これはあくまで個人的な、中でも特に個人的な考え方なのですが、私は自分が着る洋服を選ぶ際に一つの判断基準を設けております。
それは試着時、 “ これは自分は着れる ” で思いが止まるのではなく “ この一着は自分こそが着るべきだ ” というある種の自己完結的な思い込みを抱けるか否かでして、そう思い切れるものは全て長く愛用しておりますが、とは言えそこまでの出逢いは滅多にございませんので私にとっても稀ではありますが、だからこそ、そう思えた時は何より幸せで、常に自分にとって新しいと思えるピースを常に探し続けながらファッションを楽しんでいる次第です。
ゆえに私のセレクトにはその考えが影響しておりまして、自分が選んだ一着がどなた様かにとって “ これこそ自分が着るべきだ ” と思って頂けたとしたらそれ程までに嬉しいことはなく、その感覚を共有できる事は何より尊く思います。
この度御紹介させて頂く一着は見方によっては大変にピーキーですので、もしかしましたら決して簡単な服ではないかもしれません。が、だからこそどなた様かにとって “ 着るべき一着 ” に成ってほしいと祈るように思った一品でございます。
時に仕事であったり時に娯楽であったりと、ヨーロッパやアメリカに深く根付いているハンティング, 狩猟の世界。一つの文化と言っても差し支えございませんのでこれまでに専用の衣類やアイテムが歴史上数多く創られており、ヴィンテージでも目にする事が出来るのですが、浅学な私めながらもここまで古いハンティングジャケットは初見でございます。これはこれはどうも、初めまして。
歴史を遡ることで得られるのは、時代性ゆえの特異的スペシャリティ。稀に出逢えるハンティングジャケットは大よそ 30 – 50 年代の品でして、捕獲した獲物を収納するための大きな背面ポケットが特徴なのですが、本品にはそれがございません。また、テーラーのようなセット in スリーブが多い中で、こちらは曲線が優雅なラグランスリーブ。そう、スマートな背面でしたり曲線美でしたり、とにかく優雅な印象を強く抱く一着なのです。
それもそのはずで、こちらはなんと老舗百貨店のオ・プランタン・パリで扱われていたハンティングジャケットなのです。これには本当に、驚かされました。
私にとってヘヴィーデューティーな印象の強いハンティングジャケットと格式溢れるプランタンは決して等号で結びつくものではなかったのですが、よくよく考えるとハンティングは貴族の嗜み的な要素もございますので、当然と言えば当然であり、必然だったのでしょう。
コットンリネンの素材感やピッチ細やかなステッチワーク、手縫いのボタンホールなど、この時代ならではの上質さは申し分ございません。しかしながら何より、優雅過ぎると言って良いほどのパターンメイクが大変刺激的な一着でして。その彫刻のような曲線美こそ前述の通り見方によってはピーキーで、何より際どさとして感じられるかもしれませんが、だからこそボディラインやスタイルや趣味嗜好、何より着る者 / 選ぶ者の 『 個 』 と調和した時の心地良さは尋常ならざるものではないかと思います。
そして何より驚異的なサイドポケット。背面ポケット無しの容量をカバーするかの如く大きく設計されたその袋部分には、片方につき 10 個のバレットポケットが配置されておりまして、その機能性のみを求めたディティールデザインのピュアなアイキャッチといったらもう。感嘆せずには居られぬ所存です。
late 1800s French , hunting jacket for Au Printemps Paris
左右で 20 のバレットポケットとフロントポケットを併せますと、合計で 24 箇所の収納をご利用頂けます。是非ともどうぞ存分にご活用くださいませ。
SURR by LAILA 福留
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