数あるウィンターコートの中で弊店がほとんど御提案したことがないプロダクト、それがダッフルコートです。
好みなクラッシックカルチャーかつスタンダードナンバーにも関わらず老舗のそれにいかんせん食指が動かず、となると選択肢がグッと狭まってしまうのは老舗がいかに王道を邁進しているか、言い換えれば間違いない存在なのかを示しているのでしょうが、私自身も経験したことがないし動かない食指は動かせない。記憶が確かならばSURRになってからの約10年間でHermes hommeの個体、そしてAquascutumの個体しかセレクションしていないと思います。そもそもにおいて私はフ―ディーの経験値が圧倒的に乏しくてですね、今の感覚でファッションを楽しむようになってからはおそらくゼロ、これまでパーカーを着たこともなくフードが付いたアウターにも縁がありませんで暖かそうだし落ち着きそうだし色々と便利そうなのでものぐさな私には合いそうなんですけどね、なんとなく自分が着る服として捉えることができず今に至ります。ちなみに“某デザイナーは自身のブランドに在籍時、意図的に作らなかったプロダクトが三種あるんだけど知っている?”と知人がクイズを出してきたことがありまして、その答えはパーカーとショーツとバックパックで本人が好みじゃないからという理由だったのですが、当時その三種とも親しみが無かった私は(今はショーツは大々好き)、ちょっとニヤッとしたのをよく覚えています。
要するに単純に良いと思えるダッフルコートにも出逢ってこなかった、ただ単純にそれだけなんです。事実イタリア中部よりちょっと上の少し外れた田舎町にいるコレクターのもとでこれに出逢った時は即決、滅茶苦茶素敵じゃないこのダッフルコート!とここ10年間分の食指が動きました。
なんじゃこのプロダクトなんじゃこのオーラ、と思ったらミッソーニ夫妻のクリエイションでした、納得納得。ブランドラベルがなんとも素敵でして、ロゴに加えて“DESIGN & MANUFACTURE OF SUPERIOR FASHION GARMENT”、“CAREFULLY SELECTED FABRIC”、“TRADE MARK LONG WEARING SMARTNESS COMFORTABLE”、そして“ORIGINAL CLOTHING FOR COMFORT AND PLEASURE”と、涙が出るくらい素敵な文言が書かれまくっている初見デザインなんです。ブランドラベルにそれほどの情報量は新鮮かもしれませんが、御陰様で情熱を否が応にも吹き飛ばされそうなほどビンビンに感じることができます。
御存知の通りニットに芸術の概念を初めて注入しモードの世界で新たな可能性を開拓したパイオニーア,オッタヴィオ・ミッソーニさんとロジータ・ミッソーニさん。芸術作品を鑑賞してデザインを生み出していた彼らが紡ぐ糸はプレーンセーターの段階で120点ですしカーディガンやニットジャケットの段階で何倍もの存在感を発揮してくれますから、このようなアウタープロダクトの質量と面積になった時のエナジーとシナジーは計測不能。このコレクターのもとに向かう道中“なんでまたこんなところに…”正直思いましたが(この生業では定期的に思います、本当に色々な地にいますので)、こういうプロダクトを保管,保存(本当の意味でのアーカイヴですね)しているからこそこのような地にいるのだろうなぁ、このような地にいるからこそこれほどまでの逸品を保管,保存(これがアーカイヴという意味ですね)できているんだろうなぁと切に思いました。まだまだ世界には面白いものが沢山あってまだ見ぬ刺激が沢山あります。そういえば以前にNHKで“世界はほしいモノにあふれてる”って番組ありましたね、復活してほしいなぁ。
New arrival,80s Missoni multicolor duffle coat.
クラッシックなオーヴァーサイズフィッティングかつラグランスリーヴなのでクラッシック感が強まるかと思いきや肩の落ち感がとっても綺麗で私の身体でもスマートな見え方になってくれました、これは相当に綺麗かつ秀逸なパターンメイクで様々な御身体に無理なく適合すると思われます。次に食指が動くダッフルコートはいつだろうなぁ。
SURR 福留
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