緑を纏った乳白色 / Diary722
22.5.2019

弊店にとって欠かせない要素である Maison vintage において特別な存在であり、そもそも服飾史における最重要人物の一人であり、当時から現在に至るまで沢山の, 本当に沢山の人々の装いを豊かにし、美術館・博物館のショーケース内を彩り続け、数年前に財団によって設立された二カ所の独立美術館によってその地位を今まで以上に確固たるものとし、服飾史に残した幾つもの偉大な作品群がこれからも服飾における全方位にとっての教科書で在り続ける、“ モードの帝王 ” の冠がまさしく相応しいムッシュが心酔した地で私が過ごしたあの時間は、他の国内外各地と同じように一言では表すことのできないものであり、きっと歴史や文化に明るければより実感が沸く様々があったであろうとは想うもののあいにく全方位に不勉強な私にも関わらず、空気や人々や大通りや裏通りやタジン鍋やミントティーや御風呂やテラスから圧倒的な感情の運動量, 生物的な強さ, 脈々と受け継がれた文化の濃さ, なにより人間の手仕事による尊さを五感, 特に視覚的に強烈に感じ、その刺激を受け止めることに必死でした。




 

 

知っていた青とは異なる青, 赤とは異なる赤。彩り全てがこれまでの人生経験と大きく異なる心地良く異質な色調に感じられたのは決して自律神経の不調などではなく正真正銘に土地の色であり、網膜に襲い掛かるかのようなそれら全てに時間を忘れて見入っているとふと、その魔力に魅せられたムッシュが新たな色彩と感性を手に入れたことを想い出し、ただ現状を視ることしかできない私とは別の世界に居た、それらから新たを産み出すことのできた氏はどのような感情を, 時に愉しさを得ていたのだろうと夢想せずにはいられず、この生業において幸運にも数多くのムッシュの作品を眼に手にし、それらを現代の装いとして様々な御客様方に御提案させて頂き、いつからか氏がこの生業における最上のデザイナーとなり、こうしてこの地を訪れることとなった自らの人生の経緯をなんともなかなかに面白いものであると, そこまで悪いものでもないなと薄ぼんやりと素直に考えられたのは私にとってささやかながらとても大きいことであり、やはりマラケシュの匂いと音と風などのお陰だなぁと想い、またどこかで機を設けて訪れたいな、その時はホテルのベランダでのんびり過ごそうかしら なんて想って鳥の声と木々のざわめきに耳を澄ましながら太陽の下で寝ころび、そういえばここも同じ地球かと独り言ちた時間が少し前にございました。



 

 

 

 

 

そもそも数年前までその存在自体を認識しておらず、とある一着との出逢いによって衝撃を受けたあの瞬間から常に求め続けているものの、我々が交流する限りの各国の専門家において全くといってよいほど認知されていないムッシュ全盛期の Rive gauche “ homme ” 。この度幸運にも出逢うことが叶った一着のシャツはこれまで数少ないながら御提案させて頂いた中でも最も王道的な装いながら、その構築理念に, 基本要素の装飾論点に, 素材が醸し出す空気に, そして出で立ちそのものにムッシュの姿を重ね合わせずにはいられず、この緑を纏った乳白色がこれまでの人生経験と大きく異なる心地良く異質な色調を感じられ、あの地を想い出さずにはいられません。



 

 

70s Yves Saint Laurent rive gauche homme cotton shirt

本品に関しましては僭越ながら一個人的な願望と致しましてシャツという存在の根本的な美意識に沿った御姿にて御愛用頂きたく想っております。御身体が合われる貴方様に猛烈に嫉妬しつつ心から御推奨させてくださいませ。

 

 

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