ヴィンテージの個とモードの個 / Diary659
22.1.2019

服飾史には永い歴史がありますので当然の如くいち人間が全てを見つくすこと, 網羅することは叶いませんがゆえに、向き合い続けることで初めての逸品に出逢うことができるという現実と経験に基づく事実が、私にとってヴィンテージの世界 / アンティークの世界に魅了され続けている大きな理由の一つで、今回の一着もその心躍る出逢いでした。ミリタリーにおける細分化の一つにドレス ( =礼服 ) のという区分がございまして、式典参加時における正装的な意味合いから人前に出るという広義的な意味合いまで様々在るなかでの本品は後者に属しまして、そもそもの存在としては認識していたもののミリタリースタイルとしてのそれに一個人的な印象としての現代性を感じておりませんでしたので、これまで幾度か出逢ったとて皆様に御提案することはございませんでしたが、ある日の英国で出逢えたそれは私にとって初見であると共にそれまでの非選択材料を凌駕する要素にて構築されておりましたがゆえ、このように初めて皆様に “ バトル・ドレスジャケット ” という種別を御提案させて頂くことが叶いました。

 

 

 




それまでに私が認識していたものとは明らかに異なる襟の形状とポケットの位置によって “ ミリタリーにおけるドレス ” から脱却した良い意味での一般的な衣類の装いに加えて、王室直属の冠に相応しい素朴で上質な素材の選定と所属部隊における象徴色調である青みがかった特殊な灰色。ヴィンテージ / アンティークの個とモードの個を “ 重ね合わせる ” という行為ならびに捉え方には極めて繊細な課題がございまして、容易に叶うこともあれば安易に行うことで双方のあるべき魅力を打ち消しあうことになりますし、時にそれぞれを切り離して考える / 捉えることでそれぞれを直線的に味わうことができるという愉しさがございますので 適正かつ適宜に, なにより安易に行わず の指針を大切しておりますが、 こと本品におきましては元々の英国式バトル・ドレスジャケットが持つ特性に前述の要素が調和することにより、私にとって明明白白にモードな一着と相成りました。なお、属性としては英国軍王室直属空軍のバトル・ドレスジャケットとなるのですが、私のような若輩者が初見ならまだしも元々所有していたその道 30 年のミリタリーヴィンテージ専門家様が初見というのは大変に珍しいことなので、氏がそれを物語る際に子供のように無邪気な眼をしていたことがとても印象的でした。

 

 

 

 

 


50s British royal airforce , battle dress jacket

ミリタリーにおける礼服かつ王室直属の背景とあってそれこそ明明白白に由緒正しき仕立て職人による一着ですので、紳士服的観点における純粋な美しさを第一印象に、純粋な紳士服としてのモードな個として捉えて頂けましたら幸いです。余談ですが 1/14 にミラノで行われたランウェイにて、私が現代のファッションデザイナーとして心から尊敬する二人のうちの一人が発表した中に本品を彷彿とさせる装いがあり嬉しく想うとともに強烈に心打たれました。取り急ぎ 2019AW にも愉しみができ一安心。

 

 

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