証明と戒め / Diary475
12.12.2017

 
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チョコレートブラウンというお色を検証する際、女性に愛され女性が愛しそうなカラースタイルであると何とも甘い香りが漂います。しかしながら、例えばその甘いお色を乗せた1着が、身体に密に沿うフィッティングを獲得した “ ジャケット ” という男性的なスタイルであるならば、こうもオス特有のビターなムードが充満するものかと。
 
ましてや、それが “ スウェード ” であれば尚更。
 
 
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ジーンズを得意とし、元はワーカーのための衣類の提供が基盤であることは自明でしょう。現在だからこそヴィンテージを好む傾倒者の追求によりおおよそ明らかになりつつある、例えば与えられたナンバーや、製造年代、伴う物体的価値。それらは1着を目の前にしたとき、付加価値として付随させるも良し、世の中の不必要な情報と同じようにゴミ箱へカーソルを合わせるも良しな内容であると私は思いますが、とはいうものの、” 501 ” というナンバーが与えられた1本のジーンズを目の当たりにした際、50年代と60年代と90年代ではレッグラインに差が生じることを具体的要素とともにお伝えできるのは傾倒者のおかげ。少なからずはそうであると思いますが、それすらも、必要か不必要かは各々の判断に委ねる事。弊店では、このメーカーのヴィンテージピースをご紹介する際は、どこどこのなになにがすべてと、居丈高な姿勢では決してお伝えせず参りました。
 
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それは決め事ではなく、なんとなくの心持ちですので誠に恐縮な次第。どちらが悪かという話でもありませんし、ここで綴る内容でもないとやはり恐縮な心持ちですが、1960年代に世に送り出された例えば其のジャケットは、ディテールを介するとBIGEというタブを付随していたはずの1着であり、製造元がサンフランシスコではなく、オーストラリアであることや、最も現実的なプロポーションを獲得した3rdタイプのフォルムである事。それら情報と真摯に向き合ったところで、いつからいつまでオーストラリア生産だとか、メーカーの巧妙に仕掛けた思惑をオシャレにブランディングと呼ぶのなら、生産基盤を世界へ拡散し,確立させた年代であるとしまして、それがビックメゾンであれば80年代からの動きをこうも早く脳裏に浮かばせ、実行していたとしましても、仮に存在していたそのブランディングは、現在18:58目の前の1着のポテンシャルを昇華させるに直結する内容ではなく、BIGEというタブはあろうがなかろうが、製造地はガラガラヘビに怯えるエアーズロックの隣だろうが、その1着に事実内在する情報として有意義であるか否かはあくまで各々の判断。いずれにしましても、この1着につき申し上げねばならない大事な要素は、通常あるはずのカフスがないという点、そして背面最下部に絞りを実現させるアジャスターが存在しない点。このふたつの事実は、クリーンでミニマルな要素の証明であり、腕まくりをするならシャツを着ろという戒めであり、身体に沿わせる上では太れというフィッティング44の私への戒め。
 
 
 
 
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60s Levis suede jacket
 
 
 
 
希少情報より大事なことは、其のミニマルな1着が、スウェードであり、オス特有のビターなムードを充満させるチョコレートブラウンであり、あとはクリスマス当日、「実はこれ約50年前にガラガラヘビに怯えながらエアーズロックの隣で作られたものらしいぜ」とつまらない話を優しく聞いてくれる甘い香りの女性が隣に居させすれば。
 
その時こそ、追求に時間を捧げた傾倒者達と、ショートケーキの発明者に心から感謝。
 
 

 

 

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