残る要素 / Diary 785
1.11.2019

旬の食材をその時その時に味わうという愉しみ方はいつの間には装いにも派生し、気温や気候の変化に応じた素材や表情や凹凸などをその時その時に身に着けるという愉しさは私にとって旬の食材と同じく身体となにより心を豊かにする大切な要素と成っており、食の旬にせよ装いの旬にせよ一年間で最も好ましく愉しいのは秋と冬でして、加齢に関わりなく と言いつつ関わりないわけはございませんが、季節を更新するごとに想うことや感じることの “ 面 ” が変わってゆくのは皆様方も同じくで在ることと想います。私は趣味を持たず今に至った人間ですので想うことや感じることはこのように主に生業に関わることでして、ファッションとは何か, スタイルとは何かが軸となり豊かな日々に対して想うことが多いのですが、それらによって産まれたと申しますか出来あがったと申しますか出来やがったと申しますか、論点の置き方や考えの道順や着地点に対しましては少し前から抜くこと、“ こだわり抜く ” のではなく “ こだわりを抜く ” ことを静かに意識しております。

 

 

重ね着の有用性を目的に設計した余白が時代を経てモードなオーヴァーサイズと捉えられるように、感覚や感性は常に精査され上書きされ続け、極論それまでの赤色がある時から黄色と捉えられるかの如く、それら精査や上書きには数多の可能性が在ることと想います。鈴木が綴るように外的な何かや内的な何かを起点に看板の紋様が替わって変化することも在れば、例えば古臭さが不変性やタイムレスと成ったり、無装飾はミニマリズムや洗練と成ったり、自分勝手な行動が自由な感性と称えられたりと、時代に応じて捉え方や意味合いは変化することも在りますので、私も今後気が付くこともなく変化してゆくでしょうし、きっとそれも愉しいとそれこそ以前に御提案致しましたダウン・トレンチコートのような存在に出逢うと想いますが、それはもちろん変わらない要素, こがわりを抜いていったうえで残った幾つかの要素が土台と成ってこそ成り立つというものでして、現段階で私にとってその一つは着た時の心地良さであると、気が付くこともなく変化してゆく様々がありますので断定は叶いませんが、この点はほぼ 100% 残る要素であると想えますので断定させて頂きます。

 

 

 

 

 

それにはやはり職人の技術力であり心意気であり、純粋な素材の力が大きく関わるとこの度御提案させて頂きましたサルトリアルの品々から、そしてそれを介して幾人かの御客様方と交流させて頂いた時間から強く感じまして、それこそ入れ物としての在り方が大きく変わって記憶新しい Brioni の、大きく変わる以前の状況と比べてもなお異なる状況であった時代に製作された二つのジャケットにおいて、当たり前のようにほとんどの箇所が手縫いにて仕上げられている現実を目の当たりにしそれらから尋常ならざる着た時の心地良さを体感致しますと、技術力と心意気と素材の力の重要性と, それが当たり前ではないという尊さと, 逆にこの品質が当たり前な世の中だったらどうなってしまうのだろうというちょっとした恐怖心と, いや逆にこの品質を世界中の多くの人々が所有していたら世の中はもっと素敵に成るのではないかという幻想を、同時に抱かずには居られません。

共に 40 年ほど前に構築された設計であるだけでなく、正統的なサルトリアルであり既製服最高峰の名を欲しいがままにしていた当時の Brioni がフランスの人々に向けて製作したという愉しい複雑性を有したそれぞれと成っておりまして、結果的に産まれた肩の強さや可動域の広さやどっしりとした着丈やそれぞれ基本に則った装飾性は古臭さと捉えることも出来ますが、弊店にとっては不変性でありタイムレスであり、これまでも, 今も, もしかしたら今後一層に大切な男性としての美しさであり、私にとってこれまでも, 今日も, 間違いなく今後も大切な着た時の心地良さとなる要素です。

 

 

 


80s Brioni cashmere tailored jacket for France.

 


80s Brioni cashmere & wool tailored jacket for France.

 

 

なお、着心地と着た時の心地良さは同じなようで異なります。後者にはなんと申しますか、例えば連日激務が続いたうえで呑み会が重なったある朝があって、三駅分立って通勤するのですら辛いような, ちょっと座っただけで呼吸が深い睡眠時と同じようになってしまうほど身体が休息を欲しているような日があったとしても、その一着を羽織るないし穿くないし履くことによって頑張れるような感覚です。そんな疲れねぇよという御方もそんなんじゃ足りねぇよという御方も居られることと想いますが、着た時の心地良さ というのは良いものですので、是非にと想います。

 

 

SURR by LAILA 福留

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傷 / Diary 784
31.10.2019

40s French work moleskin trousers

情緒を感じる手刺繍、叩き埋め。

50s French drivers style sweater

記章塞ぎ、グッドデザイン、グッドバランス。

Early 1900s French fisherman’s coat

極太番手糸をかがり縫い、襟を表裏逆に付ける愛嬌。

30s French hunting jacket ” personal order “

当て布を素朴な別布で、素朴な始末で。

40s U.S navy N – 4 jacket ” art – repair & hand paint ”

二色使いの芸術的刺繍、大ダメージ。

1941s British army camouflaged leather ” Jerkin ” by Dephyrane Garments

ミシン目からランダムピッチのハンドステッチ。

50s British royal army combat trousers ” P – 52 ” scar repair

大胆な傷、大胆な別布、几帳面な手仕事。

 

 

状態の美しさには適うものは無いですが、私的に枯れた様な雰囲気のものに惹かれ、又其のものでしか表現の出来ない個体性に胸を打たれることが多く感じます。傷の付いた負の面よりそれを回復させる、ものを大切に扱う精神、手仕事の美しさ、唯一無二なものへ変貌を遂げる利が勝り、一つのデザインに昇華させる様な意図としない偶然の産物に御興味頂ければ幸いで御座います。

 

 

SURR by LAILA 鈴木

03-5468-5966
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タイムレス / Diary 783
29.10.2019

ブランドに措けるブランドフォント、ロゴを改新する背景にはデザイナーの交代、リブランディングでのイメージの一新。賛否のある中、メゾンブランドが歴史的なイメージを覆してまで変える意味はあるのかと考えつつ、 SNS が発達した現代に措いてストリートブランドの様な一目見て判り誘目を促すようなキャッチーさを求めているように伺えたりと、伝統的な部分に変化を与えたところでそもそもの固定概念に影響を及ぼす点、勿論更新されることによりプラスに働く点もあり、何を変える、何が変わるというのはリスクと成功の隣合せで近年も多く見受けられる事柄だと感じますが。これから紹介する現代に措いても一貫した物づくり、私の尊敬して止まない彼もまたロゴの変更を過去を行っていまして、その理由は明確ではないのですが個人的考察と共に御紹介させて頂きます。聞かれれば彼の物つくりが一番好みだとと答えますが、どこがと聞かれると少し詰まります。なぜなら一言では言い表せないのです。

Ealry 90s Dries Van Noten oversized wool , silk & nylon sweater

御存知の方も多いと存じますので、彼の略歴は割愛しますが、初期から 95 – 96 A / W まで DVN タグ ( 恐らく私しか使っていない名称 ) 、上記の旧タグが使用されています。それまで彼の物つくりは身体へストレスの無い、包み込むようなフィッティングを厳選された素材で表現していたように思え、現代の意図のあるオーヴァーサイズではなく、男性像を彼のフィルターに通した際に強さではなく温かみのある、肩肘貼らない女性的な感性を感じることのできるモダンな物つくりだと私は印象を受けます。こちらは年代の確定が出来ず、92 SS から始まったコレクションショーを発表する以前のピースである可能性もあり、個人的にも興味深い一着。wool × slik × nylon と部分的に編み込みを変えた変則的な構築且つ身体を包み込む無駄の無い ” 余白 ” が当時の彼らしいリラックス且つエレガンスを感じられます。

 

96 – 97 A / W Dries Van Noten work-style wool jacket

こちらのジャケットに関しましてはタグが変更後、 96 – 97 A / W コレクションの一着。それまでの物つくりに敬意も伺えつつ、時代の変遷にも影響を受け始めたような身体のラインが強調される現代のコレクションにも精通する物づくりへ。ショールックですとブルーストライプのシャツをスリムな同系色のトラウザーズにタックインした正統な佇まい、着丈の短いワークジャケットベースではありますが、ハンドウォームポケットの付く利便性の高さも伺えます。
この 96 – 97 A / W のショーは真冬のパリ郊外の市場で行われ、雪が降りランウェイに焚火が設置されている中モデル達が自由に寒さに耐えながら歩くのですが、こちらを着用していたモデルは凛とした佇まいでウォーキング。なぜならメルトン × キルティングライナーと防寒性にも特化した一着にもかかわらず膨らみの無いスリムな美しいカッティングと申し分の無い逸品。もしくはモデルの彼が寒さに強い体質だったかは定かでは無いですが。生地違いで鮮やかな色味のチェックパターンも確認しましたが、個人的にも襟、身頃の同系色のこちらはとてもでデイリーかつモードな印象にも感じる振り幅のあるとても巧い物づくり、中々無い丁度良さ。

 

 

「 時代を超えたタイムレスな服を目指している。 」

彼の言葉が届けばと。

 

 

SURR by LAILA 鈴木

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