よく考える。 というほど深刻ではなく、頭空っぽに酩酊したり歌ったりで夜が更けることも決して少なくないのですが、それでもこの仕事をしていて定期的に思うのは 『 洋服はおまけ 』 という事です。 “ 所詮 ” であったり “ たかが ” であったりとある種ぶしつけな表現も出来ますが、そもそも私自身が悪意なく素直にそう思っているのは事実。
でありながら洋服と向き合っているのは単純に好きあってこそなのですが、 “ 所詮 ” であり “ たかが ” でありながらも社会や人とコミットするうえで必要なツールではありますし ( 人によって重要度は違えど ) 、 “ 所詮 ” であり “ たかが ” だからこそ、楽しんで然るべきではないかと常に思います。私にとってこのダブルスタンダードが大いに重要で、なんのかんの言っても楽しいと思っている要素なのです。
あくまで私の観点ですが、高級レストランにクラッシュデニム&スニーカーでも格好良い人はとにかく格好良く、上下コレクションの最新作を着ていようと何も感じない人には感じません。結局は人生をどう歩んできたかの人間性が全てなのだと、表参道や鎌倉に居て思っていましたし Paris や London でも素直に思いました。年齢,性別,国籍問わず、格好良い人は格別に格好良い。 “ ボロを着てても心は錦 ” という言葉に則るのであれば “ 心が錦であるならボロを着てても ” 。そして私は “ 錦な心を目指しつつ、自分が良いと思ったものを着たい ” と思います。まぁ結局はただ単にファッションが好きで、魅力的なものや ( 良い意味で ) 自分の価値基準を越えたものに出逢うのが好きなだけなのですが。
この度は、そんな人間が Paris で出会った一品をご紹介させて頂きます。蓋を開けてみるとこの旅で唯一の鞄でした。
1人の熟練工と2人の修行工。スリーマンセルによって1つのアイテムを仕上げるデルボーにおいて1970年代に作られた一品。様々な用途に適応するよう傷や汚れが目立ちにくいキャビアスキン加工の柔軟かつ上質なカウハイドを用い、書類の収納を主としたスタイル,仕様ともに良い意味で実社会的な装いのドキュメントケース。真に “ 収納 ” を目的としているからこその寡黙なミニマリズムと、細部にまで配慮は散りばめられた良質な手仕事のコントラストに一目で心奪われた出逢いの瞬間を、今でも覚えています。
持っていなくては生活出来ないという事はなく、ましてや嗜好品に近しい “ 紳士の小物 ” 。 しかしながらそれらがある事で日々が豊かになるのは事実で、共に過ごす日常で錦な心が育まれるのではないかと思い Paris から向かい入れた次第です。
70s Delvaux , clutch bag
ちなみにですが “ 紳士の小物 ” というキーワード、とても大切に想っておりまして、今後も登場致しますのでお見知りおきのほど宜しくお願い申し上げます。
SURR by LAILA 福留
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