「セーターについて」書かせて頂いた際、ジーンズか、デニムか、ふと頭をよぎってしまいまして、今回は其方の内容を合わせたエントリーとなりますが、該当する御品について、1999年に誕生した1本の最高傑作をこの場を借りてご紹介させて頂きます。
“ジーンズ”か、“デニム”か、その表現の差異については論争が及ぶまでもございませんが、
厳密に「デニム」とは生地を指し、「ジーンズ」とはその生地を用いた衣類を指す、という簡単な定義付けがあるようです。(因に「ジーパン」とはその生地を用いたパンツを指す模様)
なるほど、ニットとセーターの位置づけに極めて類似している関係性です。現代では、デニム生地にて仕立てられたボトムスを“デニム”という音を用いることが一般的であるとわたくしも認識しておりますが、やはり店頭におきましてもお客様からは「デニムありますか」と問われることが殆どでして、わたくしも物心ついた頃から“デニム”という音を無意識に使用しておりました。仮に「何か良いジーンズありますか」とお客様から問われることならばドキっとしてしまいそうですが、その“音”が一般的に使われなくなった要因としてやはり挙げられるのが、「デニム」という生地の拡大解釈が広義にそして無意識な認識としてその波が広まった事による反対解釈論。さらに、生地の拡大解釈というところで詰めますと、織りや綾、生地の生産国、地域、染料が天然か人口か、インディゴか藍か、ステッチの種類、さらにシルエットや履き方、着用者の体型体格、歩き方座り方、洗う回数、様々な細かいディテールや要因、種によって“染料の落ち方、具合”が異なり唯一無地の仕上がりになる「ジーンズ」を愛する者にとっては、唯一無地にするためにその【生地】がいかに重要であるかの認識は至極当然であり、重要だからこそ、生地を用いたボトムスまでも「デニム」という音を用いるようになったのでは、と憶測ですが。その認識が拡散したのはやはり此方も情報社会だから、というひとつの事由が挙げられるでしょう。
とはいえ、「ジーンズ」という音について、どこかレトロな印象というより、高級で贅沢な音として聞こえる気がするのですが、ジーンズというとヴィンテージの其れ等を思い浮かべてしまうからなのか、理由はどうであれ、やはり、どこか贅沢に思えます。
生地が重要であるからこそ、特に本日ご紹介する御品に関しましても、「ジーンズ」に拘らせて頂きます。
「mid90s〜1999s」ラインナップの一部より、
存在感が桁違いな此方を。
1999S/S first mens collection Martin Margiela Blue jeans “Japan cotton denim”
Martin Margielaの歴史を辿りましても、過去にプロダクトされてきたブルージーンズの中で唯一、“日本製のデニム”を使用したジーンズが発表されたのは1999ss、メンズコレクションがスタートしたファーストシーズンのみ。1999年という年代では彼がHEREMSレディースのクリエイティブディレクターを兼任していた時代でもあり、HERMESというトップオブメゾンの素材への絶対的な配慮が冠の元で見事に昇華されたシーズンといっても過言ではなく、世界的見地からみましても圧倒的なクオリティを誇る日本製の生地を用いるというマテリアルの精選は、十二分理解に到達するでしょう。なにをもって、完璧なブルージーンズと定義するかは各々其々の判断基準が御座いますが、本品に関しましては、ダブルエックスの迫力ある色落ち、という表現とも違い、緩やかな色差を滑らかかつフラットに落ちる66前期ともまた違い、特有独特のインディゴの見事な落ち方は新たなオーセンティックという境地を獲得するに納得がいく面構えであり、顕著に表現されているシーム部分の中で、最も落ちている箇所はパールホワイトクラス、インディゴブルーとの色差から見て取れるあまりにも美しい仕上がりに、日本の地で再度出逢えたことに歓喜を覚えずにはいられません。約9600km離れたイタリアの地で文句の付けようもなく仕立てられた1本のジャパンメイドは、1999年という伝説的な時代に、たったひとりの男性とアトリエの数人によってプロダクトされた事に敬意を払いながら、そう、なにをもって、完璧なブルージーンズと表現するか各々其々の判断基準が御座いますが、そのクリエイションされてきた過程に思いを巡らせ、目の前にある1本のジーンズに脚を通したその時は、鏡の前の貴方と向き合った自分を静かに見つめ、「ジーンズは贅沢だ」と、納得の境地に到達することでしょう。
SURR by LAILA 小林
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