今回の御紹介は、同じく 99s Mens 1st コレクションより。男性が楽しむスタイルとして前回とは比較にならないほどのオーセンティックを秘めた一着です。
ペンキコーティング、タトゥーコレクション、シガレットショルダー、フーシア、ドールコレクション、仮縫い、トアール、フラットガーメンツなど、古き良きを解釈したうえでの独創的で革新的なデザイン, スタイル, アプローチを経て世に放たれた MENS コレクションが、従来とは驚くほど異なる究極的なスタンダードナンバーであったこと。そして同時期に、歴史が裏付けるトップメゾン, Hermes のクリエイションを担っていたこと。この二つに相互性があるかはどうか定かではありませんが、マルジェラが歩んできた道のりは私にとって超自然的に感じ、非常に心地良く合点します。
独創的な WOMENS を仕掛けていたからこそ MENS 1stがオーセンティックに成ったのか、ゆくゆくオーセンティックを表現する事を心に決めて取り組んでいたのかは推測の域を出ませんが、私が想うにマルジェラにとって男性の答えの一つがオーセンティックであることは、最初から決まっていたのではないかと思います。
前述の独創的なデザインの数々も紐解くとスタンダードに帰還し、ファッションの歴史にリンクします。それを自分なりのフィルターを通して表現した結果、大胆なスタイルになったとしても、氏にとってはあくまでオーセンティックだったでしょう。だからこそ異なるように見える MENS のオーセンティックも、結果的に Maison Martin Margiela として認知され、人々を熱狂させてきたのです。
その第一歩の一つとなったコートは、表立った “ ブランドの主張 ” は一切ございません。前回と同じく極めてマニアックな箇所で発揮されてはいますが、まず認識されないでしょう。セットインスリーブのエレガントでフォーマルで静かな MENS スタイルですが、本当にさりげない塩梅のオーバーサイズ・パターンやアームの長さ、少々違和感を覚えるほど確信犯的な着丈の短さなど、オリジナリティ溢れるスタイル提案が満載です。それを上質なウール&アルパカの起毛テクスチャーで輝きを纏わせることで、最終的には無機質なほどのオーセンティックでありながら、その実どこまでもマルジェラらしい表現が成り立っています。
なお、余談ではありますが、肩線とアームの縫い合わせが一直線に繋がるディティールデザイン。着用時に違和感的なアイキャッチとなるこれはドールコレクションで行われたアプローチと同一。それまで歩んできた道筋を刻むさりげなさには、相も変わらず舌を巻いてしまいました。
99s Maison Martin Margiela , wool & alpaca coat
御存知の方も多い事と思いますが、マルジェラの初期作品は既にアーカイヴとしての地位を獲得しておりますので、その意味合いでも判断材料としては充分ですが、やはり私としては、最善のリアルクロースとしてお認め頂くのが一番光栄に思います。既に現段階で既にコートそのものが人と同じパーソナリティを獲得しているとすら感じさせてくれますので、袖を通す事で貴方のパーソナリティと混ぜ合わせ、そう遠くない未来に自分自身として頂けましたら、至極御同慶の至り。
SURR by LAILA 福留
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