18 日 ( 土 ) の 2017 S / S お披露目日に足を運んでくださいました誠に光栄なほど沢山のお客様方、本当にありがとうございました。
ゆっくりとご覧頂くこと、普段のようにじっくりとお品物のご提案が叶わなかったことに深くお詫び申しあげますと共に、“ どうぞ、そちらの方に接客を ” とアイコンタクトを送ってくださったり、ティーブレイクを挟んで再々度御来店くださったりと身に余るお心遣いをくださったことに、心から心から御礼を申しあげます。
またいつものようにゆっくりとご提案させて頂く機会を頂戴できましたら、幸いです。
本日は既に平常。和香に鼻腔をくすぐられつつ、小さく鳴る音に耳を傾けつつ、冷めたコーヒーで喉を湿らしつつ服に囲まれる時間を過ごしておりまして、このような、言うなれば SURR らしい放電時間を過ごすときはやはりスタイルの歴史に関して、そして服飾史に関して想いが及びまして、私はそれらのいわゆる史実を一個人的に好ましく思っていながら、それと並行して大切なのは感覚であるとも思っているのですが、しかしながら SURR としての表現を追求すると引き寄せ合うように服飾史と大きく関わる一着に辿り着くのは、至極自然なことなのです。例えばそう、100年ほど前の羊飼いシャツ。
意図せずに、おおよそ 1 年に一着のサイクルで縁が結ばれ、お客様に向けてご提案という円が結ばれる羊飼いのシャツは、秘められた特出して特徴的な機能性ディティールと、その国が秘める文化的な側面において遥か以前から当たり前のようにショーケースに収められてきたお品ですが、それら現状と現実を差し引いてなお、その機能性ディティール=スタイルは純粋に一着の衣類として魅力的であり、強い求心力を秘めています。思い返すと前回 ( 昨年 ) の2代目にあたる一着は、類稀なる女性にお見初め頂きまして、やはり “ アンティークをアンティークとして捉えない ” という一見の矛盾に満ちているかのような初志を貫徹しようと心に誓ったものであります。
そして、この度の3代目となる SURR 羊飼いシャツは、初代, 2代目と文字通り明確に一線を画しているのです。
羊飼いシャツの1900年代初頭となりますとそもそもが貴重なお品ですので、そう沢山に出逢ってきたわけではございませんが、それら全てはリネン、もしくはリネンとコットンの混紡という素材構成でした。今となってはリネン系統以外の存在を何故想像しなかったのかと不思議に思いますが、想像させる隙は一分も無いほど圧倒的に “ 羊飼いシャツはリネン素材 ” だったのです。
しかしながら前回の旅のとある日にその概念は打ち破られ、奇運なことに翌日に跡形も無く消え去りました。まさに胡蝶之夢。でございます。
この一着とのご縁を結んでくれたのは、その道 40 年のヴィンテージコレクター。仕事柄と長い経験から幾度か羊飼いシャツを手にしてきた彼でありながらも、40 年目にして初めて出逢うことができたという一着は、リネンではなくコットン素材という、思い付きそうで全く思いつかなかった違いでした。
その存在的希少性のみならず、リネンによる従来とは異なるテクスチャーとドレープを有することで圧倒的に明らかにアンティークな時代のものでありながら、言うなれば 3 周ほど巡りに巡って “ アンティークらしくない ” 現代性に着地しているさまに、それはもう心が震えに震えたものです。
見慣れていたはずのものが、ほんのささやかながら明確な、思い付きそうで全く思いつかなかった違いによって新たな印象とスタイルを獲得するというロジックは、尊敬して止まないデザイナーやアーティストがこれまでに与えてくれた希有な驚きと、尊い感動と一寸のずれも無く同じくでございます。
20 – 30s French cotton shepherd shirt
“ 羊飼いシャツはリネン素材 ” という概念が打ち破られた翌日、私は知人が推薦してくれたパリ某所で行われる服飾展に足を運びました。そこはナポレオン 3 世の幼少期の衣類から 2000 年代のメゾンピースまで、フランスの服飾史にまつわる品々を網羅した、それはもう刺激的で文化的で知的な素晴らしい展示だったのですが、そこになんと、リネン素材ではなくコットン素材の羊飼いシャツ、前日に出逢ったそれと同時代の近しい一着が飾られていたのです。
これは私にとって真に おもしろき こともなき世に おもしろく でございました。そもそも旅そのものが人生と同じく World is my Oyster と考えておりますが、それでもこの出逢い、そしてタイミングは印象深かったこともあり、事実は小説より奇なり とここに記させて頂いた次第です。
SURR by LAILA 福留
03-5468-5966
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