に向けて心から御提案したいと想える中でも異質なまでに優雅で麗しい存在に感じられ選ばせて頂いた御品でして、私は “ 優雅さや麗しさが特に強い場合は容易に個と寄り添わない。ゆえに寄り添うことが叶えば唯一無二になる ” とかねてより考察しており、本品は稼働表情や素材表情などの印象面と幅の広さや物質的な質量などの現実面ゆえの優雅さと麗しさを備え、例えば私が身に着けた場合には過度な演出性に感じられたりと、強さだけでは正しい解と成らない, 類まれなる感性によって極地的に研ぎ澄まされ愛情注がれているからこその難しさを有する御品と捉えていたのですが、先日のとある時間に驚くほどに優雅さや麗しさが自然に馴染んだ御姿を拝見させて頂き、大変に興奮してしまった次第です。
その印象を直感的に申しあげますと優雅さや麗しさを “ 手懐ける ” と申しますか、強さを強さとしながらも我がものとして制御しきった様子と申しますか、とにかく予想や夢想や考察とは全くことなる次元の御姿でして、ヴィンテージやアンティークならではの既にそのほとんどに着用例や着こなしの指南書が存在しないからこその, 御人によって異なる視え方の, 千差万別で全てが異なる方向に向かい全てが等しく正しい解と成ってくれる愉しさを認識させて頂いていたにも関わらず、優雅さや麗しさをこのように “ 手懐ける ” 着地点に出逢ったことがありませんでして、心から驚きました。手懐け制御しきる御姿と成ることが稀なのか否かはまだ解っておりませんし、もちろんそうすることだけが本品との向き合い方においての解ではありませんが、この驚きによって改めて装身具で手元を彩ることでの豊かさとなにより Tiffany & Co. の偉大さを再確認させて頂きました。
early80s Tiffany & Co. silver 925 triple loop brecelet.
SURR by LAILA 福留
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