サルトリアルの風 / Diary 782
25.10.2019

2018 年間題目であった “ イタリアの風 ” 。厳密にはその以前から主にデザイナーズヴィンテージの区分におきまして精錬し御提案を続けさせて頂きましたが、先日の旅にて私にとってまた新しくかつ念願であった表現区分の出逢いが叶いまして喜ばしく想うと同時に、2018 年以前にはさほど強く想っていなかった方向性が 2019AW 期の今にそれらとようやく巡り合って向き合って触れ合った際に、今までにないほど強く想うようになりました。

 

Military を Military らしく、Work を Work らしく。Antique を Antique らしく、モードをモードらしく。いずれにおいても私は自分が装う・装わないに関わらず、そのような “ らしさ ” を避けて, もっと言ってしまえば倦厭してこの生業と向き合うように成ってどれほど経つか, いつからかが解らないほどに そういえば気が付いたら のことですが、その想いが弱まることはございませんで、それは例えばどこかのブティックにふらりと立ち寄った際に最新のコレクションで全身を包んだ誰それが居られた時、例えその全身が税の限りを尽くしていたとて驚くほどに惹かれなかった記憶と、弊店を御愛顧くださる皆様方が全て異なる方向性に向いて居られ、かつ様々な世界や分野から自由気ままに抜粋されて組み合わされている姿を眼にし続けている記憶が最たる要因なのだと想いますが、きっとそれぞれの分野をぞれぞれ “ らしく ” 組み合わせて着こなすことは形に成るでしょうしきっと絵にも成るのでしょうが、簡単に申しあげますとそれら通説は弊店が御提案させて頂く必要はなく、であれば想像すらしなかった組み合わせや着こなしを御提案したいと, 御提案する挑戦がしたいと想い続けている次第でして、しかしながらそれらもまた時に結局のところいつかは通説的に成ってしまうのでしょうが、それに気付けた時や想い付けた時や見つけた時の高揚感は確実に、その時間のその瞬間にしか在りません。何を言いたいかと申しますと、皆様方には引き続き是非に、それぞれ異なる方向性を向いて自由気ままに御愉しみ頂き、時に弊店が何かと御縁結ぶお手伝いをさせて頂けましたら幸いです ということでございます。

 

この度御披露目となります新作群は全てイタリアの仕立て、サルトリア職人による品々。きっと通説に則られ続けて今に至る存在かと想いますが、弊店では同じ看板でありながら時代を遡ることで変化する諸々, 例えばハウスの規模が小さくなるからこその美しさの要素であったり時代の独自性と結果的な不変性の緩急であったり, 素材の精製職人と仕立て職人による純真無垢な姿勢とそれに伴う仕上がりであったりとした現在の品々との差異、場合によっては違和感を弊店なりに精一杯の誠意を込めて、通説に則ることなく御提案させて頂けたらと存じます。

 

 

 






これらにおける通説は言うなれば着こなしなのですが、それは結局のところ不変的ですので良し悪しという概念でもございませんし、一個人としてはとても好きな世界観です。ただ単純に手前どもが御提案するまでもなく、生活を共にしたら時や場合や気分に応じて必ず成されるものであり、好き好みで様々な微調整あれど格好良くないはずがないということでして、なによりもきっと通説に則られ続けて今に至る存在だからこそ想像の枠組みというものが出来てしまっているのではないか、向き合う前に選択肢に入らないのではないか と想うがゆえ、この表現区分に関しましては特に通説に則らない, “ らしく ” 向き合わないという御提案をさせて頂きたく想います。

 

 

 

 

 

New arrival, Vintage sartorial collection.

カシミア100%, カシミア100%, ニュージーランド・メリノウール, カシミア100%, カシミア70%とウール30% 。スーツ的であったりビジネス的であったりトラディショナル的な解釈は絶対に大丈夫ですので、是非ともピンクのスウェットであったり着古した肌着であったりジャージであったり、“ それ、ごわつかない? ” 的な郷愁溢れるニットと共に今を闊歩して頂きたく想います。
全て視界を無くし “ 着心地 ” のみでの判断を入口に選択致しました。引き続き弊店にとって欠かせない要素であり、御興味頂ける御方とそうでない御方に別れるテーラードジャケットですが、私にとってこの着心地はこれまでのそれらと良い意味で異なります。これこそまさに Maker vintage 。

 

 

SURR by LAILA 福留

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下半身 / Diary 781
24.10.2019

気温も落ち着いたところで保温性に特化したものを御探しになられる方も多く感じる良い季節に入りました。私的にもどうも上着上着と考えがちですが、装いの愉しさ、豊かさには下半身の重要性を感じます。一週間に毎日異なる洋服で過ごす方はごく少数だと私は思い、お気に入りの上着は毎日で着たい性分ですので、それに付随するとあいつ毎日同じような服装だななんて一人の出っ歯の友人を思い浮かべますが。一つのアイデンティティーに感じる要素もあり、 ” 自分らしさ ” を主張するには何も問題は無いせすが、気分を変えた目新しさを御提案したい、感じて頂きたいと思える季節感溢れるトラウザーズを御紹介をさせて頂きます。

New Arrival ➡
80s Valentino Jeans wide wale corduroy trousers ” navy ”
90s Armani Jeans slim wale corduroy trousers ” dark navy ”
50s French work corduroy trousers ” brown ”

日本に措けるコーディロイ素材を考えるとアメリカントラッド、IVYから派生したイメージが大きく、その流れを受け=カジュアルな装いと捉えるベースがあるかと存じますが、時代背景は 16 世紀後期にこの素材を気に入ったルイ 14 世が仕事着の為に王宮の庭師の制服とした、又はイギリスの毛織産業から始まったと所説あり、その後は上流階級の為のハンティングジャケット、ワークウエアに使われる素材へ。面白いことにアメリカでのコーディロイの流行も、エリートへ向けた大学から派生している何とも知的な素材。Armani Jeans 、Valentino Jeans に関しましてはその名の通り気品溢れるマテリアル。テーラードジャケットを合わせても決して劣らない滑らかな質感、カッティングも上品且つ自然な美しさですのでそれこそ普段通りの装い +α で。French work Trousers に関しては文句の無い、某メゾンのサンプルソースとしての認識度の方が高いと疑うくらいに完成形。ボタンフライ下の金具、言う事無いです。上記3点とも美しいナチュラルなカッティング、太畝=カジュアル、細畝=ドレス的要素と一つの定義文を目にしたのですが、私は関係なく普段の装いに合わせて、凹凸から生まれる空気を含ませた保温性の高さからなる実用面をと御推奨させて頂きます。

補足ですが、日本国内に措けるコーディロイ ( コール天 ) 産業の 90 % のシェアは静岡県遠州地域、産業の立役者は現・豊田自動車の創設者だそうです。面白い。

 

 

SURR by LAILA 鈴木

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クロスオーヴァ- / Diary 780
22.10.2019

時流によりオーヴァーサイズが台頭し始めるころ既に私はテーラーの類が最も好ましく、社会に属するうえで最も自分らしく居られる装いとなっておりまして、それに至る過程にはそもそもにおいてその分野が好きであった好き好みや、若かりし日にスキニージーンズを履いていたら腿の付け根が必ず擦り切れた想い出や、長らく続けていた剣道を辞めたとたん急速に筋肉量が増えた過去や、実は足の親指が短いがゆえに悪い安定感を補うべく肩幅が広く成ったことを知った時の衝撃や、海外ドラマのジェシー叔父さんに憧れて胸筋を付けようとトレーニングしたらすぐに大きく成り過ぎて急遽取り止めた経験などが在るものの、台頭し勢いを増せば増すほどそれらオーヴァーサイズは魅力的に感じ惹かれつつも私が嗜むものではなく、あくまで御客様方などに御提案する装いであり世界観であると考えておりまして、その距離感はあくまで一定であり不変であると薄ぼんやりながらも想っていたのですが、先日の旅にて御世話になっているコレクター様のもとで一着のオーヴァーサイズ・コートと出逢った際、御仁が “ ケンタ、それ似合うよ ” と言ってくれたものの、前述のように想っていたのとそこは鏡が無い空間であったために腑には落ちず、しかしながら諸々の要素にどうしようもなく惚れ込んでしまったため譲って頂き、少々肌寒かったことを言い訳に、本当は体験してみたかったので 今だけ、今だけ と羽織って過ごした二時間ほどで、御仁から投げかけられた言葉が腑に落ち、前述の持論が崩壊致しました。

 

本品は 70 年代に製作されたイタリアン・モードの看板を背負っており、当時としても大人の男性に向けてを軸足としておりまして、オーヴァーサイズ・コートというよりはオーヴァー・コートの概念で、あくまで現実的に中に着こむことを目的としたあくまで自然体な着こなしを目的とした作為も他意もない余白設計ながら、時代を経た今では一言でオーヴァーサイズと称して終わるのでしょうし、それでも差し支えないことと想います。
現代におきまして新旧問わず品々と向き合った際に、モードであったりストリートであったり, クラシックであったりアルチザンであったりと、それらが様々な側面で捉えられ、さらに言えば着る人によって印象が変化致しますので結果的にかなりの細分化が図られることと想いますが、私はテーラーの類が好みでクラシックな装いが最も自分らしく居られると想っておりますので、前述のように現代のモードであるオーヴァーサイズは自分にとって似合わない, 着ない世界と捉えておりましたが、本品によってそれらが交差し得ること、モードなオーヴァーサイズでも在りクラシックなダンディズムでも在る服がこの世に存在することを、恥ずかしながら初めて知りました。

 

それには創り手である氏に対して敬意を抱いているという前提であったり、拡大・延長解釈された襟やエポレット、まるでショートジャケットを重ね着しているかのようなヨークなど各所の装飾を練り上げて元々在ったものと同じくでありながら美意識として昇華させているというデザインの力や、赤紫の裏地などの粋な配慮も相まっていることと想いますが、それにしてもこのクロスオーヴァ―には驚きました。仰々しい言い方かもしれませんが私にとっては実際にこの一着によって今後の選択肢が二倍となった心持ちです。

 

 

 

 

 

70s Valentino uomo oversized down trench coat.

 

とは言いながらも、そう簡単な成り立ちではないことももちろん理解しておりますので、もう “ このような一着を ” と探し求めたりは致しません。どうぜ滅多に出逢えませんので。いつかこのような一着が手に入れば嬉しいです。

あと、真冬のトレンチコートという選択肢も初めてでした。引き続き恥にまみれた人生です。

 

 

SURR by LAILA 福留

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