綿が好き と時節柄ほとんど毎日想っておりますが、これは時が過ぎれば羊毛に成ったり革に成ったりとする要素ですので例年の通りではあるものの、例年の通りこの時期に心からそして年を重ねるごとに強く想うのです 綿は良い。やっぱり綿が好き と。
先日も蠱惑的なタオルと出逢うことができ独り顔を拭いては幸せに浸っておりますので、引き続き “ 現代だから / 過去だから ” には囚われず不気味な笑みを浮かべておりますが、身体に寄り添う綿に関しましては時間という要素を吸収したそれらの時に乾いた, 時に爽やかな, 時に艶やかな, そして共通して潜む奥行きと深みに惹かれまして、一枚で羽織る瞬間しかり何かと重ね合わせる対比しかりそれぞれに異なる、やはり蠱惑的な素材表情を心から愉しみ親しみ皆様方との共鳴欲求を感じ続けておりますので、この度の新作群にて改めて御提案させてくださいませ。
Newarrival. Vintage cotton.
特性通り様々な要素を集約させることとなりましたが取り急ぎの御報告でございました。御興味頂けましたら是非にと想います。
SURR by LAILA 福留
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前回も記させて頂きました通り魅力や求心力において “ 新しい品である / 過去の品である ” は決して論点には成りませんが、職人技術が関われば関わるほど過去の品に惹かれる傾向が私にはございまして、また、一つの品に惹かれた際に 70 年代と判明したら選ばない / 30年代と判明したら選ぶといった “ 時代を遡れば遡るほど良い ” という判断基準はないものの、仮に70年代であることと30年代であることを天秤にかけるとしたら一部の区分においては後者であることの方が喜ばしく感じまして、それはそれらが時代を遡れば遡るほど ( 主に工業に関わる ) 技術面が素朴になり、おのずと完成までに時間がかかるため職人技術・熱量・愛情がより多く注がれる傾向にある と考えている点と、70 年代の品と言われた方が納得できるような出で立ちが 30 年代の品であったなんて という幸せな矛盾が生じるからなのですが、この度の新作アイウェアにおいて、見事にそう感じさせてくれた二点がございました。
弊店にとっても大切な存在であり情けないことにここ数年新作の御提案が叶っていない Oliver Peoples は、近年一層に躍進を果たしている印象を抱いております。同社は 1987 年に設立されたメーカーで、とある倉庫に保管されていた何十年も前の眼鏡部品・機材・名簿との出逢いがきっかけであったがため、初期の作品群にはそれら 1900 年代初頭から 1930 年代にかけての “ アンティーク・アイウェア特有 ” の要素が存分に反映されておりまして、その独自性と高い品質が同社を一挙に同区分における特別な立ち位置まで昇華させ現在に繋がっており、同社が打ち立てた “ アンティークの世界観を現代の感覚で真っ向から取り入れる ” 手法を私は新しい現代性として捉えているのですが、前回の旅で出逢えた一つは、さも Oliver Peoples と見紛うような構築でありながら対話してみるとその先に潜むアンティークと呼べる年代ならではの特異性と強さと、存在価値において重要な苦みに気付かせてくれる一品であり、ここまで Oliver Peoples の要素を直線的に感じさせてくれる, イコール同社の教科書である “ 本物 ” のアンティークに出逢った経験と、彼らが打ち立てた新しい現代性でありながらそれらと一線を画すという幸せな矛盾に出逢った経験はありませんでした。
金属装飾 × 樹脂素材という、今や同社における代名詞的な要素にて構築された同社にとっての教科書そのものと言って差し支えない本品は 1930年代にフランスで産まれました。特有の素材表情は申しあげるまでもなく隅から隅に至るまで存分にございますが、最たる脅威なは各所の曲線美でして、同社代表作である雅や MP シリーズと共通する現代的であり知的で不変的なボストンフレームに秘められたアンティーク年代ならではの職人技術, 角の滑らかさや強さや曲線のなだらかさや急激さといった繊細極まりない緩急と極めて少々広めなブリッジとの調和、による均整のとれた “ 美しい ” と共に強烈な “ 苦み ” が感じられる、どうしようもないほどの中毒性と存在としての独善性がこの一点には在るのです。
1930s French eyewear, pale pink and gold.
続く。
SURR by LAILA 福留
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そして、同日に同コレクターさまの下で出逢えた同じく 1930 年代にフランスで産まれた一つに私は心は掻き乱されました。これまでに幾つかのアイウェアを愛用しどれも異なる方向性で等しく惹かれてまいりましたが、その中でも私の心に最も残っているのは左右対称のプレーンなオーバル・フレームでして、それは数年間愛し続けた末に私の中で生じたとある理由から一時休止せざるを得ない結果となりましたので、その後より同条件を探し続けても一向に出逢えず今に至っているのですが、それと全く同じな一つに出逢い、慌てふためき自身の眼鏡レンズを擦ったりスキットルからぐいと呑んで一息ついてみたりとしたものの、決して幻なんぞではありませんでした。私がこれまでに最も愛し長年追い求め続けても一切出逢えなかった左右対称のプレーンなオーバル・フレームが 2019 年 6 月 22 日、確かに在ったのです。
もちろん実際は鼻当てが付いていたりフレームに装飾性が注がれていたりと私のそれとは異なりますが、しかしながら全体の構築, フレームの縦横比やブリッジの調和などはかつての愛用品と極めて極めて酷似しておりましたので触れるのに一種の恐れすら抱きました。素材や要素によって異なる印象には常に舌を巻きますが、本品におきましてもそれはそれは見事なものでして、14K を用いたゴールドフィルド製法による従来の鍍金よりも約 200 倍の厚みを有した, 金無垢に極めて近しい素材表情の泣く子を黙らせるほどの強さ, 残酷なほどに美しい存在感に呆れるほどに惹かれ、更に施された装飾性にとどめを刺されました。1900 年代初頭から 1930 年代頃にかけてのアイウェアでは金属に装飾を施すことが多く ( それこそ Oliver Peoples が取り入れた主たる要素です )、細やかに刻まれる紋様によって高い芸術性を発揮する職人技術に基づいた世界観なのですが、本品におきましては細やかかつ豪奢に行えたはずのそれらをフレームと並行して流れる二本のラインにあえて留めておりまして、 “ アンティークらしく ” ありながら “ 現代的 ” というこれまた複雑な矛盾が生じているのです。
しかしながら、なぜプレーンオーバル・フレームに出逢えないのか。 私は本当に不思議に想います。金属によるアイウェア自体はヴィンテージやアンティークの世界における不動な存在であり、ボストンやサークル, 稀にスクエアやハーフリムなど装飾性在る・無い問わず出逢えるにも関わらず、左右対称のプレーンなオーバルには一向に, 本当に一向に出逢えませんで、“ ここに在るぞ ” とどなたか御存知でしたら心から御教え願いたいと心から想うほどでして ( 私がお迎えにあがらせて頂きますので ) 、“ なぜ ” の背景は不勉強ながら存じあげておらず、そもそも珍しくない存在と言われたらそれまでなのですが、私にとっては本当に謎な存在です。そして、左右対称のプレーンなオーバルフレームを顔に乗せた時に抱く, 正直に申しあげまして過去数年に渡って私的に愛用しておりましたので主観ここに極まれりですが、金属によるアイウェア特有の知的さと柔らかさと共に在る強烈な怪しさの中毒性から、私はやはり永遠に抜け出せなさそうです。知的である。優しさが在る。繊細さと美しさも在る。 ( 御人によっては ) 色気も在る。しかしなんと言ってもとにかく怪しい。妖しいではなく怪しい。
30s French eyewear, 14KGF oval flame.
一昨年の同窓会時期だったでしょうか。友人たちと食事中にふと他人からどういう印象を抱かれたいかという話になりまして、“ 面白い ” であったり “ 可愛い ” であったりが挙がる中、私は遥か昔より一貫して “ エロい ” と想われたがっていることに気付きました。それは紳士性であったり懐の深さであったり純粋な経験値であったりと幾つかの要素が調和して成立することと想いますが、欠かせないのが 怪しさ であると考えます。皆様方が社会に属するうえで御自身らしく居られ, 充足心に満ち溢れて心が豊かになり未来への活力を得られるようなアイウェアと出逢えますこと、陰ながら心より願っております。
SURR by LAILA 福留
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