アントワープからのご紹介。本日はリーヴ・ヴァン・ゴルプを。
注:今回のエントリーでは 違和感 というキーワードが何度か登場致しますが
全てポジティブな意味合いです。
ドリス・ヴァン・ノッテンやマルタン・マルジェラの7年後輩にあたる彼女は
1993年、小物のデザイナーとしてデビュー。
後にフルコレクションに発展するデザインの数々は主にモノトーンで構成され
音楽への造詣を活かしたアントワープ出身者らしい濃密さと、
良い意味でのマニアックさでハイファッションにおいて際立つ存在でした。
しかしながら2001年、惜しまれながらも引退。
僅か10年未満と儚くも色濃いデザイナー人生を歩んだ彼女の感性は、その後人財育成の分野で発揮され
現代のファッションシーンに脈々と引き継がれたとされています。
限定的な活動期間も相まって耳馴染みの無い方もいらっしゃる事と思いますし、
何より現代においては、彼女の作品を手にする事はなかなか出来ませんが
そんな状況だからこそ、稀有な品々に出会えた時の驚きと楽しさは、一興。
絶対的に定番な白シャツにも関わらず
先立って抱く感情は “ 違和感 ”
1970年代中期頃から目にする機会の増えた、裏表を逆転させる手法,インサイド・アウトを取り入れたこちらは
文字通り、普段はひた隠しにするロックミシンの処理をデザインに反映。
認識以前に「 無くて当たり前のもの 」を表立たせる事で生じる急激な違和感。
それをそのままデザインに直結させるミニマムな発想と落とし込みには
非常に繊細な感性を要する事でしょう。
それに留まらず、非常に構築的なパターンも特徴的で
取り立てて『細見』ではないにも関わらずスマートなライン。かつ
スマートでありながら窮屈ではないフィッティングが、
オーセンティックな白シャツを特別な一着に仕立て上げているのです。
90s Lieve Van Gorp , plain shirts
表記は46。一般体系でいうところの M size フィットです。
この巧妙な違和感、自然に忍ばせた不自然からも
( 簡単な言葉を使うと ) “ 独特 ” なデザイナーである事が分かりますが
そんな 彼女らしさ が最も反映されているのがレザーアイテムです。
フラット。
一にも二にもフラット。
重厚感を醸しつつ洗練されたレザーはリーヴ・ヴァン・ゴルプの象徴的なマテリアルであり
バッグというアイテムは、小物からキャリアをスタートした彼女の代表作。
フロントのみならず、全体の形状そのものがフラットであるこちらは
実際に身体に合わせた時の、沿わない沿い方がデザインの一つ。
ここでも発揮される違和感はファッションアイテムを( 夢のある )プロダクトと捉えているからでしょうか、
構築的でありながら不思議とマッチする、中毒性の高いアンバランスなバランスです。
洗練性の中に潜む工業的な匂いも、これまた良質な違和感。
また、個人的にはこの点が最も秀逸だと思ったのですが
物を収納してフラットが壊れた時が、また良い表情 なのです。
これには感嘆致しました。
実用時に一層魅力的。素直に素晴らしいと思いました。
私はあまり簡単に感嘆するタイプでは、多分ありません。
90s Lieve Van Gorp , shoulder bag
ほとんどのノートPCがすっぽりと収まる、横50cm × 縦44cmのBIGサイズです。
彼女が今のファッションシーンに居た場合、どんなデザインを行うのだろう。
そんな、ある種考えても仕方のない事を考えずにはいられなくなる出会いも
ヴィンテージの楽しいところ。
いずれにせよどこかの誰かが、彼女らしさを踏まえつつ
自分なりに解釈して、時に再構築して楽しんでいる姿は
デザイナー本人にとって嬉しくある事なのではないでしょうか。
街中で、海外の女性に突然肩を叩かれ微笑まれ、親指を立てられたら
リーヴ・ヴァン・ゴルプ、その人かもしれませんよ。
今回のエントリーはわけあって数日遅れてしまいました。
という事で明日も書かせて頂きますので、お付き合い頂けましたら幸いです。
題材は皆様ご存じ、今月末のアレ です。
SURR by LAILA 福留
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